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世界はここから…  作者: モノンST
クエスト

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第1章 第23話 緊急クエスト

第一章


第23話「緊急クエスト」


森から出た瞬間。


アルトはようやく息を吐いた。


「はぁ……」


森の外の空気は、驚くほど軽かった。


ついさっきまでいた場所が、どれだけ重苦しかったのかを実感する。


ローレンが肩を回す。


「やっぱり外の空気はいいな」


ミリアも苦笑する。


「ほんとね。あの中、息が詰まりそうだった」


だが——


Bランクの冒険者だけは、表情が変わらない。


「急ぐぞ」


短く言った。


「ギルドへ報告する」


アルトたちはすぐに頷いた。


もしダンジョンが本当に発生しているなら。


これは村レベルの問題ではない。


四人は足早に村へ向かった。


森を抜けると、夕方の光が広がっていた。


小さな村。


煙突から煙が上がり、子供たちが走り回っている。


いつも通りの風景。


だがアルトには、それが少し不安に見えた。


(もしスタンピードが起きたら……)


この村は耐えられない。


アルトたちはそのまま冒険者ギルドへ向かった。


村の中心にある、少し大きな木造の建物。


扉を開ける。


バンッ!


中にいた冒険者たちが一斉に振り向いた。


酒を飲んでいた者。


依頼書を見ていた者。


全員の視線が集まる。


受付にいた女性が驚いた顔をする。


「ローレンさん? もう戻ったんですか?」


だが。


Bランクの男が真っ直ぐカウンターへ向かう。


「ギルドマスターを呼べ」


声は低い。


だが、はっきりしていた。


受付の女性の表情が変わる。


「……何かあったんですか?」


男は一言だけ言った。


「ダンジョンだ」


その瞬間。


ギルドの空気が凍りついた。


「……は?」


誰かが呟く。


酒を飲んでいた男が椅子から立ち上がる。


「今、なんて言った?」


Bランクの男は繰り返した。


「森の深部にダンジョンが発生している」


ざわっ……


ギルド中が一気に騒ぎ出した。


「嘘だろ!?」


「この村にダンジョン!?」


「そんな話聞いたことないぞ!」


受付の女性は慌てて奥へ走った。


「ギルドマスター呼んできます!」


アルトは周囲の冒険者たちを見る。


誰もが驚き、動揺している。


それも当然だ。


この村は小さい。


普段の依頼は——


・薬草採取

・ウルフ討伐

・畑荒らしの魔物退治


その程度。


ダンジョンなんて、本来あるはずがない。


やがて奥の扉が開いた。


ドン。


大きな足音。


現れたのは、巨大な男だった。


身長は二メートル近い。


筋肉の塊のような体。


白髪混じりの髭。


この村の冒険者ギルドの長。


ギルドマスター、グラン。


「……騒がしいな」


低い声。


ギルドのざわめきが少し収まる。


グランはBランクの男を見る。


「ロイド」


どうやら彼の名前らしい。


「今、ダンジョンと言ったか?」


ロイドは頷いた。


「森の深部だ」


「入口を確認した」


グランの目が鋭くなる。


「規模は?」


「まだ小さい」


「だが……魔物が変異している」


その言葉で、空気がさらに重くなった。


グランは腕を組む。


「変異?」


ロイドは説明する。


「赤い目の魔物だ」


「オーク、ゴブリン共に通常より強い」


ローレンが口を挟む。


「ダンジョン内にも同じ個体がいた」


ミリアも頷く。


「普通じゃない」


グランはしばらく黙った。


そして。


ゆっくりと言った。


「……厄介だな」


ギルドの空気が張り詰める。


グランは周囲の冒険者を見渡す。


「全員聞け」


一言で、ギルドが静まり返る。


「森の深部にダンジョンが発生した」


「このまま放置すれば魔物が増える」


「最悪——」


そこで一度言葉を切る。


そして言った。


「スタンピードが起きる」


ゴクリ……


誰かが息を飲む。


グランは続ける。


「よって」


カウンターに手を叩きつけた。


ドンッ!!


「緊急クエストを発令する!」


冒険者たちがざわめく。


アルトの視界にも文字が浮かんだ。



【緊急クエスト発生】


ダンジョン調査および制圧


推奨ランク

Cランク以上


報酬

特別報酬+討伐ボーナス


期限

早急



アルトは思わず息を呑む。


(緊急クエスト……)


これまで受けてきたものとは、明らかに違う。


命がけの依頼。


グランが続ける。


「まずは調査隊を組む」


「ダンジョンの規模を確認する」


「その後、攻略だ」


ロイドが言った。


「俺が先頭に立つ」


グランは頷く。


「当然だ」


そして視線がアルトたちへ向いた。


「ローレン」


「ミリア」


「お前たちも行くか?」


ローレンは迷わなかった。


「もちろんだ」


ミリアも弓を握る。


「行くわ」


そして。


グランの目がアルトへ向く。


「……そいつは?」


ローレンが答える。


「アルト」


「Eランクの新人だ」


周囲の冒険者がざわめく。


「Eランク?」


「ダンジョンに連れていくのか?」


グランはアルトをじっと見る。


鋭い視線。


アルトの背筋が伸びる。


だが。


逃げる気はなかった。


アルトは言った。


「俺、行きます」


ギルドが少し静かになる。


グランは少しだけ笑った。


「いい目だ」


そしてローレンを見る。


「面倒見れるか?」


ローレンはニヤッと笑った。


「任せろ」


グランは頷く。


「よし」


そして宣言した。


「明日、ダンジョン調査隊を出す!」


「参加する者は今夜のうちに準備しろ!」


ギルドが一気に騒がしくなる。


冒険者たちが立ち上がる。


武器の話。


装備の話。


アルトはその中心で、静かに拳を握った。


(ダンジョン……)


冒険者として。


本当の戦いが始まる。

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