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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、油断する。

 (アキ)に「破壊」スキルを伴った攻撃を心臓に受けたのが、俺の最期だ。


 そりゃあもう、傷痕からして見事に背中までプッスリと貫通したのだろう。

 出血量はかなりのものだったに違いない。


 真正面にいた(アキ)は当然、おびただしい量の返り血を浴びた。



 「スキル」の強奪は、体液を介して行われる。


 その事実を知るのは、アノ時は俺一人だった。

 (アキ)は当然、知らなかったと思う。



 だが俺が今際の際に、(アキ)の「スキル」を奪ったのが、感覚的にバレたのだろう。


 そして俺を死なせたくないと思ってくれたのか、それとも、奪えるのなら奪い返せると本能で感じ取ったのか。

 (アキ)に俺が持っていた「スキル」を、一部ふんだくられてしまったらしい。



 この世界で目が覚めた時は、そんな感じはしなかったんだけどな。


 まぁ、あの時は「スキル」を使用する際のエネルギーが、底をついていたからね。

 「スキル」そのものが弱体化していても、気付けなかったのだろう。



 俺を殺してしまった事なんて忘れて、サッサと幸せになれば良かったのに。

 それが出来なかった(アキ)は、どうにか俺を取り戻そうと、躍起になった。


 俺がこの世界に落とされた時に、地球で身に付けていた衣服のままだったように、(アキ)もこの世界に招かれた時に身に付けていたのは、俺の返り血がベッタリと付着した制服だった。


 ソコからよくもまぁ、クローン体を作り出せたなと思う。

 俺から奪った「創造」を含めた「スキル」と、胤冑(いんちゆう)棟に隠されていた設備によるものなのだろうが。


 そうして創り出されたのが試験体一号(プロトスニカス)試験体二号(プロトスヴィニー)試験体三号(プロトストリア)の三人だ。


 創るだけ創っておきながら、「()()は明夜じゃない」と否定された。

 更に三人の人格を無理矢理ひとつの肉体に詰め込まれ、それでもダメだったと捨てられた。


 だけど(アキ)への恋慕が、人格の大半を占めていた為に、執着心が強く、離れる事がどうしても出来なかった。


 元々は俺の中にあった感情達なワケだろ?

 我ながら、なんて女々しいんだと思ってしまう。



 目の前の燼霊――試験体二号(プロトスヴィニー)の記憶は、当然、作られて以降のものになる。


 聞いた話を統合して考えた時にこうだろう、と予測したものでしかない。

 なので時系列が前後していたり、空白の部分はやはりある。



 実験が行われたのは、本当にこの世界なのか。


 どうやって俺が棄てた感情を、クローンに移植したのか。


 疑問は尽きない。



 燼霊がつくられた経緯が謎なんだもの。

 この世界の神様は、燼霊を創っていないと、精霊の皆は言っていた。


 いつ燼霊が誕生したのかによって、時系列がおかしくなる。



 (アキ)がコイツ等を創ったとして、だよ。

 確かに中身の人格と、外身の俺の遺伝子で形成されたクローン体があれば、適合率は高く、この世界で顕現し続けるのは容易だろう。



 だがそもそも、生態研究の分野において、(アキ)は門外漢だ。

 俺のように「知識」へと好き勝手にアクセス出来る権限を持っていない為、情報を仕入れる事も学ぶ事も不可能だ。


 権威であった闇の精霊(テネブラエ)は、俺が殺している。

 技術者を育成するような余裕が、‘’地球再生計画‘’の後にあるとは思えない。



 この世界に転移した時には、(アキ)が燼霊になっていたのだとしたら、クローン体を作るなんて不可能じゃない。

 精神体なんだもの。

 物質への干渉が出来ないからね。


 かと言って、人間のままこの世界に来ていたのだとしたら、‘’地球再生計画‘’から地球の人達がこの世界に転移するまでに数年は掛かったはず。

 血液がベッタリついた衣服でずっと生活なんて、流石にしないでしょ。


 例えソレが恋人のものであったとしてもさ。

 むしろ不健全だし不衛生だと、周囲が脱がして捨てている。


 不透明な事が多過ぎるのだ。



 (アキ)が生命を弄ぶタイプのクズだったと思いたくない気持ちが先行している部分は多少なりともある。

 だが何より、そんな事は現実的に不可能だろうと考えてしまう。



 だがしかし、目の前に事実、俺と瓜二つの燼霊が居て、俺しか知るはずのない記憶も持っている。

 劣化版とは言え「スキル」も持っている。


 全てが事実では無かったとしても、語られた中に真実はあるのだろう。



 流石に一人の視点で話された内容の全てを、手放しに信じる事は出来ない。


 特にこの試験体達は、俺の腑抜けた軟弱な精神の集合体みたいなものだろう?

