神さま、話し合いをする。
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俺だって、友人の大切なものを守りたいと願う、庇護欲位はある。
ソレが二人の親友の間に出来た子供だと言うのだから、尚更だ。
今まで気にかけ、護ってくれていた時の精霊に御礼を言って、では今後はどうしようかと思案する。
なにせ時の精霊は、精霊の中で最も高い地位に居る。
流石と言うべきか、その分守護して貰う対価がデカい。
アリアが王位に就いてからは、毎日の公務と睡眠の時間以外は、全て守護方陣に霊力を注いでいたと言っても、過言では無い。
王宮で作られる日々の食事では、食物から霊力の補給が出来ない。
マズイ回復薬を飲んで、泥のように眠り、起きたらまた寝るまで仕事漬け。
社畜並、もしくはそれ以下の扱いだ。
よく今まで、精神に異常を来たさなかったなと感心する。
推しが居るか否かで、人生の彩りが変わると言うしな。
心の支えになる存在が居たお陰で、心を折る事なく今までなんとかやって来れたのだろう。
アリアにとってのカノンは、正しく人生を賭けて推している存在なのだな。
そのカノンの代わりにする苦労ならば、喜んで受けようではないか。
むしろご褒美です! 位は思っていそうだな。
それこそ、そのカノンのように精霊術を使い慣れていれば、ただ方陣に吸い取られるまま霊力を注ぐのではなく、自らの意思で霊力を流したり、放出したりする事も出来ただろうに。
そうすれば効率良く方陣全体に霊力が行き渡り、自由時間の確保も、多少は出来たと思うんだよね。
カノンも、妹にそのお役目を押し付けるのなら、教えてやれば良かったのに。
自分が当たり前のように出来るから、失念していたのかな。
約三〇〇年前、英雄を長に据えた国を興すための候補地が出された。
この世界の元々の住民達は、魔物が弱くて作物も育ちやすい、最初から霊力が満ちている光の精霊が担当している北の土地を推したそうだ。
しかしカノンの父親はその、安寧が約束された土地を治める事を拒否した。
彼の気分的な問題になるが、兄弟である地の精霊か火の精霊の加護のある土地に住みたいと思ったのだろうね。
彼らは珍しく、家族仲が良かったから。
そのため五本の指におさまる候補地の中から、王都が選ばれた。
本当は街付近の方が立地の条件的には良かったのだが、交易や魔物の強さの関係から、断念したのだそうだ。
今でこそ整備してあるが、街から王都は近所とは言え、辿り着くまでに大きな川を渡らなければならないし、‘’喰魔の森‘’のように魔物が跋扈する、人の手が一切入っていない大森林を抜けなければならない。
古い街道が森を避けるルートに通してはあったけれど、そちらを通ると、かなりの日数がプラスで掛かる。
交易品の中には、日持ちしにくい物も当然ある。
魔物の素材の場合、浄化を自分で行う手立てが無ければ、早く手放さなければ、瘴気によって魔物ホイホイになってしまう。
王都から次の村まででも、数日。
大きめの町になれば、更に数日掛かる。
ただでさえ強い魔物が出没する場所やその付近で、そんな物を持ってノンビリゆっくりとした足取りで旅なんて、とてもじゃないが、一般の人達には出来ない。
街に城を構えていたら、プラス五日は最低見ておかなければならない。
そもそも、ヘタをしたら魔物に襲われて死んでしまうしね。
ここら辺の魔物って、全国的に見ても強いそうだから。
お人好しなカノンの父親達の事だ。
自分達は何の問題も無かったとしても、力が無い人達を基準に置いて考えたに違いない。
そうやって出来たのが、あの王都になる。
当時よりも世界を巡る霊力量は減っている。
しかし、強力な精霊が二柱誕生した。
カノンとアリアの‘’即死回避‘’の効果が要らないのなら、守護方陣を設置しなくても、一応は問題無いと言われた。
防衛面で見るなら、街に俺が設置した方陣があれば、十分過ぎる程に強力な障壁が展開される。
霊力循環の観点でも、あれば便利。
無くてもまぁ、火の精霊さえ目覚めれば、精霊が頑張って何とかなるよ、程度にはなるらしい。
ただそうなると、精霊の皆は忙しくなるよな。
一緒に旅をしたり、喚び出したらすぐに駆けつけてくれたり、そういう日常は無くなってしまう。
そうなれば、脳内での会話がメインになるだろう。
俺自身は多少寂しさを感じても、まぁ、俺から会いに行けば良いんだしと思える。
ただ、皆から自由を奪ってしまうのは、頂けない。
せっかく肉体のしがらみから、開放されたのだ。
思い至った時に、好きなように好きな場所に行き来出来るようにしておきたい。
もちろん、ソレは時の精霊にだって適応される気持ちだ。
時の精霊なんて、ずっと別次元に拘束されているんでしょ。
せっかくこんなにも美しい世界を見られるのに。
何が悲しくて、心の目で覗くだなんて、危ない人みたいな発言を聞かねばならないのか。
「何か、良い方法って無いの?」
『――お前と、この精霊の力を借りれば、あるいは』
お、あるんだ?
