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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、目が¥になる。

 「ギュリゴリュギギィ……」と口の中で響いている歯ぎしりに、カノンの奥歯が本気で心配になった。

 絶対砕けてるぞ、あの音。


 しかし回復薬は、視力低下や老眼にも効くのだ。

 きっと歯の欠損も治してくれるに違いない。



 この世界、歯磨きの習慣も無いもんね。

 回復薬には、ミュータンス菌を死滅させる働きがあるのだろう。


 だがレンサ球菌と同分類されている、乳酸菌を破壊する働きは無い。

 飲んだ後で腹痛によってトイレから出られなくなる、なんて副作用は無いもんね。


 人体に有用か否かで、効果が現れる対象が変わるのだろうか。



 イヤ、流石にソレは仮定をする意味すらない。


 なにせ食後に歯を磨かずに放置しているからといって、「今糖類が分解されてエナメル質が脱灰されてるわぁ。プラークが付着している所が中和し切れなくて、う蝕が発生してるわぁ。病巣によって窩洞が形成されて居るわぁ」なんていちいち考える人間なんて、早々居ない。


 またお腹の中で「今食物繊維をエサに腸内細菌が育ってるわぁ。善玉菌が増えて腸内フローラの花畑が耀いてるわぁ。免疫細胞が活性化して免疫グロブリンAが生成されてるわぁ」なんて思いながら日々を過ごしている人も、恐らく居ない。