 悲劇のヒロインぶった考え方から、事実を歪ませて認知している可能性が否定出来ない。



 (オリジナル)が生きていると知ったから、自分達は(アキ)に捨てられたんだとか喚き散らして居るんだよ。


 俺が自身ですら煩わしいと感じていた、表面に出さずに誤魔化し、心の奥底にしまい込んでいた感情だぞ。

 ソレを全面に出した試験体達を、周囲が俺だと認識するなんて事、端から微塵たりとも、ワンチャンすらない。



 冗談めかした言葉でなら言う事はあっても、ココまで酷い他責根性が俺の中にあったなんて、気付きたく無かったなぁ。

 イヤ、こういう形でコイツ等が持っていると言う事は、今は俺の中には無いのだろう。


 だから他人事のように考えてしまうのだ。



 闇の精霊(テネブラエ)を恨む気持ちなんかが俺の中に見えないのも、全部棄ててしまったが故だったのかな。

 悟りを開いて達観したからでは無かったのか。


 天上天下唯我独尊とか、天地を指して言いたかった。



「……――そう。

 オリジナルを殺して、手土産でもあれば、アノヒトも私たちを認めてくれると思って、わざわざこんな所まで出向いたの」


「手土産?」


 俺が居なくなれば‘’明夜‘’の席が空席になるから、自分達がソコに収まれる、とでも思っているのか。


 なんて幼稚な。

 椅子取りゲームじゃ無いんだから。


 何かしらが失われた空虚感は、別のモノで覆い隠したり、隙間を埋めて誤魔化す事は出来ても、無くなる事は決してない。



 俺が死んだ後(アキ)がコイツ等を求めたのも、結局ダメだったのも、そのせいだ。

 ソレは妥協であったり、紛らわしているだけだもの。


 いつしかふとした瞬間に、現実的と向き合わなければならない時が来て、やっぱり違うとなった時、必ず傷付く事になる。


 ココまで恋というものは、人を盲目的にさせるのか。


 (こっわ)っ!

 寒気すら感じるわ。



 まぁ、俺の事は良いよ。

 そう易々と殺されるつもりはないし。

 一旦置いておこう。



 意識してやったワケではないが、ポイ捨てをした責任位は取ろうと思う。

 可能な限り、試験体達の望みを聞こう。


 俺の中に戻りたいと言われたとしても、ムリだろうが。

 まず方法が分からない。

 それにコイツ等が燼霊として過ごした期間が長すぎて、俺との間の認識に乖離が起きてしまっているから、まず不可能だ。



 創っておきながら捨てた(アキ)がムカつくから、一発ぶん殴ってやりたいと言われれば、ソレに応じよう。

 殺し合いになりそうだから、出来れば会いたくないとは思うが、仕方が無い。


 諦めてニブルヘイムに行く手立てを模索するなり、短時間だけ(アキ)をこの世界に喚び出す手伝い位なら、してやっても良い。



 大人しく殺されろと言われたら、申し訳無いが断る事になる。


 だってまだまだやりたい事があるし、やらなければならない事だって山とある。


 そうなると死にたくない本心が勝って、どれだけ無防備な状態で試験体達の攻撃を受けたとしても、回復を自動でしてしまうと思うんだよね。

 

 要望を通せないので、気が済むまで話し合いなり殴り合いなりするなら、付き合ってやろうじゃないか。



 ただ、手土産って、マジで何??



「――アナタがご執心な人間の、首を見繕って献上しようと考えているの」


 瞳孔をカッ開いて、ヘラヘラ笑いながらヘロディアの娘みたいな事をのたまった。

 とても正気とは言えない表情で、怖い事を言うなよ。



 コレが魔物の首を捧げようとか言うのなら、趣味を疑いこそするが、添える為にキレイな銀食器のお盆でも用意してやろうと思える。

 だが人間となると、全力で止めなければならない。



 しかもどうやら、その土産はカノンとアルベルトで決定しているらしい。

 他の人なら良いとは思わないが、ピンポイントで二人の名前を出されると、複雑だ。


 俺の中で彼らは、ソコまで重要視されるような大人物になっているように周囲からは見えている、ということだろ。


 何より前回(アキ)が顕現した時、俺の近くにいたからと、二人が狙われているようだ。

 物理的に近いのがダメなのか。



 教会の扉に施されていた罠は、二人、もしくは二人のどちらか片方だけでも捕らえられたらと思い、仕掛けられていたらしい。

 アルベルトを過剰評価し過ぎである。


 あの罠の事があったから、カノンを前線になりそうな場所から遠ざけたのだが、正解だったようだ。

 あとはアルベルトが囚人達と一緒に、避難するまでの時間を稼いで、試験体の望みを聞いて……



「――狂気(私たち)を、舐めすぎてない?

