神さま、隠す。
いつもご覧頂きありがとうございます。
昨日の金属アレルギーの話。
参考にさせて頂いた複数サイトで「白金はアレルギー反応を起こしやすい」と書いてあり、プラチナと白金は別物、とされていたのですが、白金は複数の意味を持つ言葉であり、非常に紛らわしい為に削除させて頂きました。
ちなみにプラチナは、その後の文章にもある通り、金属アレルギーを起こしにくい金属になります(混ぜ物がされていたら、その部分に反応を起こす危険性あり)
連日混乱を招く文章を書いてしまい、申し訳ありません。
誤字脱字衍字も含め、なるべくノイズを減らしたいとは思っているので!
頑張ります!
いい歳した大人のクセに、キノコが生えそうなジメジメとした雰囲気を出しているんじゃない!
自分の不甲斐なさに落ち込むアルベルトを、激励の意味も込めて叱咤したつもりだったのだが、カノンに後ろから小突かれた。
なぜに。
「お前は直喩的過ぎる。
それでは、傷付けるだけだ」
「子供相手じゃないんだから、ご機嫌取りながら遠回しに言う必要無くない?」
「大人の方が、そういう所は繊細だ。
俺からしてみれば、二人ともまだ子供だがな」
おぉ!
ココに来て初めて、カノンが年寄りっぽい事を言い出したぞ!!
見た目にダマされるが、三〇〇歳のお爺ちゃんだもんね。
「アルは、気負い過ぎだ。
こいつの言うように、適否や巧拙の話もあるが……
それを理解するためにも、立ち止まったり、振り返ったりする時間が、時には必要だ。
今がその時ならば、しっかりと落ち込んでおけ。
打ちのめされても、落ち込んでも、また立ち上がれるのであれば、だが。
こいつみたいに、ただ愚直に突き進んでどうにか出来る奴は、そうそういないからな。
自分の力量を正しく把握している部分は、お前の利点だ。
だが届きもしない相手と比較し、傷付くだけなら、辞めろ。
いずれ倒れる。
もっと、自分を大切にしろ。
……それに、打ちのめされるのには、まだ早すぎる」
妙に饒舌に語り終えると、アルベルトに自分の部屋の鍵を渡した。
そして何かを耳打ちした後、部屋の物を好きに使って良いから、寝るように指示をした。
マジメなやり取りをしているから、必死に声を上げないようにガマンしているみたいだけれど、アリアがとんでもない顔をして二人を見比べている。
隙あらば、カノンの自室に忍び込もうとしていたもんね。
コレでその夢が潰えたな。
流石にアルベルトが寝ているかもしれない部屋に、侵入は出来ないもんね。
ご愁傷さま。
アルベルトは徹夜で王宮に侵入した精霊教徒を捕らえ、仮眠しか取っていない。
しかもその日から、ずっと捕らえた精霊教徒の尋問をしていた。
慣れない事だし、悪意や敵意に晒され続ければ、鬱々しい気持ちにもなるだろう。
更に現御神に殺されかけもした。
疲れている上に寝不足だから、弱気になるのだ。
連日の無茶が祟ってクマも出来ている。
確かに、早々に寝るべきだ。
何より、一人で考える時間も必要だろう。
冒険者ギルドの上に併設されている社員寮がアルベルトの部屋になるが、その隣にはガルバ達が住んでいる。
面倒見の良い彼の事だ。
押しかけられたら断れないだろうし、互いに積もる話もあるだろう。
旅から戻って来て何日も経つけれど、寝不足気味な顔をいつでもしている。
まとまった時間寝ていないに違いない。
睡眠負債は、貯まると大変だぞ。
適応障害になったら、回復するまでにかなりの時間を要する。
その前に、充分な休息を取らなければ。
ソレを考えると、煮え切らない態度が大人げないと思っていたが、むしろ甘えて頼りっぱなしになっていた俺が子供過ぎたという事か。
甘えて良いと言われていたにしても、寄り掛かり過ぎたら、俺が楽になる分、そのシワ寄せは当然、他に移る。
間違った事を言ったとは、思っていない。
ただ「大人なんだからコレ位はして当然」と無意識に押し付けていた部分は、確実にあった。
大人だから傷付かない、なんて事はないだろう。
それこそ、俺にはよく分からない感覚だが、大人だからこそ傷付く言葉もあるそうだし。
特に己の未熟さに打ちのめされている所に、その現実を突き付けられてしまったのだ。
言葉のナイフは、容易に心の奥を抉る。
「言い過ぎた、ゴメン」
「いいや。
ジューダスが正しい。
ただ……
…………いや。
ピアス、ありがとうな。
カノンも、布団借りる。
ありがとう」
最初からそういう話だったけれど、ピアスを開けた途端、逃げるように部屋を出ていかれると、なんか、こぅ……モヤモヤするな。
俺の言葉が過ぎたのも、あるけどさ。
せっかく創ったのに、卑屈になるんだもの。
チクチクと嫌味のひとつ位言いたくなるじゃん!
ハッ!?
