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俺しかできないパワー特化型転生ライフ  作者: コータ


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5/7

シーダとの出会い

 一週間なんてあっという間。俺は朝からソワソワしていた。


 俺とファティマ兄さん、両親はバルドール領地の入り口にあたる、プラテスという街にいた。


 ここでグローヴァ家と顔合わせして、美味しい食事でもいかが? というわけである。


 会食の場所にプラテスを選んだ理由は、父上の領地の中で一番オシャレタウンだから。


 俺は慣れない高級ジャケットを身に纏い、なんと一番先頭でグローヴァ家の馬車が到着するのを待っていた。


 ファティマ兄さんと母上は心配しきりだったが、父上とカタリナからはなぜか自信を感じる。


「安心せい。ワシの息子が振られるわけがない」


 根拠が何処にあるのか全く不明だが、言われて悪い気はしない。


「だが良いか、ガイよ。お前は今回、必ずや彼女の記憶に残る素晴らしい振る舞いをせねばならぬ。なぜか分かるかね?」

「まあ、お見合いらしいので、そうしないと駄目でしょうね」

「うむ。しかし並の主張では足らんからな」


 俺の頭に?マークが浮かぶ。すかさず父上はこう補足した。


「シーダ嬢はお前と同学年で、今年で十六になる。きっと婚約を狙う男が山のように現れるじゃろうて。競争は激化必須。ならば誰にも負けない、記憶に焼きつくほどの印象を与える必要があるというわけだ!」