 アノヒトのためならば、何でもする。

 オリジナルであるアナタが、一番よく分かっているでしょう?」


 愉悦に顔を歪めながら、ケラケラと高笑いをし出す様子は、自称するだけあって、狂気に満ち満ちている。

 会話をしている間に、エネルギーが回復してしまったようだ。


 笑い声と一緒に、攻撃が再開してしまった。



 精度の落ちた「スキル」が復活している。

 イヤ、むしろ最初よりも余程威力が高い。



 中身と外身が一致しているが故に、適合率の高さから完全な人間の肉体を得ているから錯覚しそうになるが、試験体は、あくまで燼霊だ。


 瘴気や魔力を糧としている。



 避難最中の人達の不安感を餌にして、目減りしたエネルギーを補給したのだ。

 ハデに暴れていたのも、建物が破壊され崩壊する際に地下に響く音によって、恐怖心を煽る為か。



 周囲が瘴気に満ちているとなると、霊力はその分回復し辛くなる。

 いくら俺の霊力の総量が多いとは言え、限りはある。



 自然回復が見込めないとなると、サッサと決着を付けないと、もしかして危ういのでは無いだろうか。

 余裕ぶっこいていたらエネルギー切れで敗北とか、シャレになんねぇぞ。



 しかし、元が俺の一部となると、責任を取らなきゃだと、ついつい考えが頭をよぎってしまうんだよね。

 俺が今身軽に、過去の過ちに対して気負う事なく過ごせているのは、コイツ等を切り離したお陰なんだもの。



 特に闇の精霊(テネブラエ)に対してなんて、自分の一生を踏み躙られて、蔑ろにされて、死ぬ事を強制させた諸悪の根源じゃない。


 俺の中に怨念が渦巻いていたら、この世界で神様と同等の欠かせない存在だと理解していても、とてもじゃないが許せないと、復讐を遂行していたかもしれない。



 他の燼霊よりも理知的に行動出来るし、対話も可能なのだ。

 (アキ)への執着心を無くして、カノンとアルベルトを見逃してくれるなら、滅ぼす必要は無いんじゃないかな、と思う。



 過去の事に出来なかった恋心を、拗らせてしまっているだけだろ。


 その盲目的な対象を幻滅すれば、過去に囚われずに未来に目を向けられる。

 次に目を向ける事が出来れば、吹っ切れるのなんて、簡単だと思うのだけれど……



 それにコイツ、俺と近い能力を持っているんだろ。

 あわよくば、コチラの陣営に取り込みたい。


 今更合体しろと言われても難しいし、ぶっちゃけそんな持て余しそうな感情は要らないので、氷の精霊(スティーリア)にやったように、精霊に出来ないかなと考えている。


 氷の精霊(スティーリア)でさえ、元がアレなのに新しい精霊として生まれ変わり、今ではかなり強力な精霊になっている。


 コイツなら、それ以上のポテンシャルがあるのだ。

 精霊間での上下関係が変わるレベルの強力な精霊が誕生するかもしれない。



 だが……コイツが言ったように、(アキ)の為ならば何でもしたいと思う気持ちが、俺には痛い程、よく分かる。


 ソレで、精霊の皆を殺しているワケだからね。

 コイツだって、文字通り、何でもやってのけてしまうのだろう。



 制約がない分、コイツの方が余程自由に行動出来る。

 カノンもアルベルトも、善戦こそするだろうが、負けて、殺されるのがオチだ。


 殺し合いなら瞬殺出来ると、日々カノン達には手合わせをする度に申し出ていた。

 まぁ、軽く流される迄がセットの会話ではあったので、本気にはされてないだろうが。



 その油断し切った所で、「破壊」によって一瞬で決着がついてしまうこと、請け合いだ。

 ならば二人がココに来る迄に、決着を付けなければならない。


 さすがに首と胴体が離れてしまったら、俺とて治癒は出来ないだろう。


 さて、どうするかな〜……

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