どんな状況でも、好きにやるヤツはやらかす
「お前たちの好きにはさせない」の続編です。
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ですが、そこから千年以上あとの話なので、読まなくても大丈夫のはず。
でも、読んでいただけたら、嬉しいです。
「西暦三○三七年、今年の濃島平和賞は……ミヒャエル・サンダー博士の瘴気を空気に変えるプロブラムです!」
歓声と大きな拍手が沸き起こる。
ゲルマン系の初老の男性に、私はトロフィーを渡す。
フラッシュライトで目が痛いが、笑顔は崩せない。
私はこの濃島財団の理事、濃島秋穂です。
ご先祖さまが、異世界召喚された人々を救いに行く技術を確立しました。
心から、人助けのためだったのですよ。
ですが、何度か奪還に成功した後……すぐに戦争に利用されるようになりました。
巨大なモンスターは呼べませんが、可愛いウサギ型のくせに人肉をかじるモンスター、女性にひどいことをするゴブリン、瘴気を撒き散らす草などが地上戦に投入されました。
人が住めなくなった場所もあります。
ウサギの王国……なんて、冗談みたいに呼ばれている地域もありますよ。
だから、異世界渡りの平和利用に貢献した人々を讃える賞が作られました。
研究者たちの情熱が、悪用されませんようにと願いを込めて。
その前から不穏な気配はあったのですが、研究者たちは研究バカが多いですね。
社会的な影響まで予想できません。
まだ、ランダムに送り出すことしかできなかった時代に、死刑囚を異世界に送り出していたことがありました。
異世界召喚を諦めさせる作戦だったのですが、それを目的に殺人を犯す人が出てしまいました。
「誰でもいいから殺して、異世界に呼ばれて活躍したい!」
そんなことを言う犯罪者は、当然、普通の刑務所に入れますよね。
異世界召喚されるかもしれない特殊刑務所に入れたら、ご褒美みたいなものです。罰になりませんよ。
最近、地球に拉致されたゴブリンの子孫たちが、自分たちの国を作るから土地を寄越せと言いだしています。
こちらで産まれたので、立派な地球人だと……もとの異世界に送り返すと言っても、言葉や常識がわからないし困ると反論されました。
ですが、繁殖のために女性を提供することなどできません。
ゴブリンなど虐殺しろという過激派と、どんな命でも尊いという人権派の争いも激化しています。
殺すのはいけないから、繁殖させずに滅びるのを待とうという主張もありましたね。
ああ、いつの時代も人間は変わらないのだなぁと、私はため息を飲み込みました。
あれれぇ~?(コナン君ふうに)
……かっこいい奪還チームの活躍を通り越して、悪用された後始末をどうしようという話になってしまいました。