第1章 第34話 巣の奥に潜むもの
第1章
第34話 「巣の奥に潜むもの」
ゴブリンリーダーの巨体が倒れた通路の奥。
その先に広がっていた空間を見て、四人は足を止めた。
ミリアの光球がふわりと浮かび、周囲を照らす。
その光が映し出した光景に、誰もすぐには言葉を出せなかった。
床には――
無数の骨。
人間の骨。
動物の骨。
そして折れた剣や盾。
ローレンが眉をひそめる。
「……やっぱり巣か」
通路の先には広い空洞が広がっていた。
天井は高く、壁にはいくつもの穴が開いている。
そこからさらに奥へ通路が続いていた。
ミリアが小さく言う。
「ここ……ゴブリンの住処だね」
ロイドが静かに頷く。
「間違いない」
床には粗末な寝床。
食べ残し。
そして――
奥の方に、奇妙な塊が見えた。
ミリアが光球を近づける。
その瞬間。
「……!」
ミリアの顔が固まった。
「これ……」
アルトもそれを見て息を呑む。
それは――
ゴブリンの卵だった。
白く濁った殻。
人の頭ほどの大きさ。
それが。
いくつも並んでいる。
十個。
二十個。
いや――
それ以上。
ローレンが低く言う。
「多すぎるだろ」
ミリアが不安そうに呟く。
「もし全部孵ったら……」
ロイドが答えた。
「村が襲われる」
空気が一気に重くなる。
この巣を放置すれば。
近くの街道や村は危険になる。
ロイドは短く言った。
「破壊する」
ローレンが頷く。
「だな」
アルトは卵を見つめていた。
その時だった。
《危機察知》が、強く震えた。
(……来る)
さっきよりも強い。
明らかに。
さっきのゴブリンリーダー以上。
アルトが呟いた。
「……まだいます」
ロイドがすぐに反応する。
「どこだ」
アルトは奥を見る。
巣のさらに奥。
暗い穴。
そこから。
重い気配が流れてくる。
ズシ……
ズシ……
地面が小さく震えた。
ミリアが震える声で言う。
「……聞こえる?」
ローレンが大剣を構える。
「来るな」
ロイドも剣を抜いた。
空気が張り詰める。
静寂。
その次の瞬間。
暗闇の奥で――
二つの赤い光が開いた。
目。
巨大な目。
ミリアが息を呑む。
「……嘘」
暗闇から現れた影。
四人の前に姿を見せた。
それは――
巨大なゴブリンだった。
だが。
今までのゴブリンとは全く違う。
身長は三メートル近い。
筋肉は岩のように硬い。
体には傷跡が無数に刻まれている。
そして手には。
巨大な鉄の棍棒。
ロイドが低く言った。
「……ゴブリンキング」
ミリアが震える。
「そんなの……」
「ダンジョンの深層にしかいないはずじゃ……」
ローレンは逆に笑った。
「最高じゃねえか」
大剣を構える。
「こいつ倒せば大手柄だ」
だが。
アルトの心臓は激しく鼓動していた。
《危機察知》が鳴り続けている。
(強い……)
さっきのリーダーとは。
比べものにならない。
ゴブリンキングが口を開いた。
「グォォォ……」
低い唸り。
そして。
棍棒を持ち上げた。
ドォン!!
地面に叩きつける。
衝撃が巣全体を震わせた。
ロイドが叫ぶ。
「戦闘準備!」
「隊列を崩すな!」
ローレンが前へ出る。
「来いよ化け物!」
ミリアが弓を引く。
アルトは短剣を握り直した。
(逃げない)
(ここで止める)
もしこのゴブリンキングが外へ出れば。
街道。
村。
多くの人が危険になる。
だから。
ここで。
倒す。
ゴブリンキングが咆哮した。
「グオオオオオ!!」
巨大な体が突進する。
地面が揺れる。
そして。
棍棒が振り上げられた。
ロイドが叫ぶ。
「来るぞ!!」