そっか。
俺、イヤな思いをしたから、アルベルトをワザと傷付けようと、どストレートな正論を振りかざして、ボッコボコに痛め付けたのか。
ガキとか大人とか関係なく、人間として最低じゃん。
今度は俺からキノコが生えてきそうだ。
「自分の言葉の出処を理解したか」
「うん。
明日、改めて謝るよ」
「謝罪をすると、余計に惨めな気持ちにさせてしまう気もするが……」
コチラの気持ちがスッキリするから、詫びを入れたいのではない。
更に気にさせてしまうのなら、行動で示す他あるまい。
だが、どうすれば良いのだろうか。
悩みたい所ではあるが、俺の個人的な事よりも、しなければならない話がある。
ソチラを優先させなければ。
精霊の守護する土地を変更するにあたり、しなければならない事がある。
精霊の皆には、今守護している土地から、なるべく世界に影響が出ないよう、調節をしながら徐々に移動をして貰う。
その微調整は、時の精霊と元素の精霊が担当してくれる。
その最終的に腰を落ち着ける場所に、目印を付けなければならない。
迷子になるといけないからね。
ソレは冗談として、あらかじめその土地を守護する精霊の属性に地脈点を染めておくと、馴染みが早くなるとかなんとか言われたのだ。
相反する属性の精霊が守護していた土地だと、反発が起こってしまう。
災害が起こる可能性もあるし、自分の属性に染めるのに酷く時間が掛かってしまい、その間に世界の霊力バランスが崩れ、ギンヌンガの裂け目の封印が綻びてもいけない。
なので指定された地脈点に、楔を打ち込む役目を任された。
精霊の皆では出来ない。
その楔が偏った属性に染まってしまっては、意味がないんだって。
俺はどの属性の精霊術も使えるからね。
楔の効果をより強める為には、相応の霊力を消費する事になる。
そういう意味でも、俺が適任だろう。
それぞれの属性ごとに、幾つか候補地が挙げられた。
どこでも良いと時の精霊は言ったが、正解はひとつしか無いと思う。
俺を試しているんだろうなぁ。
何処が良いのか分かるものなら、ふたりにはその相談をしたい。
あとは世界中アチコチに行ったり来たりする事になるので、もし立ち入り制限がされている場所があるのなら、今のうちに許可を貰いたい。
そう思って説明をしたのだが……
なんか、今度はカノンが怒だ。
「今の話を聞く限りでは、お前一人で行くつもりか?」
印を付けた地図を広げると、眉間にクッキリとシワを刻んでカノンが問うて来た。
せっかく顔の筋肉を再形成して、縦ジワが無くなったと思っていたのに。
そんな顔をしていたら、またクセが付くぞ。
金色の俺の瞳を見て、何もかもを見透かされているような気持ちがする、と言って来たヤツが居た。
なんだそりゃ、とその時は笑ったものだが……
きっと俺にそのセリフを吐いたヤツは、何か後ろめたい事でも考えて居たのだろう。
確かに、この色合いの眼って、非現実的な色味のせいだろうか。
悪い事は出来ないなって気持ちにさせられるな。
片目でこの威力なのだ。
両目でジト〜っと見つめられた日には、ある事ない事自白したくなるに違いない。
「王都の再建をするのに、アリアと宰相閣下だけじゃ、大変だろ?
カノンが旅する理由の一つである、アリアの負担を減らす為の手段探しは、もうしなくて良くなるんだ。
兄であるお前が支えないで、どうする??」
王都の建物は、王宮も含めて街を拡張し、「スキル」で創る事が決まった。
アリアが毎日せっせと霊力を注いでいた守護方陣の、主な稼働理由である‘’即死回避‘’は、ピアスで解決した。
街を守る為の防護結界は、俺が創った大気中の霊力を使って展開する物で十分過ぎる。
もう、アリアやカノンが方陣に霊力を注ぐ必要は無いのだ。
その代わり、というワケでは無いが、市井の方は面倒事が多発すると思う。
少しずつ建造物を造る手間が無い分、ココでの暮らしに慣れるまでは、暫く混乱が続くだろう。
迷子的な話もモチロンそうだ。
街に元々あったルールと、王都独自にあったナワバリや上下関係の折り合いを付けなければならない。
仕事の割り当てなんかもあるし、貨幣のやり取りを知らない人だってごまんといる。
質の高い暮らしが手に入ると言っても、環境の変化によるストレスは、かなり大きなものになると予想される。
メンタル面でのサポートは必須だ。
他にも街は冒険者を大歓迎し、暮らしにしても給金にしても、ギルドが保証をしている。
しかし王都では、冒険者は粗野な連中ばかりだからと、棲み分がされていた。
確実に、小競り合いが生じる。
最悪、死者が出かねない。
俺の街でそんな刃傷沙汰は、勘弁して欲しい。
だからそういう時、カノンが居るだけで抑止力が働くじゃない。
なにせ伝説の英雄の子供で、賢者様だもの。
存在しているだけで良いのだから、本人は大好きなアリアを愛でる為に引きこもってても良いし、回復薬の研究に勤しむでも良い。
何かあった時、少し顔を出してくれれば、それだけで良い。
だから、王都兼街に、滞在していて欲しいんだよね。
……あとは、ぶっちゃけ、ピアスの効果がちゃんと発動するかが心配なのだ。
自分で実験しない限り、他の人達がそういう危険な目に遭う可能性を少しでも減らしておきたい、と思っている部分がある。
なにせ自分を信用していないからね!
ソレは言ったら、もっと怒られそうだから、言わないで置こう。




