表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/251

神さま、目を見開く。

 最後の避難者である、囚人達とアルベルトが、カノンの気配と合流した。


 転移方陣で移動出来る人数は、方陣に乗れるだけ。

 足元が乗っていたとしても、方陣の円から肩や腕がはみ出てしまった場合、どうなるのかの実験は、まだしていない。


 安全圏を取るならば、方陣の範囲ギリギリまですし詰め状態にはせず、余裕を持たせるだろう。



 そうすると、方陣を起動させる回数はどうしても多くなる。

 カノンの霊力だけで、王都(ディルクルム)から(オルトゥス)まで全員避難をさせられるだろうか。



 夢魔達の力では、あの方陣は動かせない。


 アリアや宰相閣下殿、アルベルトの霊力を足すなら大丈夫だけれど……

 全員が全員、霊力をスッカラカンにしてしまったら、燼霊に増援が現れた場合の対処をして貰えなくなる。


 燼霊の相手は特に問題無いが、複数地点で同時に襲撃をされたら、人手が必要になる。

 流石に分裂は出来ないからね。



 方陣に霊力を注ぐのにも、時間が掛かる。

 なら、全員撤退までは、暫く掛かるな。


 まだ、時間稼ぎが必要だ。



 「スキル」を使った戦闘訓練なら施設でもやったけど、「破壊」はかなり厄介なスキルだな。


 建物の崩れ方を見るに、分解と消去以外にも、破壊に関わる現象を引き起こしているな。

 砂塵化する時と、抉れたように「スキル」が当たった箇所の物が消失する場合が多いが、時折、命中した所から樹形状にヒビ割れが広がるパターンもある。


 物質を破壊する際に必要なエネルギー量って、かなり多いからね。

 石材を塑性変形する間もなく脆性破壊まで持っていくとなると、一体どれだけの負荷を掛けたのだろう。


 人間にその力を向けるなんて、殺意が高過ぎやしないだろうか。

 ミンチになんて、なりたく無いぞ。



 モノクロの絵に修正液でも落としたかのように、存在した事すら忘却させられそうな圧倒される「破壊」に関しては、一発でもモロに喰らったらヤバそうだ。

 目測を誤って、腕に少し掠っただけで、周辺の肉がくり抜かれたように円状の穴が空いた。


 すぐに治癒をしたけれど、当たる場所が少しでもズレて居たら、上腕と前腕が離れ離れになってしまう所だった。


 千切れてしまったら、治すのに時間も集中力も持っていかれる。

 あの攻撃は確実に避けなきゃだね。


 格好付けて紙一重のギリギリで避けようとしたら、致命傷になりかねない。



 稲光のように広がる、あの攻撃は何だろうな。


 絶縁体に加わる電場の強さが一定以上になった時、絶縁破壊という現象が起こる。


 電気を通しにくい物質が、耐えられる基準値を超えそうになった時、一気に抵抗力が落ちて爆発的な電力が流れる。

 その時に絶縁材料の表面や内部に現れるのが、リヒテンベルク図形である。

 木の枝のような模様が浮かび上がるのだが、コレが結構格好良い。



 破壊にまつわる現象なら何でも起こせる、なんて事は無いと思うので、絶縁破壊では無いだろう。


 雷光のような激しい明滅は起きなかったし。

 何より「雷」のスキル持ちが泣きそうだ。



 それに柱も壁も石材なのだ。

 電流が流れたのならジュール熱による膨張で、砕けるなり破裂するなりしそうだ。


 こんな風に、ヒビ割れ程度の被害で留まる事はない。



 不思議に思っていると、樹形状のヒビから瘴気が滲み出てきた。

 高濃度の瘴気に侵され、壁は亀裂から徐々に熱したチーズのように溶けて崩れて落ちる。



 おぅ……

 コレはもし人間に当たったら、とっても苦しみもがきながら、内臓破壊によって死に至るヤツではないですかね。


 おっそろしい攻撃して来んなよ!

