第1章 第32話 ゴブリンの群れ
第1章
第32話 「ゴブリンの群れ」
暗い通路の奥から飛び出してきた影。
小柄な体。
緑色の皮膚。
黄色く濁った目。
「ギャッ!!」
ミリアが叫ぶ。
「ゴブリン!」
三体のゴブリンが一斉に突っ込んできた。
だが――
ロイドはすでに動いていた。
「前に出るな」
低い声と同時に剣が振り抜かれる。
ザンッ!!
先頭のゴブリンの体が真っ二つになった。
血が岩の床に飛び散る。
「ギャッ!?」
残りの二体が一瞬ひるむ。
その隙をローレンが逃さない。
「任せろ!」
大剣が横薙ぎに振られる。
ドォン!!
鈍い衝撃音。
ゴブリンの体が壁に叩きつけられた。
もう一体は――
アルトの前に飛び込んできた。
「ギッ!!」
錆びた短剣を振り上げる。
だが。
(遅い)
アルトの視界が静かに動いた。
《危機察知》が攻撃の軌道を教える。
体を少しずらす。
ゴブリンの刃は空を切った。
その瞬間。
アルトの短剣が閃く。
ザシュッ!
喉元を切り裂いた。
「ギッ……」
ゴブリンが崩れ落ちる。
静寂。
ローレンが笑った。
「楽勝だな」
しかし――
アルトの表情は変わらなかった。
《危機察知》が強く反応していた。
(まだいる)
その時。
奥の暗闇から声が響いた。
「ギャギャギャギャ!!」
ミリアの顔が青くなる。
「……え?」
次の瞬間。
暗闇が動いた。
ゴブリン。
ゴブリン。
ゴブリン。
数十の影が通路の奥から押し寄せてくる。
ローレンが目を見開く。
「おいおい……」
ミリアが震えた声で言う。
「多すぎない……?」
ロイドが即座に判断した。
「通路を使う」
「横に広がらせるな」
この狭い通路なら。
同時に戦える数は限られる。
ロイドが剣を構える。
「前は俺が抑える」
ローレンが笑う。
「じゃあ後ろは任せろ」
ミリアが弓を引く。
「援護する!」
アルトは静かに短剣を握った。
ゴブリンの群れが迫る。
「ギャアアア!!」
最初の一体が飛び込む。
ロイドの剣が落ちる。
ザンッ!!
即死。
だがすぐに次のゴブリン。
さらに次。
群れは止まらない。
ローレンの大剣が振り下ろされる。
ドォン!!
二体まとめて吹き飛ぶ。
ミリアの矢が飛ぶ。
ヒュッ!
ゴブリンの目に突き刺さった。
アルトも前に出る。
短剣が光る。
ザシュッ!
ゴブリンの腕を斬る。
続けて首。
一体。
二体。
三体。
だが。
数が多い。
「ギャギャギャ!!」
後ろからさらに押し寄せてくる。
ミリアが叫ぶ。
「まだ来る!」
ロイドが歯を食いしばる。
「巣が近い可能性がある」
ローレンが笑う。
「いいじゃねえか」
「まとめて片付けようぜ」
アルトは戦いながら奥を見た。
暗闇。
しかし――
《危機察知》が別の反応を捉えた。
(強い気配……?)
ゴブリンではない。
もっと大きい。
もっと重い。
奥からゆっくり近づいてくる。
ズシ……
ズシ……
アルトの背筋に冷たいものが走る。
(なんだ……?)
その時。
ゴブリンたちが突然、道を開けた。
まるで。
王を迎えるように。
ミリアが呟く。
「……嘘」
暗闇から現れた影。
大きい。
普通のゴブリンの二倍以上。
筋肉質な体。
鉄の斧。
赤い目。
ロイドが低く言った。
「……ゴブリンリーダー」
ローレンがニヤリと笑う。
「面白くなってきた」
ゴブリンリーダーが斧を持ち上げる。
そして。
咆哮した。
「グオォォォ!!」
その声と共に。
ゴブリンの群れが再び襲いかかる。