 百歩譲って考えるまではしたとしても、感じる事は出来ない。

 意識してそれぞれの菌の働きを抑制したり、活発化させる事も不可能である。


 出来ていたら、虫歯によって歯を失う人も、腸内環境の悪化により病気に罹る人も居ない。



 免疫を取得する事も罹患する事も、意識をしていない所で行われている。


 回復薬を服用すると、どんな仕組みで効果が別れるのか、気になるな。

 詳細なデータを取っての治験なんかは、していないだろうし。


 データを集めたとしても、どうせ効果はそれぞれの霊力保有量によって変わるのだろう。

 だって、霊力による不思議現象の一言で片付けられてしまうのだから。


 つまり、詳細なデータを取った所で、意味が無い。



 程良くお腹が満たされた為、瞼が重くなっている人が、俺を含めて若干名居る。


 しかし公務となる(オルトゥス)のお披露目兼結婚式を延期するワケにはいかない。

 各地域の要人が続々と集まっているのだ。


 コチラの勝手な都合で、忙しい合間を縫って、遠路はるばる出向いてくれた人達の時間を、予定よりも長く拘束するワケにはいかない。



 かといってイベントのお祭り騒ぎの後に気が重くなるような話もしたくない。

 大詰めの段階までは来ているからと、会議は続行される運びとなった。



 王都(ディルクルム)に精霊教会の現御神(あきつみかみ)が甚大な損害を与えた事件に関して、目撃者として王都所属の騎士が二名。

 また教会所属の、レイラとフィブレスが証人となる。


 宰相閣下殿はともかく、アリアは被害者だからね。

 証人の欄に名前を連ねる事は出来ないそうだ。


 その宰相閣下は特使として、教会の総本山であるインフェルヌスに赴く事が決まっている。

 特使も同様、証人にはなれない。



 被害者総出で名前を並べた方が、圧が強いと思うんだけどな。

 だって国王と賢者に、世界的に有名な冒険者であるアルベルトだろ。


 どの人物も、世間からの信用が落ちたら困る立場にある。


 虚偽の申告をする恐れが無いのだから、証人として適材だと思うのだけれど。


 立場ある大人達が決めた事なら、俺は口出ししないけどね。



 決まっていないのが、賠償をどのような形で請求するか、と言う事だ。


 なにせ前代未聞の事だし、都市がひとつ滅亡しているのだから。

 生半可な金額で矛がおさまるとは思えない。


 イヤ、実際は死者も出ていないし、俺が責任もって直すなり建て替えるなりするとは言ってあるけどね。


 ソレはソレ。

 コレはコレ。



 せっかくの機会なのだ。

 ココで教会の活動資金をガッツリ減らして、現御神(あきつみかみ)の思想に染まった残党が、活動を出来ないようにしておかなければならない。


 もちろん、意図して燼霊崇拝をしているヤツらは、責任を取る形で禁固刑なり斬首なりはするが、末端の方まで調査をするのは手間がかかり過ぎる。


 ならば財源を枯渇させる事で、物理的に行動を制限させよう、という魂胆だ。



 だが流石に、ニコニコ現金一括払いをさせるには、金額が大き過ぎる。

 負担が大き過ぎても、不当な請求をしたとして、暴動のキッカケになりかねないものね。



 ならば関係の再構築を謳って、分割払いをさせれば良いのだと進言をしたら、食いつかれた。


 国語や算数の教育すら、まともにされていない人が多い世の中だ。

 融資の概念がないらしい。



 店をやっている人は、代々親から受け継ぐし、独立する場合は十分な資金を貯めてからになる。

 どれだけ誠実な人でも、魔物被害によって死のリスクが大きいとなれば、将来への投資なんてしたくないのだろう。



 だから銀行のようなお金を預ける機関はあっても、本当にただ預かるだけ。

 金利なんて付かないし、金銭消費貸借契約を結ぶ事も無い。



 えぇ〜……

 つまりコレって、大きいビジネスチャンスじゃない?



 新しい概念ならば、罠に気付かずアッサリ落とし穴に引っかかってくれそうだ。


 流石にトイチでなんて、鬼畜な事は言わないよ。

 複利を適用するなら、返済せずに居たら一〇〇日後には二.五倍以上にまで借金が膨れ上がってしまうからね。


 それこそ、支払いが不可能になって、無敵の人にでもなられたら困る。



 ただ元金が桁外れに高いでしょ。

 年利一%でも、最終的にはかなりの金額になると思うよ。


 何なら利率は設定しないで、遅延損害時の割合だけを、アホみたいに高くするだけでも良い。



 国にお金が集まるのは良い事じゃない。

 民への再分配を、この人達がしないとは思えないし。


 アリア達は、私腹を肥やすようなタイプじゃないし。

 せいぜい、細く長く、末長く吸い取ってやれば良い。



 細かいパーセンテージの設定は後で詰める事になったが、分割払いにするか、一括で支払うか、先方に決めさせる事になった。

 まぁ、分割になるのは目に見えているが。



 あと全ての淵窩(エンカ)を回収する事になった。

 万が一見落としがあって、時空の裂け目が出来たら大変だものね。


 そのお役目は、何かあった時に対処が出来る、カノンが任命されている。

 言葉には出されなかったが、俺も同行するだろう。



 元素の精霊(エレミエント)は作り方こそ教えたけれど、幾つあるのかまでは把握していなかった。

 最低一〇は作ったが、使用した分もモチロンあるし、その後追加で作った分もあるだろうし、と言われた。

 

 現御神(あきつみかみ)が直接製法を授けたとなれば、教会内部の最機密事項とされているだろう。

 教帝なりその下の枢機卿なりが製造・管理をしていると思われる。



 ソレらを引きずり出して、尋問する為の道具作りに、カノンは暫く拘束されるらしい。


 薬とは正反対の効果をもたらすモノを、作らねばならないのだ。

 ストレスは相当なものになるだろう。


 とても嫌がっていた。



 あのアリアの一番(はぁと)から引きずり降ろされた時と、同じ顔をしていた。

 歯ぎしりは「ギリィッ」としか言わなかったから、不快指数としては、コチラの方が幾段か劣るらしい。



 流石シスコン。


 どんなジャンルでも妹の中で一番じゃないと気が済まないのか。


 そのうちカノンがラーメン道を極めて、頭にタオルを巻いて腕組みをするような人間にならない事を祈るよ。

 だって、似合わなさ過ぎ。



 瘴気が濃縮された淵窩(エンカ)を、どうやって始末するかは、まだ決まっていないそうだ。

 タチの悪い物である事はなんとなく伝わったが、どれ程の災厄をもたらすのかを、誰もが想像出来ない。



 過去時空の裂け目が生じた時も、カノンが秘密裏に対処をしていたから、極々限られた地域に被害が抑えられていた。

 そして精霊の恩恵を肌身に感じ、日々生きている人も、また居ない。


 精霊と正反対の存在が居て、悪さをしてしまうんだよ、と説明してもピンと来ない。

 そうなると、対処法もろくな意見が出てこないのだ。



 人里から離れた山奥か沖に棄てる案は出たが、魔物や魔魚に影響が及んだら、生態系を崩してしまい、どれ程の規模の被害が出るかが、全く予測出来ない。



 瘴気の逆の性質を持つ霊力によって中和する事は可能だが、その霊力はどうやって調達するのか、という新たな問題が浮上してしむう。


 俺やカノンなら時間をかけず、アリアにアルベルトなら時間を掛ければ無効化は可能だ。


 しかしソレが幾つもとなれば、それぞれやらなければならない事があるのだ。

 淵窩(エンカ)にばかり、時間も霊力も割いてなんて居られない。



 そう零すのは、何徹しなければならないのかと指折り数える、宰相閣下殿だ。

 仕事の量と時間の調整をしなければならない、彼が最も大変だろう。


 しかも使者として遠出もしなければならないなんて。


 仕事だとはいえ、余りにもハードが過ぎる。

 その時には、行き道だけだとしても、パッと移動で連れて行ってあげるからね。



淵窩(エンカ)に関しては、俺が引き取るよ。

 ダンジョンで処理する」


「あ〜……」


「…………難易度が上がって、さらに苦情が来たりして」


「更にって何だよ。

 フィブレス達ですら、特に何の問題も無く、四階迄行けただろ?」


「ええ!?

