第1章 第2話 クエストの表示
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第1章
第2話 クエストの表示
夜の風が、ゆっくりと村を包んでいた。
成人の儀が終わったあと、広場の賑わいは少しずつ静まり、今はほとんどの村人が家へ帰っている。
アルトも家へ戻る途中だった。
石畳の道を歩きながら、何度も思い出してしまう。
昼間に見た、あの光の文字。
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スキル
クエスト
ランク:F
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「……外れ、か」
小さくつぶやく。
村の連中の反応を思い出す。
「聞いたことないな」
「Fランクか」
「まあ農業でもするんだな」
悪気があるわけではない。
ただ、この世界では スキルのランクがすべてだからだ。
強いスキルを持つ者は、王国騎士や冒険者として活躍する。
弱いスキルなら、普通の生活を送るだけ。
それがこの世界の当たり前だった。
アルトは空を見上げた。
夜空には星が広がっている。
子供の頃、よく思っていた。
いつか村を出て、広い世界を見てみたい。
冒険者になって、魔物と戦って、宝を見つけて――
そんな夢を。
だが現実は。
「Fランク、か……」
そのときだった。
突然、目の前に光が浮かび上がった。
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クエスト発生
デイリークエスト
ランク:F
①薪を10本集める
報酬:筋力 +1
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「……え?」
アルトは思わず立ち止まった。
光の文字は、はっきりと目の前に浮かんでいる。
周りを見回す。
だが誰も反応していない。
通り過ぎる村人も、空を見上げる様子はない。
「俺にしか見えてない?」
恐る恐る手を伸ばす。
指が文字に触れた。
すると、文字がすっと揺れて、新しい表示が開いた。
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クエスト一覧
デイリークエスト
①薪を10本集める
報酬:筋力 +1
②3km走る
報酬:敏捷 +1
③スライムを1体倒す
報酬:スキル「鑑定」
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「増えた……?」
アルトは思わず声を漏らした。
さっき見たときは薪だけだったはずだ。
どうやら、触れることで クエスト一覧が表示されたらしい。
「報酬……?」
アルトは一つずつ読み上げた。
筋力。
敏捷。
そして――
スキル「鑑定」。
「スキルも手に入るのか……?」
もし本当なら、とんでもないことだ。
普通、スキルは 成人の儀で一度しか授からない。
後から手に入れることなど、聞いたことがない。
だが、まずは確かめる必要がある。
アルトは周囲を見回した。
村の外れには小さな森がある。
薪を集めるなら、そこがちょうどいい。
「……やってみるか」
アルトは森へ向かって歩き出した。
⸻
夜の森は静かだった。
虫の声が遠くから聞こえる。
風が木々を揺らし、葉が擦れる音がする。
昼間なら何度も来たことのある場所だが、夜だと少し雰囲気が違う。
「薪、薪……」
地面を見ながら歩く。
折れた枝がいくつも落ちている。
アルトは一本拾い上げた。
その瞬間。
目の前の表示が変わった。
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薪
1 / 10
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「おおっ!?」
アルトは思わず声を上げた。
ちゃんと数えられている。
つまりこれは、本当に クエストなのだ。
アルトは少しだけ楽しくなってきた。
枝を拾う。
また一本。
そしてまた一本。
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薪
2 / 10
3 / 10
4 / 10
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数字が増えるたびに、妙な達成感がある。
村の仕事として薪拾いは何度もやったことがある。
だがこうして「クエスト」としてやると、まるで別のことのようだった。
やがて。
⸻
薪
10 / 10
⸻
数字が変わった瞬間。
体がふっと軽く光った。
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クエスト達成
報酬獲得
筋力 +1
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「……!」
アルトは拳を握った。
腕に力が入る。
ほんの少し。
ほんの少しだけだが――
確かに強くなった感覚がある。
「マジか……」
アルトは自分の腕を見つめた。
クエストをこなすだけで、強くなる。
そんな話、聞いたことがない。
もう一度画面を開く。
すると、新しい表示があった。
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ステータス
名前:アルト
年齢:15
筋力:6
敏捷:4
体力:5
魔力:3
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「筋力……上がってる」
確かに増えていた。
アルトの胸が高鳴る。
もしこれが本当なら。
もしクエストを続ければ――
「……強くなれる」
小さくつぶやいた。
外れスキルだと思っていた。
だが違うかもしれない。
いや、もしかすると。
とんでもないスキルなのではないか。
そのとき。
森の奥から、ぬるりとした音が聞こえた。
「……?」
アルトは顔を上げた。
月明かりの中。
青い半透明の何かが、ゆっくり動いている。
スライムだ。
村の近くでも時々見かける、最弱の魔物。
だが――
アルトの目の前に表示が出た。
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クエスト更新
スライムを1体倒す
報酬:スキル「鑑定」
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アルトは息を飲んだ。
「……やるしかないか」
足元に落ちていた木の棒を握る。
心臓が少し速くなる。
これが――
アルトの最初の戦いだった。
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