第1章 第33話 ゴブリンリーダー討伐戦
第1章
第33話 「ゴブリンリーダー討伐戦」
暗い通路の奥。
ゴブリンたちが道を開くように左右へ散った。
その中心から姿を現したのは――
巨大な影。
通常のゴブリンの倍以上の体格。
隆起した筋肉。
赤く濁った目。
そして手には、血に染まった鉄の大斧。
ロイドが低く呟く。
「……ゴブリンリーダー」
その声には、警戒が滲んでいた。
普通のゴブリンとは違う。
統率する存在。
そして。
強い。
ローレンがニヤリと笑った。
「おもしれぇじゃねえか」
大剣を構える。
「ようやくボスのお出ましか」
ミリアが小さく息を飲む。
「普通のゴブリンより、かなり大きい……」
アルトも短剣を握り直した。
《危機察知》が強く反応している。
(強い……)
さっきまでのゴブリンとは別格だ。
だが。
それだけではない。
周囲にはまだ十数体のゴブリンがいる。
ロイドが即座に判断する。
「まず雑魚を減らす」
「囲まれたら終わりだ」
ローレンが笑う。
「了解」
次の瞬間。
ゴブリンたちが一斉に動いた。
「ギャアアア!!」
通路いっぱいに広がる緑の群れ。
ロイドの剣が閃く。
ザンッ!!
一体の胴体を斬り裂く。
ローレンの大剣が振り抜かれる。
ドォン!!
二体のゴブリンが吹き飛んだ。
ミリアの矢が飛ぶ。
ヒュッ!
ゴブリンの喉を正確に貫いた。
アルトも前に出る。
短剣を構え、低く構える。
ゴブリンが飛びかかってくる。
「ギッ!!」
錆びた剣。
振り下ろされる。
(見える)
《危機察知》が攻撃を先読みする。
体を滑らせるように避ける。
そして。
ザシュッ!!
短剣が首筋を斬り裂いた。
血が飛び散る。
だが。
ゴブリンは次々と押し寄せる。
三体。
四体。
五体。
ロイドが叫ぶ。
「数が多い!」
ローレンが笑う。
「任せろ!」
大剣を振り上げる。
そして――
叩きつけた。
ドォォン!!
衝撃が通路を震わせる。
ゴブリン三体がまとめて倒れた。
だが。
その時だった。
「グオォォォ!!」
ゴブリンリーダーが動いた。
巨体が突進する。
ロイドが目を見開く。
「来るぞ!」
巨大な斧が振り上げられる。
そして。
振り下ろされた。
ドォン!!!
岩の床が砕ける。
破片が飛び散った。
ロイドはギリギリで回避する。
「……重い」
ただのゴブリンの攻撃ではない。
まともに受ければ――
骨が砕ける。
ローレンが笑った。
「いいなそれ!」
大剣を構える。
「俺が相手してやる!」
突進。
大剣と斧がぶつかる。
ガァァン!!
金属音が通路に響く。
ローレンの体が少し後ろへ滑った。
「……力強ぇな」
ゴブリンリーダーが再び斧を振るう。
横薙ぎ。
ローレンは大剣で受ける。
ガン!!
衝撃。
しかし――
「おっと」
ローレンが笑う。
「それだけか?」
だが。
アルトの《危機察知》が強く反応した。
(違う……)
次の瞬間。
背後のゴブリンがローレンに飛びかかった。
「後ろ!」
アルトが叫ぶ。
ローレンが振り返る。
しかし間に合わない。
その時。
ヒュッ!
矢が飛んだ。
ゴブリンの頭を貫く。
ミリアだった。
「ローレン!」
ローレンが笑う。
「助かった!」
だが。
ゴブリンリーダーはその隙を見逃さない。
斧を振り上げる。
ローレンに叩きつける――
その瞬間。
アルトが動いた。
(今だ)
《影歩》を使う。
足音を消す。
気配を消す。
そして。
ゴブリンリーダーの側面へ滑り込む。
短剣を握り。
振り抜いた。
ザシュッ!!
太ももに深い傷。
「グオオオ!?」
ゴブリンリーダーが怒りの咆哮を上げる。
ロイドがその瞬間を逃さない。
「今だ!」
剣を振り上げる。
そして。
渾身の一撃。
ザンッ!!!
肩から胸へ。
深く斬り裂いた。
ゴブリンリーダーがよろめく。
ローレンが叫ぶ。
「終わりだ!」
大剣を振り上げる。
そして。
振り下ろした。
ドォォン!!
巨体が地面に叩きつけられる。
沈黙。
ゴブリンリーダーは動かない。
ロイドがゆっくり息を吐く。
「……討伐完了だ」
残っていたゴブリンたちは。
一斉に逃げ出した。
「ギャアアア!!」
暗闇の奥へ消えていく。
静寂が戻る。
ミリアがその場に座り込む。
「はぁ……」
「びっくりした……」
ローレンが笑う。
「いい戦いだったな」
ロイドがアルトを見る。
「今の動き」
「よかった」
アルトは少し驚いた。
「本当ですか?」
ロイドは頷く。
「ゴブリンリーダーの隙を作った」
「いい判断だ」
アルトの胸が少し熱くなる。
だがその時。
アルトは奥を見た。
暗闇。
そして。
奥の方に――
大きな空間が見えた。
ミリアが光球を飛ばす。
光が奥を照らす。
そして。
四人は息を呑んだ。
そこには――
無数の骨。
壊れた武器。
そして。
ゴブリンの巣が広がっていた。
ロイドが静かに言う。
「……ここが発生源か」
だが。
アルトの《危機察知》は。
まだ消えていなかった。
むしろ――
さらに強くなっていた。
(……まだいる)
(もっと強い何かが)