そんな都合の良い方法が??
『――ソレを説明する前に、闇の精霊に対しても同じ気持ちなのかを、確認して置きたい』
『「アイツはどうでもいい」』
俺と元素の精霊の声が被る。
元素の精霊の場合、どうでも良いの言葉の中に、若干のトゲが混ざっていたが。
『――あとは元素の精霊よ。
お主が此度の騒動の責任を負う覚悟があるのなら、とても容易になるのだが』
『――責任と言われても、私が燼霊だった頃の話でしょう?
一度輪廻に至った以上、ソレは私の罪ではないわ』
うわぁ、すげぇ理屈。
さっきまで、自分の行いに身悶えしていたクセに。
だが『精霊としての務めならば、拝受します』と言葉を続けた事により、時の精霊からの提案を実行する事となった。
ツンデレかよ。
まず大前提として、精霊の力関係が変わったので把握して欲しいと言われた。
元々はこの世界の神様と、地球にいた頃から何度も交流をしていた、時の精霊が最も高い地位に居た。
ソレは知っている。
さっきも聞いた。
だが‘’居た‘’。
過去形だ。
元素の精霊は劣化版とは言え、俺の「スキル」――神の名を冠する「万物創造」を持って生まれ、更にその後、俺の一部の感情と合体する事で「完全破壊」と「絶対再生」のふたつのスキルまで手に入れた。
一人で幾つもの「スキル」を持っているだけで頭一つ抜けているのに、その「スキル」がチート仕様なのだ。
そのせいで、今は元素の精霊が精霊の最上位に鎮座しているらしい。
マジか。
時の精霊も、生前はかなり強力な時間を操る能力を持って居た。
しかし「万物創造」は、その能力が付与された道具を創り出す事が出来る。
弱点もあるので上位互換とまでは言わないが、全ての「スキル」が再現可能なのだ。
「スキル」がそのまま精霊として生まれ変わった時の能力に反映されるなら、元素の精霊が現在、精霊の頂点に君臨する事態になっているのも、頷ける。
……が、精霊になったばかりの元素の精霊が、世界全体の霊力の流れを采配をしたり、瘴気が溢れている場所にそれぞれ適した属性・地位の精霊を派遣したりなんて、どうやったってムリだろ。
精霊界の常識が皆無なんだぞ。
しかも社会経験だって皆無なんだぞ。
ムリに決まってる。
まだ燼霊だった頃の感覚が抜けていないから、ヘタをしたら瘴気の噴出を手助けしてしまいかねない。
現地に低位の精霊を急行させ、魔物に襲わせて闇堕ちさせるとか、あるかもしれないじゃない。
俺にはコイツを生み出し、精霊にした責任があるのだ。
そんな危険を孕んだ状態で、「んじゃ、お前が今日から責任者ね」なんて言えるワケがない。
能力で上下関係が決まるのは、単純で分かりやすくて良いケドさ。
流石にこの件に関しては、悪手としか言えない。
精霊自体はこの世界に元々居たそうだが、無秩序で統率がされて居なかった為に、今よりも数が多く霊力に満ち溢れた世界だったのに、その循環は上手くいっていなかったと聞いている。
そのせいで魔物が強化され、徐々に霊力も減って行き、人類が滅亡寸前まで個体数が減ったのだと。
ソコから回復させたのは、時の精霊の手腕によるものだ。
そしてこの霊力が見るからに目減りしている世界でも、何とか少しづつでも人口が増えて来ているのは、精霊の皆と、その下で文句も言わずに働いてくれている精霊達の努力のお陰である。
