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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、完遂する。

 トップアスリートは、自分をも騙して最高の結果を導くと言う。


 常日頃からまだ出来る、まだ余裕だとポジティブな言葉の暗示をかける。

 脳が無意識に掛けているリミッターを外して、潜在能力を引き出す。


 更に結果が得られるシーンを反復し、イメージトレーニングを重ねる。


 自分には出来るのだと言葉に出し周知する事で、周囲に期待を持たせる。

 その期待に応えようと奮起し、皆の為にも結果を得ようとガムシャラになる。


 そうやって、自分の可能性を認知する。



 自己効力感を高めるのは、スポーツだけではなく、何かに挑戦する時には、非常に有用だ。


「カノンを、取り戻すぞ」


 同じ目標を志す者達であると、自分達は仲間であると確認をするのは、大切な事だ。


 一人ではないのだと信じられる事は、とても心強い。

 困難に立ち向かう、支えになってくれる。


 見回すと、三人とも力強く頷き返してくれた。



 ケガを治すだけじゃ足りない。

 見た目だけ元に戻っても、中身が損なわれたら、意味が無い。


 シスコンで研究バカ。

 お人好しで過保護。


 それが、カノンだ。


 確かに時には頭を抱えたくなるような、向こう見ずで厄介な性格だと思う事もある。

 だけど、そういう個性があってこそのカノンなのだ。


 厄介だろうが煩わしかろうが、何一つとして、損なわれてはいけない。



 俺のワガママを叶えるべく、死神の手を払ってまで目を覚ましてくれた。

 その恩に報いる位の事は、しなければ。



「明夜様。

 まだ余力はあるかと存じますが、こちらを服用下さい」


 言って出されたのは、霊力の回復に特化した薬だ。

 遅効性のもので、霊力を消費し過ぎたなと思った日の夜、寝る前に飲むと丁度良いとされている。


 目覚める頃には、すっかり全快してくれる。



 だがこの回復薬、味こそまだマシなのだが、即効性のあるものと時間を開けずに服用すると、霊力が暴走を起こして大変な事になると言われている。

 周囲にも迷惑が掛かる上、自分の肉体へのダメージも相当な物になるから、飲むタイミングは絶対に間違えるなと、キツく注意された覚えがある。



 現時点で霊力は、体感でしかないが、半分を切っている。

 カノンの治療にどれだけ消耗するか分からない以上、今飲むのは得策ではない気がするのだが。


 もし飲むのなら、即効性のある物の方が良くないか?