 ああ、そういうことか。公爵令嬢ともなれば、モテモテなのは容易に想像できるわけで。


「承知しました。可能な限り大胆かつ慎重に、誰よりも印象に残ることをしてみせます」

「うむ! 期待してるぞ」


 この決意に父上は喜んでいたが、近くにいたファティマ兄さんが慌てていた。


「いや、ガイよ。お前は普通に接していればいい。目立ち過ぎてしまって、大変なことになるかも、」

「ファティマよ、心配はいらぬ。何しろ今回は、一週間英才教育を施したのだからな」

「英才教育、ですか」


 兄さんが何のこっちゃという顔をしていた時、スッと俺の隣にカタリナがやってきた。忍者みたいに無音で接近してくるから怖い。


「この一週間の特訓を思い出せば、きっと大丈夫です。……ですが、万が一のことがありましたら、その時は私が……」


 俺にしか聞こえない声量で、メイドがささやいてる。ダメだった時はどうするんだろ。切腹とかはやめろよ。


 街のみんなは何事かとざわついている。今回の訪問については、一部の人にしか伝えられていない。


 前世でいう、サプライズ的な? 感じを父や兄は狙っているのかも。そんなことをぼんやり考えていたら、遠くから馬車がやってくるのが分かった。


 馬車は五台くらいで、いずれも白地に金枠のゴージャス感満載。さらには一台につき馬二頭に引かせていた。


 警備兵が周囲を抜けめなく固めている。多分余裕で百人以上いそう。


 この集団を目にして、野次馬達がどっと騒ぎ出した。近づくほどに馬車は大きく、威厳と迫力が半端じゃない。


 そして車輪が目の前にやってきて、カイゼル髭の男性と優しそうな女性が馬車から降りてきた。男性のほうはグローヴァ家当主、カイフォン公爵だ。


 俺は軽く礼をして近づき、二人と握手をする。


「ほほう。君がガイ殿かね。いやぁ、私が想像していたとおり精悍な男だ」

「恐れ入ります」


 さすが公爵ともなるとオーラが違う。若輩の俺としてはすげえ緊張する。


 続いて両親と兄が二人と挨拶を交わした頃、すぐ後ろに泊まっていた馬車の扉が開いた。


 黒いドレスの裾から、しなやかで細い足がのぞく。その地に降り立った少女を見て、誰もが呆然とした。


 シーダ・フォン・グローヴァは、僕が思うよりずっと華に満ちていた。


 しかも今ですら蕾に過ぎないのではないか、と予感させるものがある。


 ショートの金髪は輝きを纏っていて、瞳はまるでエメラルドのよう。細身であり人形のように整っている。


「皆様、初めまして。シーダ・フォン・グローヴァと申します」


 スカートをたくし上げて一礼をされ、俺も若干遅れて礼を返す。優雅だなぁ本当に。


 礼を終えて彼女と目が合った時、表現し難い奇妙な感覚を覚えた。


 綺麗だなぁと見惚れると同時に、何か奇妙な衝撃がある。なんだろうか。


 とにかく、そつなくこなすことだけを考えよう。


 舞い上がってはいたけれど、普通にやれば問題など起こらない……と思っていた。


 ◇


 その後、俺たちは当初こそ想定された予定どおりに事を進めることができた。


 よっしゃ会食だ、いやあみんな素敵だねえってお世辞合戦、その後は領地一番の山に行ったり川を見せたり、いろいろやったわけである。


 しかしそれで終わりにはならない。なるはずが無い。


 だってまだ、シーダと俺のタイマンが行われていないから。


「そろそろ、若い二人にお話をさせてはいかがかな」

「あ、あああそうでしたな! よしガイよ、行ってこい」


 遠慮がちにカイフォン公爵が言い、慌てたようにうちの父が同意する。ロックのヘドバンを思い出すほどの首の振りようだった。


 ここまで促されて、何もしないのは不敬というもの。というわけで、俺はシーダをカフェに誘ってみた。


「喜んで、ご一緒いたしますわ」


 慎ましい声と返事。まさに淑女といった返答を聞き、俺は小さく笑った。


 それから二人で歩いてカフェへ。店は以前、カタリナと行った所だから勝手は分かっている。


「素敵な所ですね。わたくし、本当にバルドール領が好きになりましたわ」

「光栄です。貴方のように高貴な方に気に入っていただけるなんて、両親や兄が聞いたら泣いてしまうかもしれません」

「ところでガイ様。貴方のこと、わたくしはまだよく知らないのです。生い立ちについてはもう伺っておりますが、趣味などについて教えていただけませんか」


 ランチメニューがテーブルに並ぶ。俺はどう自分を表現しようか、ちょっとばかり迷った。


 実はカタリナから、外向きの趣味を教えられている。乗馬に演芸、鷹狩りに旅行など……貴族あるあるなネタだ。


 ただ、ここで嘘をついたところで、俺自身に得があるわけじゃない。プランを変えて正直に話すことにした。


「趣味は体を鍛えることです。それから領地の外に出て、魔物を狩りまくっていますね」


 この時、令嬢の翠眼が光った気がした。


「まあ! 素晴らしいですわ。どうして魔物を狩ってらっしゃるの?」

「それなんですが、実は——」


 俺は筋肉を鍛えることに快感を覚えていること、パワーがついてくることが嬉しくて堪らず、スターを獲得して成長率を上げたいから魔物を狩っていること、毎日行っている筋トレルーティーンについて、熱く熱く語りまくった。


 もし父上や兄さんがこの場にいたら、泡を吹いてしまうんじゃないかというくらい、ドン引きも覚悟で喋りまくる。


 気がつけばずっと俺のターンだった気がする。


 女の子と会話する上で、一番良くないことだとカタリナが教えてくれた例をそのままやってしまった。


 ヤバい! 筋トレの話になると我を失う自分が怖い!


 溢れかえってくる後悔の念。でも、もう遅いかーと思いシーダをチラ見した。


 すると、なぜか瞳をキラキラさせている彼女がいたのでビックリ。


「す、すご……素晴らしいですっ! わたくしが思っていた以上です」

「え? それって」


 彼女は嬉しそうに笑顔を浮かべながら、少しだけ身を乗り出してきた。


「ガイ様。よろしければ私と一緒に、魔族と戦ってくださいませんか」


 この時、何というか目がパチパチしたのを覚えてる。


 魔族と戦うだって? このお嬢様が?


 でも、この疑問はすぐに解消される。


 その後に話を続けたところで、彼女が何者であるか気づいたからだ。

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