力によるランク付けが絶対じゃないのなら、新人は新人らしく、立場を一番下にしておくべきだろ。
お茶汲みでも雑巾がけでも、何でもさせておけ。
それこそ、微精霊の使いっ走りから始めるレベルでも、良いと思う。
具体的に何をするかは知らんケド。
氷の精霊は前世のよしみで、水の精霊が教育係になっているそうだよ。
今年の冬は火の精霊が眠りについて居るせいで、全国的にかなりの厳寒となっている。
だがソレも、氷の精霊がその威力を弱らせてくれているから、この程度で済んでいるそうだ。
氷の精霊は冷気を多分に含んだ霊力を取り込み、生まれたばかりだと言うのに、既にかなり強力な精霊になっているとの事だ。
本当は、火の精霊が眠る事で気候が不安定になっている地域に、その冷気を分配して欲しいと思っているのが時の精霊なのだが。
尻拭いとして、水の精霊が雨を降らせたり、曇りの日を多くしたりして調整しているので、今の所は問題無いそうだ。
ほうほう。
そうやって、精霊同士で助け合いながら、安定させているのだね。
アソコは前世が姉弟なので、さほど交流が無くてもすぐに打ち解けただろう。
だが元素の精霊は、前世では他の精霊達との交流が無い。
俺から分離した感情の記憶はあるが、あくまで基盤となっているのは、試験体として俺が「スキル」で生成した女の子になる。
怒りや妬み嫉みといった負の感情は、精霊として生まれ変わる事でキレイさっぱり削ぎ落とされたが、承認欲求はエグい位に強いままだ。
しかも交流を持っていた人間に、ロクなのが居ない。
ぶっちゃけ、コミュ障である。
その上中身は、酷く幼い。
相手が話の枕を語り終える途中で言葉を遮り、自分語りを延々としてしまうような子だ。
精霊の皆が俺に甘いからと言って、俺と似た見た目をしている元素の精霊を、甘やかしてくれるとは限らない。
長い目で見守ってくれれば良いんだケドさ。
ソコん所、どうなんだろうね。
精霊になって悠久の時間を過ごし、心が広くなってくれていると良いのだけれど。
特に水の精霊が。
生前は俺の顔を見る度に、ケンカを吹っ掛けて来るようなヤツだったからなぁ。
この世界に来てからも、直接話す機会が余り無かったし。
術を使う時には、存外素直に力を貸してくれたケド。
だけどソレは、あくまで精霊としての義務だからと、個人的な感情を排除していただけなのかもしれない。
ただ思うのが、氷の精霊にしても元素の精霊にしても、精霊化させる時に負の感情の一切が削ぎ落とされていた。
精霊という存在には、確かに必要無い感情ではある。
しかし精霊の皆がとても人間クサイままなので、特にソコの部分は意識をしていなかったんだよね。
氷の精霊の時は、刺されたらイヤだなぁ程度は思ったので、その部分が反映されちゃったのかな? と思った。
けれど、元素の精霊の時は中身が、俺の記憶だったり感情が含まれているじゃない。
俺が今こうなっているのだから、情操教育さえシッカリすれば、善悪の判断もおいおい出来るようになるだろうと考えた。
なので癇癪を起こす程に苛烈な感情達を、自分の都合の悪いモノだとは、特に考えて居なかった。
なのにも関わらず、今ではすっかり良い子に変身してしまっている。
そう考えると、水の精霊が俺に対して抱いている感情は、負に傾いたモノではないのかもしれない。
一度、機会を設けて話をしてみても、良いのかもな。




