第1章 第4話 薬草クエスト
第1章
第4話 薬草クエスト
森の空気はひんやりとしていた。
夜の戦いのあと、アルトはその場でしばらく立ち尽くしていた。
目の前には、もうスライムの姿はない。
さっきまでそこにいた青い魔物は、すでに地面へ溶けるように消えていた。
残っているのは、小さな青い石だけだ。
アルトはその石を手のひらに乗せる。
すると頭の中に文字が浮かんだ。
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スライムコア
低級魔物スライムの魔力の結晶
冒険者ギルドで買い取り可能
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「これが……鑑定か」
アルトは感心したように呟いた。
目で見るだけで、物の情報がわかる。
さっき手に入れたばかりのスキルだが、すでに便利さがわかる。
アルトはポケットにコアを入れた。
そのとき、また光の文字が浮かび上がる。
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ノーマルクエスト
ランク:E
薬草を5本採取する
報酬:体力 +1
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「薬草か……」
アルトは森の地面を見回した。
薬草はこの村ではよく使われる植物だ。
傷薬や回復薬の材料になる。
子供の頃、何度か採りに来たこともある。
だが夜の森では、どれが薬草なのか見分けるのが難しい。
「でも鑑定があるなら……」
アルトは近くの草を見た。
すると、すぐに文字が浮かんだ。
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雑草
特に効果のない植物
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「これは違うか」
別の草を見る。
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野草
食用可能だが薬効なし
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「これも違う」
アルトは少し歩いた。
森の奥へ行くほど、草の種類は増えていく。
そして。
ある場所で足を止めた。
月の光を浴びて、少しだけ青く光っている葉。
アルトがそれを見ると、文字が現れた。
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回復薬草
簡易回復薬の材料
体力回復効果あり
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「これだ」
アルトは慎重に引き抜いた。
その瞬間。
クエストの数字が変わる。
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薬草
1 / 5
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「ちゃんとカウントされてる」
アルトは少し笑った。
夜の森は静かだ。
虫の声が遠くから聞こえる。
アルトはゆっくり歩きながら、薬草を探した。
鑑定のおかげで見分けるのは簡単だ。
また一本。
さらに一本。
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薬草
2 / 5
3 / 5
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「あと少しだな」
アルトは少し奥へ進んだ。
そのときだった。
ガサッ。
草むらが揺れる。
「……?」
アルトは動きを止めた。
さっきスライムと戦ったばかりだ。
魔物の可能性もある。
ゆっくりと棒を構える。
だが。
草むらから出てきたのは――
小さなウサギだった。
「なんだ……」
アルトは安心して息を吐いた。
ウサギはアルトを一瞬見て、森の奥へ走り去っていく。
「びっくりした」
アルトは苦笑した。
だが同時に思う。
森には魔物もいる。
油断はできない。
アルトは周囲を警戒しながら、薬草を探した。
そして。
四本目。
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薬草
4 / 5
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「あと一本」
最後の一本は、少し時間がかかった。
同じ場所にたくさんあるわけではないらしい。
森を少し歩き回る。
そして。
倒れた木のそばで見つけた。
小さな青い葉。
月の光を反射している。
鑑定を使う。
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回復薬草
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「よし」
アルトはそれを抜いた。
その瞬間。
体がふわっと光った。
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クエスト達成
報酬獲得
体力 +1
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「……!」
体が少し軽くなる。
疲れが抜けたような感覚。
アルトは驚いた。
「これが……体力アップ」
ステータス画面を開く。
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ステータス
名前:アルト
筋力:6
敏捷:4
体力:6
魔力:3
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「増えてる」
確かに体力が上がっている。
クエストをこなすだけで強くなる。
このスキルは、本当にすごい。
アルトは森の空を見上げた。
木々の間から、星が見える。
「もっとクエストやれば……」
もっと強くなれる。
そう思ったとき。
また新しい表示が現れた。
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新規クエスト
ランク:E
3km走る
報酬:敏捷 +1
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アルトは思わず笑った。
「クエスト、どんどん出るな」
外れスキルだと思っていた。
だが今は違う。
このスキルは――
努力すればするほど強くなる力だ。
アルトは森を出る方向へ歩き出した。
「明日もやるか」
小さく呟く。
村へ帰る道を歩きながら、アルトはまだ知らない。
このスキルが。
そしてこの小さなクエストが。
やがて――
世界を変えるほどの力になることを。