 わ、私ですか!?」


 まさか自分に御鉢が回って来るとは思って居なかったらしい。

 裏返らせた、バカみたいに大きな声を出して自分を指差した。


「あの……ジューダス殿。

 彼は精霊教会の王都支部では、五本指に入る程の実力者ですよ」


「リュルとトリスはまだしも、ラウディだってフィブレスと同じくらいの実力の持ち主よ。

 わたしの治癒術だって、司教様には少し及ばないけど……そこそこのものなのよ。

 あなたが規格外なの!」


 ずびしぃ! と指を差されてしまった。


 弱い連中に寄ってたかって、並から外れていると言われましても。

 だって俺、ちゃんとコイツ等の前では実力を隠して居たよ?



 フロアボスをワンパンする前に、気絶しているのを確認したもの。

 空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)を使う時だってそうだ。


 コイツ等の前で使った術なんて、低級精霊術と体術だけじゃん。


 常識が無いのは重々承知しているが、だからといって常識外れの奇人変人のように言わないで頂きたい。



 だが俺の味方になってくれる人は誰一人として居ないようで、この場に居る全員で、レイラの言葉を首肯した。


 ……俺、先に寝てしまっていい?



 残念ながら、俺が居ないと進まない話があるので、その願いは叶わない。



 ダンジョンの運営に淵窩(エンカ)に溜められた瘴気を使う事は決定として、難易度の設定に関しては、今討論すべき内容では無い。


 死者や行方不明者が続出していると言われたとしても、緊急性は低い。


 だってダンジョンに潜るのは、任意だもの。

 フィブレス達のように、誰かに命令されて行く人も中には居るけれど。

 ソレは例外的だし。



 基本的には冒険者が自分の実力を試したいからと赴いたり、依頼が出ている素材を集めようと足を運ぶ人ばかりだ。

 道中で実力不足だと判断すれば、引き返せば良いだけの話である。


 他のダンジョンと違って、フロアボスさえ倒せば、外へ転移だって出来る。

 体勢の立て直しが容易となれば、かなり易しい仕様と言えるだろう。


 ソレで難易度が高いと、文句を言われましても。



 今話し合っている内容と比較すると、可及的速やかに対応が必要だとは思わない。

 対策が遅れた際の被害の規模も、比べ物にならないからね。


 片や数人、数十人の死人が出る程度。

 片や都市単位での死者が出てしまう問題なのだから。



時の精霊(クロノス)様のお返事はいかがでしたか?」


 ダンジョンの話繋がりで、アリアが質問をして来た。

 守護方陣の場所を、王都(ディルクルム)跡地から移動出来るのかどうかの答えを聞きたいのだろう。


 その答えによって、王都(ディルクルム)の場所を移動させるか否かか変わる。


 移動出来なかったとしても、俺の負担が余りにも大き過ぎるからと、時間の巻き戻しではなく、新たに建物を創る事だけは決まっている。


 しかし(オルトゥス)に併設するのか、王都(ディルクルム)跡地に創るのかで、使える土地の広さがだいぶ変わる。


 その規模や街並みを話し合うには、その回答をしなければならない。

 なのだけれども、言うか否か、迷うな。



「あぁ、その事なんだけど……

 コレ、この場で言って良いモンなのか、悩むんだよね」


 何せギャラリーが多過ぎる。


 国の中枢にこの先何百年と居続ける、アリア・カノン・宰相閣下は聞くべきだとは思う。

 しかしその他のヤツらには、聞かせるべきではないと思う。


 なにせ世界の根底に関わる事だ。

 悪用でもされてしまったら大変じゃない。


 そんな方法を思いついたとしても、実行出来るのかと聞かれたら、限りなく不可能に近いと答えるが。


 だがソレは、人間が行うには酷く難しいだけだ。

 ココに居る人間が、燼霊になる可能性はゼロでは無い以上、知っている人間は厳選すべきだと思う。


 何なら、最低限の事だけ話して、俺の胸の内に留めて置いた方が良いのではないかとすら考えてる居る所だ。


 精霊の皆の、守護する範囲が丸っと変わってしまうのだから。

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