第1章 第13話 調査隊
第一章
第13話「調査隊」
翌朝。
アルトはまだ薄暗い時間に目を覚ました。
窓の外は朝霧に包まれている。
遠くで鳥が鳴いていた。
アルトはベッドの上でゆっくり体を起こす。
昨日の出来事がすぐに思い出された。
森の奥。
巨大なオーク。
そしてギルドへの報告。
「……本当にいたんだよな」
夢ではない。
あの圧倒的な存在感は、今でもはっきり覚えている。
アルトは軽く頭を振った。
考えすぎても仕方ない。
まずは今日のクエストだ。
その瞬間——
視界に淡い文字が浮かび上がった。
⸻
【本日のクエスト】
① 体力トレーニングを行う
ランク:F
報酬:体力+1
② 冒険者ギルドの依頼を1つ達成する
ランク:E
報酬:スキル経験値+20
③ 森の調査隊の様子を確認する
ランク:D
報酬:筋力+2
⸻
アルトは目を細めた。
「……またDランクか」
しかも内容が気になる。
森の調査隊の様子を確認する。
アルトは腕を組んだ。
昨日、ミリアは言っていた。
調査隊を出すと。
つまり——
今日、誰かが森へ向かう。
アルトは小さく息を吐いた。
「……気になるな」
昨日見たオーク。
もし本当に群れがあるなら、危険だ。
アルトはベッドから立ち上がった。
「まずはギルドだな」
⸻
朝の村は静かだった。
農民たちが畑へ向かっている。
パン屋からいい匂いが漂ってくる。
アルトは少しだけ空腹を感じたが、足を止めなかった。
すぐに冒険者ギルドへ向かう。
扉を開けると——
中はいつもより騒がしかった。
冒険者たちが集まっている。
装備を整える者。
地図を広げる者。
アルトはすぐに気づいた。
「……調査隊か」
受付の前に数人の冒険者が立っていた。
その中心にいるのは——
昨日話しかけてきた大柄な男。
名前はガレス。
この村ではかなり腕の立つ冒険者だ。
ガレスはアルトに気づく。
「お、来たか」
アルトは少し驚いた。
「俺?」
ガレスは頷いた。
「お前が見たんだろ?その魔物」
アルトは小さく頷く。
「はい」
ミリアが受付から顔を出した。
「ちょうどよかった」
「アルト、もう一度場所を教えて」
アルトは森の地図を見ながら説明した。
足跡を見た場所。
ゴブリンの死体。
そしてオークを見た場所。
ガレスは真剣な顔で聞いていた。
「……なるほどな」
隣にいた弓使いの女性が言う。
「結構奥ね」
もう一人の剣士が腕を組む。
「普通のオークならともかく……」
ガレスは地図を叩いた。
「とりあえず確認だ」
「本当に群れがいるなら早めに対処しないとまずい」
ミリアは頷く。
「村の近くにオークの群れができたら危険だからね」
アルトはその会話を聞きながら思った。
(俺も行ったほうがいいのか……?)
だがすぐに首を振る。
今の自分では足手まといだ。
その時だった。
視界に文字が浮かんだ。
⸻
【クエスト更新】
森の調査隊の様子を確認する
進行中
⸻
アルトは小さく息を吐く。
(ついて行く必要はないってことか)
おそらく——
様子を見るだけでいい。
ガレスが剣を背負う。
「よし、行くぞ」
調査隊は全部で四人。
剣士二人。
弓使い一人。
そしてガレス。
全員が中堅以上の冒険者だ。
アルトはその後ろ姿を見送った。
扉が閉まる。
ギルドの中は少し静かになった。
ミリアがアルトを見る。
「アルト」
「昨日は本当にありがとう」
アルトは少し照れた。
「いや……たまたま見つけただけです」
ミリアは笑った。
「それでも大事なことよ」
アルトは窓の外を見る。
森の方向。
(……大丈夫かな)
ガレスたちは強い。
それでも、昨日のオークは普通ではなかった。
その時だった。
ギルドの扉が開く。
一人の冒険者が駆け込んできた。
息を切らしている。
「ミリア!」
ギルドの空気が一瞬で変わる。
ミリアが顔を上げる。
「どうしたの?」
男は荒い息で言った。
「森の入口で……」
そして、言葉を続けた。
「オークを見た!」
アルトの背筋が凍る。
「……森の入口?」
それはおかしい。
昨日アルトが見たのは、もっと奥だった。
男は続ける。
「しかも一体じゃない!」
「三体だ!」
ギルドの中がざわつく。
ミリアの顔が真剣になる。
「……まずいわね」
アルトは森の方を見る。
胸の奥で嫌な予感が膨らんでいく。
(……群れ)
もしかすると。
あの森では、もう——
何かが始まっているのかもしれない。