 出来れば両方とも飲みたくないけど。


「飲まなければ、後悔することになります」


 ソコまで言うのなら、まぁ、飲んでおくか。


 グイッとあおると、口の中が何とも言えない漢方臭さで充満した。

 う”ぅ、吐き出したい。


 だが、即効性のあるものに比べれば、まだマシだ。

 そう思い、必死に嚥下した。



 即効性のものは、ココに青汁のような青臭さとニンニク特有の不快臭と、ラベンダーのような甘い香りが付く。

 正直、こんなんでもまだ味が改善したのだと言われても、信憑性に欠けると思う。


 少量しか作らないのであれば、ハチミツを足したり青臭さを消したり色々出来るのだけど。

 カノンから最初に貰った回復薬程度の味まで持って行けたら、今迄以上に人気が出るだろうな。



 だって即効性の回復薬の味を経験したら、向こう三日は味覚が狂うんだもの。


 アリアが一気飲みした時、余りの漢らしさに惚れそうになったもんね。


 イヤ、アレは本気でヤベぇよ。

 なるべく飲みたくない。



 頑張って飲み下すと、宰相閣下が懐からアメを差し出してくれた。

 大阪のオバチャンか。


 有難く頂くけれど。



 同時に別の「スキル」を使うなんて器用な事、正直出来る自信はない。


 だが精霊術を使う特訓で、左右の手で別の術を発動させる練習なら、カノンにさせられた。

 今では水球と炎球のように、全く反対属性の術ですら生み出せるようになっている。



 精霊術も「スキル」も、似たようなものだ。


 なら、同時に使うのではなく、右手で「再生」を、左手で「創造」のスキルをそれぞれ使うイメージで行う。

 やる事は同時行使だとしても、考え方ひとつでやりやすそうに思えるのだ。


 「スキル」を使うなら、イメージが湧きやすい方法を取るのが一番である。



 しかし傷の再生に、流れ出た血液や弾け飛んだ欠損部位の作成が、遅れを取らないように注意をしなければ。


 人体生成ならやった事がある。

 あの時はゼロから創った。


 どちらの方が難易度が高いかと聞かれたら、少々回答に迷いが生じるが……



 大丈夫。

 今は皆が手助けをしてくれる。

 当時よりも俺だって成長している。


 大丈夫。

 出来る。


 目を閉じひとつ、深く息を吐き出す。


 問題無い。

 やれる。


「発動させるぞ」


 新緑色と虹色の光が、宙を舞う。

 力み過ぎて「スキル」が暴走しかけた。



 こんな力を一気に込めてしまったら、創造力が追い付かず、血が行き交わず眼球もないままの、創り慣れた顔の造形になってしまいそうだ。


 左右で男女の顔になるなんて、修羅道の主の名前をした男爵じゃないんだから。

 あの創作物も、右側が女性で、左側が男性だったよな。


 ピッタリじゃないかと思ったが、アリアに怒られそうだから辞めておこう。

 爆死しても困るしね。



 最初に簡単な失敗をしてしまった方が、緊張が少しほぐれて、かえってやりやすくなった。


 再び深呼吸をして、宰相閣下に目で合図を送り合い、再びカノンに向き直る。


「ごめん。

 もっかいやります。


 宰相閣下は、合図を出したら、スキルの発動をお願いします」


「承知しました」


 溜息とも呼吸とも取れる息を短く吐き、今度こそ「スキル」を発動させた。



 「創造」と「再生」のどちらが早くても、遅くてもダメだ。


 最初は慎重に。

 ペースが掴めたら、徐々に出力を高めて、スピードを早める。



 合図を出すために視線を外そうとしたら、乱れが生じた。

 意識が少しでも他所に向かうと、動揺が生じるらしい。


 再度安定し始めた所で、コクリと首を動かす。

 それでも僅かではあるが、「スキル」の光が少し踊った。



 大規模な肉体損傷を治すのは、これ程までに困難を極めるのか。

 知識だけなら十分あるが、やはりソレだけでは医者は務まらないのだなと改めて思う。



 ただその思考の流れで、帝王切開手術をした事を思い出した。


 アレだって広域でいえば手術だ。

 分野が違おうと、成功させた経験がある。


 その上今はあの時よりも、傍で支えてくれる人、協力してくれている人は多い。


 大丈夫だ。

 なんとかなる。

 なんとか、しよう。



 宰相閣下は意図を汲んでくれたようで、一言声をかけた後に、「スキル」を発動した。


 少しずつ、「スキル」が加速度的に力を増していく。

 それと同時に、俺の中の霊力がドンドン目減りする。



 あ、宰相閣下の増幅機能って、エネルギー消費量も増えるのね!?


 やっべぇ。

 俺の霊力って、どんだけ残ってるんだろう。


 燼霊との戦いで、かなり減ってるぞ。



 霊力って、全体量の何割を切ると体調崩すんだっけ。

 この雑念を払わねばならない時に、そんな事になったらヤバいでは済まない。


 頭痛ならまだ良い。

 慣れてるし。

 目眩を伴おうが吐き気が襲おうが、耐えられる。



 だけど俺の場合、眠気が来たらマズイ。

 睡魔に抗う術が俺には無い。


 だって子供は寝ろっていつも甘やかされて来てしまったものだから!