 殺意が高過ぎる!!



 分裂してしまったとしても、燼霊は俺の一部だったものだ。

 他人じゃ無いんだし、どうにかこうにか生かしてやりたいなぁ、なんて思っているのに!

 何てヤツだ!!


 燼霊からしてみれば、俺は生みの親みたいなものじゃないのか!!!??

 ……だが確かに親でも、心底憎むべきクズはいるしな。

 親子だろうが、クローニングの大元だろうが、関係無いか。



 俺に成り代わりたいと思っているのだろうけど、俺が死んでも、(アキ)の寵愛が自分に向くとは限らないのに。


 逆に怨まれるとは考えないのだろうか。

 無関心よりはマシって感じなのかな。


 イヤ、そもそも(アキ)の関心が俺にまだ向いてるとも限らない。

 俺が生きてようが死んでようが、それこそ微塵も関係無いと思っていて、考えてすら居ないかもしれない。


 その可能性の方が高いだろ。

 何百年と経っているんだぞ。


 関心なんて、とうに他所に向いている。


 その可能性すら視野に入れていない燼霊は、いっそ、憐れだな。



 囚人の転移まで終えたのだろう。

 人間の気配が、四つまで減った。


 アリアと宰相閣下も、(オルトゥス)に避難すれば良かったのに。

 流石に囚人と同じ方陣には乗れないか。



 夢魔は囚人と共に転移し、(オルトゥス)へ戻ったようだ。

 わざわざ戦いに巻き込まれる必要は無いのだから、それで良い。


 むしろ実験で王都(ディルクルム)に一足先に送られた同士を回収したら、即戻っても良かったのに、残ってくれてたのだな。


 お陰で(オルトゥス)に着いた途端囚人が暴れだしても、対処してくれる人員が確保出来た。

 有難い事だ。



 カノン達が残ったのは、俺と合流する為なのだろうか。

 もしそうだとしたら、阻止したいな。


 カノン達が狙われていると分かった以上、この場には来るべきでない。

 特にアルベルトなんかは、瞬殺されるだろうし。


 隙を見て、手紙(シルフィード)でも飛ばそうか。



 もう反撃に出ても大丈夫だろう。

 なるべく過不足なく「スキル」を無効化していた戦法は辞め、攻撃に転じる。


 防戦一方だった相手の戦い方が急に変われば、少なからず戸惑ってくれるハズだ。

 困惑しまごついている間に、「コッチ来んな」の一言だけでもカノン達に送りたい。



 「破壊」を無効化する為に必要なエネルギー量は大体掴めた。

 それに霊力を上乗せして放てば、コチラに向かってくる攻撃を無効化しつつ、相手にダメージを与えられる。



 纏っていた杖を具現化させた。


 霊力の出力を抑えたい時、杖はとても使い勝手が良い。

 一度の術で打ち出せる霊力量に限りを設けられるし、精霊術なんて科学的には説明出来ない事象を引き起こすのに、イメージがとてもしやすいのだ。


 それに杖とかコンパクトとか、魔法少女の必須アイテムじゃない?

 妄想が捗るよね。


 その妄想力が術になるのだ。

 素晴らしい。


 まぁ、放つのは殺傷能力のエグいレーザービームなので、全然可愛さの欠けらも無いが。



 空気を切り裂く甲高い音が二発、三発と重ねる度に、燼霊は攻撃の余裕を失い、防御に徹するようになった。

 意外と、体勢が崩れるのは早そうだな。



 俺の一部だったワケだろ。

 しかも、怒りや悲しみ、恐怖のような負の感情と、愛情となると、結構な割合を締めて居たと思うのだが。


 しかも何百年と俺よりも長生きをしている。

 正直、もっとタチの悪い強さだと思っていた。



 プルチック氏が提示した感情の輪で言うのなら、八つの基本感情のうち、警戒・激怒・憎悪・悲痛・恐怖は燼霊が持って行ってるハズなんだよ。

 八つのうち五つって、半分以上じゃん。


 イヤ、違うな。

 愛情は恍惚と感嘆からの応用感情とされる。


 それらもとなれば、俺の中から感情がことごとく失われて居る事になってしまう。

 そんなバカな。



 愛欲や性愛こそ喪われていたとしても、友愛や愛他的な献身愛なんかは、間違いなく俺の中に、確かにある。

 そうじゃなかったら、一本間違えれば自分も死ぬかもしれないのに、時間稼ぎとか考えないって。


 逆に死ぬのは怖いし、痛いのも嫌だ。

 憤怒まではいかなくても怒り位はするし、憎悪はしなくても虫系の魔物を嫌悪している。



 ソレらを統合して考えると、俺から欠落した感情が丸々燼霊になったのではなく、ある程度絞られた一部の記憶とソレに付随する感情の一部が、俺の中から損なわれた。

 そしてそれが燼霊になった。


 その程度の事になるのか。



 どうせなら、闇の精霊(テネブラエ)の事とかスッパリ記憶から消去してくれれば良かったのにと、思わずには居られない。



 見た目が俺そのまんまとはいえ、燼霊はなよっていて乙女的な部分が垣間見える。

 そのせいで少々心が痛むが、畳み掛けるように攻撃を放つ。



 捌き切れなくなり、勢いに押されて転倒した燼霊の眼前に、杖を突き付ける。


 先端には一撃で燼霊を無力化させられるだけのエネルギーを込めた「破壊」のスキルをチャージしてある。

 俺の意識ひとつで、すぐに放てる。



「このまま死ぬ?

 俺の提案を聞く??」


 殺すつもりは毛頭ないが、脅し文句としては必要な言葉だろう。

 出来れば折れて欲しいのだが。


 そんな本心はおくびにも出さずに、なるべく無感情に燼霊を見下ろす。



「……ゅうね」


「あん?」


「三流ねって言ったの。

 無力化さえしていない敵を前に、交渉の余地を与えるなんて」


 自分が有利である事は事実でも、みくびったつもりはない。

 慢心したつもりもないが、相手が格下であると、どこかで油断はしていたのだろう。



 燼霊は俺が訝しんだ一瞬にも満たない隙を掻い潜り、「創造」のスキルを使ってゲートを開いた。


 亜空間からクズ霊玉を取り出しているのを、見ていたからだろう。

 時の精霊(クロノス)の力を借りずに、「スキル」だけで時空の裂け目を創ってしまった。

 なんてポテンシャルだ。



 ニブルヘイムにまで繋げる事は出来なかったようだが、この世界の、ごく近い場所にその裂け目を繋いだ。

 そしてソコから複数の人間を、手品でも見せるみたいに一気に出現させた。


 転移方陣の近くに居たから繋げ易かった、という理由もあるかもしれない。

 まだその場に残っていたうちの三人が、一度にこの場へと連れて来られてしまった。


 しかも、俺と燼霊の間に。



 杖の先に溜めてあるエネルギーに触れてしまったら、俺の意思と関係なく暴発してしまう。


 そう思い杖を少し杖に向け、一歩、後退をした。

 視界の全てを塞ぐなんて、ヘマはしていない。


 だがカノンとアルベルトが、突如転送されたにも関わらず、驚異的な身体能力で倒れる事なくその場に踏み留まり、俺の視界から燼霊が消えたのは、事実。


 一瞬。


 ほんの僅かな、一秒にも満たない時間の中で、燼霊は「破壊」による攻撃を両手から二発、打ち出した。



 ろくに念じなかった為、威力は弱い。

 攻撃範囲も狭い。


 しかし――人体を壊すには、十分な威力だった。


「いやぁぁああぁぁぁっっ!!!!!」


 つんざくようなアリアの悲鳴が、周囲にこだました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