 そうか、つまりコレは俺が大人になる為の試練なのだな。

 ほほぅ、なるほど、宜しい。

 受けて立とうじゃないか。



 力の増幅は外部に出力した「スキル」と、内部のエネルギーを貯蔵して置く為の器官両方に作用されるようだ。


 宰相閣下が回復薬を飲むように言ったのは、このせいか。



 回復薬のベースは聖水だ。

 その聖水には多分の霊力が含まれている。


 宰相閣下の「増幅」は、霊力にも作用すると言っていたが、物質に含まれている霊力にも作用するらしい。


 遅効性の回復薬は、効果の持続性が高い。

 「増幅」によって効果の出現が早くなる上、その効能も増加する。


 お陰で消費する先から霊力がドンドン体内に増えていく。


 この回復速度だと、むしろ手を止めたら霊力暴走を起こしてしまいそうだ。

 遠慮なく力を注ごう。



 全身の毛が逆立つような力の激動の中、今迄に無い霊力の出力に、頭がクラクラして来た。

 脳が異変をきたしているせいだろう。


 鼻血も漏れて来た。


 「スキル」を過度に使うと、血管や神経にも異常が起こる。

 血圧が高くなり過ぎているのだろう。



 不快な鉄臭さのお陰で、覚醒するから好都合だ。


 例え脳の血管が破れた所で、俺自身のケガなら本能の為せる技なのだろうが、意識せずとも勝手に治っていく。

 そっちにリソースが割かれる事は無い。



 脳と頭蓋骨と脳脊髄液は、同時に「創造」しなければならない。

 どれかひとつ欠けても、いけない。


 脳漿が無ければせっかく創った脳の形が保てないし、頭蓋が無ければ脳漿が漏れ出て意味を成さない。


 損なわれていない神経を、創った仮想器官に対して「再生」を用いて張り巡らせる。

 主要な脳溝は「創造」した際に目安程度で刻んではあるが、カノンの場合シワの数も深さも凄い事になっているだろう。

 実際は脳のシワと賢さは、イコールでは繋げられないそうだけどね。


 冗談を考えられる程度には、心にゆとりが出来たのかな。


 最大の重要箇所が完了したお陰で、少し心に余裕が持てた。

 調子に乗っている今、このままの勢いで、全部治してしまおう。

 


 次は顔の筋肉だ。


 筋繊維は約〇.一mm。

 それが筋肉ごとに束になっている。


 顔の筋肉は種類が多い。

 その様々な表情筋によって、顔にメリハリを持たせ、印象を大きく変えるのだ。


 傷付いているのは、前頭筋・皺眉筋・眉下加勢眼輪筋・口角挙筋・小頬骨筋・大頬骨筋・笑筋・上唇挙筋……くらいかな。


 瘴気のせいで、傷口の広さの割に、損傷箇所が多い。


 眼球だって構造がかなり難しい。

 ベースがある右顔を創るのと、基礎すらない眼球を創るの、どっちの方が難しいだろうか。


 場合によっては、眼球から創りたい。


 だが答えは、どっちもだ。



 微小外科医に求められる、血管や神経の縫合のような、精緻を極める吻合・縫合もモチロンかなりの手腕を必要とする。


 顕微鏡を用いなければ見る事すら困難な世界の話だ。

 僅かな振戦すら許されない。

 当然である。



 ソレを考えれば、「スキル」でゼロから創った方が、楽なのかもしれない……?


 ならば、ズタズタに引き裂かれている筋肉は全て除去して一から創ろう。



 各表情筋の発達具合まで、元に戻せるだろうか。


 元々頬のたるみも、ほうれい線も無い顔面だ。

 強固にしすぎてしまって、顔が歪んでしまったらヤバいよね。


 固定されるのが普段の眉間のシワではなく、頬筋によるはち切れんばかりの笑顔になったら、怖過ぎる。

 お説教が始まりそうな雰囲気が、常に漂う事になってしまう。


 失敗は許されない。

 今一度、気を引き締めねば。



 顔の「再生」を終えたら、瞼の奥にある空洞に、目玉を創る作業に取り掛かる。


 胎児の目の形成が参考になれば良かったのだが、外胚葉も中胚葉も、発生・分化・形成は、胎生三週頃から始まるものだ。


 三〇〇年近く前の記憶にすらない経験を、この歳になってまではしたくないだろう。

 硝子体動脈なんて、創るだけムダになるしね。



 硝子体から始まり、中心窩・網膜・脈絡膜・強膜と創り、角膜や水晶体のような、眼球の主要部位を形成。

 視神経を通しつつ、網膜・シュレム管・毛様体と細かな組織も創り込んでいく。


 レンズの形を間違えないようにしなくちゃね。

 俺お得意の、ウッカリでは済まされない。



 瞼の奥で行われている事なので、周囲の目には何をしているかは分からないのだろう。

 頭の再生や顔の筋肉生成をしていた時よりも、アリアがやや前のめりで様子を覗き込んで来る。


 目に見える成果が無いのに、派手に霊力と「スキル」のエネルギーが飛び交って居るから、余計に不安になるのだろうな。


 そんな心配せずとも、もう、間もなく終わる。



 脳に異常――ナシ。

 体温、血圧、脈――正常値。

 呼吸――回数、音、リズム共に安定。


 無事完治した。

 そう言っても、良さそうだ。

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