神さま、複製体を認識する。
いつもご覧頂きありがとうございます。
今日も書いてる途中で、眠気酷くて寝落ちしてしまいました(;°ロ°)
誤字報告ありがとうございました!
適用致しました〜
いつもご迷惑お掛けしておりますm(_ _)m
精霊術で作る防護壁は、俺の場合、両手を伸ばしても届かない位の大きさの球体だ。
なので、直径一八〇cm程だろうか。
一般的には半球体のものが多い。
なので地面からの攻撃にはめっぽう弱いなんて事もある。
カノンが手合わせの時、半球体の防護壁を使っていて、その事に気付いたおかげで初勝利を収めたのは、良い思い出だ。
直ぐに改善されてしまったので、同じ戦法は使えなくなったが。
つまり防護壁は、自分の身体に対して結構ゆとりがある。
精霊術を使う時、詠唱をするのならば、離れていても口の動きで、ある程度どんな術を使うのか予測を立てる事が出来る。
また一般的なものだと、音がダダ漏れになるので微かにでも詠唱の内容が聞こえれば、相手の使う術の目星がつくため、対処が可能だ。
しかし俺がカノンから習った防護壁は、最初からジャミング機能が付いていた。
音漏れしないし、目に見えない壁ながら、ランダムで揺らぎが生じるため、相手には蜃気楼のように朧気な姿しか見えなくなる。
唇を読む事も、盗み聞きされる事もほぼ無いと考えて良い。
では精霊が心を読もうとした時、ソレを妨害する事は可能か? と問われれば「可能になった」と答える。
カノンが教えてくれた防護壁では、防ぐ事が出来なかった。
思考を直接読まれるなんて、想定した事もないんだもの。
そりゃそんな機能、付いている方がおかしい。
なので精霊の協力のもと、防護壁の更なる強化を施した。
今俺が使っている防護壁が、ソレである。
なのにも関わらず、何故か燼霊には俺の思考が筒抜けだ。
精霊と夢魔の思念を通した会話の周波数が違ったように、燼霊もまた、違うのだろうか。
そのせいで、思考を読み取る時の妨害が発動せずに、読まれてしまったのか?
人間側はその周波数を意図的に変える事が、非っ常〜に難しいのに、アッサリと壁を越えて来るのを辞めて頂けないものかな!?
コレだから精神体の連中は!!
今後はパッシブ方式も併用するべきだろうか。
ノイズ・ジャミングだけでは、相手によっては突破されてしまうようだし。
だがその突破した理由は、上位の存在だからではなく、相手がこの燼霊だからこそなのかもしれない。
そう思った。
思考が読まれた所までは、地の精霊や水の精霊を欺けても、光の精霊には通用しない事もあったし、仕方が無いと受け入れた。
それだけの強者なのだと、油断してはいけない相手なのだと、緩んでいた気を引き締めるキッカケとなった。
だが、気付くのが遅過ぎなのだが、コイツ、防護壁をすり抜けて、俺に肉薄をしたんだよな。
「破壊」の余波が襲って来たら、肉体にどう影響が出るかが分からない。
そう思って、かなり強固な防護壁を展開していた。
そうだな……カノンの本気の攻撃なら、ギリ三回は防げる位。
ソレを無いものかのように、違和感を抱かせる事もなく、アッサリと俺の目の前まで来た。
手を伸ばせば届く距離、なんてもんじゃない。
文字通り、眼前だ。
防護壁と外敵が接触したり、術を防いだりしたら、霊力が消費される。
侵入を防止する為に弾き返したり、損傷箇所を修復する為だ。
そんな反発すら、一切無かった。
防護壁が拒否反応を示さずに、出入り出来る人物なんて、一人しかいない。
ソレはつまり……?
「お前、俺のクローン体か……?」
「えぇ。
今更気付いたのですか?」
フッと、片眉を上げて嘲笑する姿は、正しく俺そのものだった。
あ、この!
いちいち人を小馬鹿にするような感じ!!
自分だと思うと、殊更腹立たしい!!!
一卵性双生児でも、見た目の特徴が一致しない事はある。
クローニングも同じで、元の生物固体と同じ遺伝情報を持って居ても、外見的特徴の全てが、必ず一致するとは限らない。
血管のパターンや指紋のように、生活をする上で形成されていく後天的要素となると、当然随分と異なって来る。
犬や猫なんかになると、クローン技術によって生み出された個体は、元の毛色から性格まで全然違ったそうだし。
オリジナルとなった個体の猿真似をした所で、全く同じにはなれない。
なれない……が、この燼霊はオリジナルとなった俺と、限りなく近い個体と言える。
だが肉体が俺のクローン体、つまり遺伝子レベルで俺と全く同一であったとしても、防護壁は本来、突破出来ない。
なのに防護壁が誤作動を起こして、燼霊を招き入れるに至った。
それはつまり、遺伝子情報から、一人一人違うハズの霊力や「スキル」の内訳までほぼ一致しているから、という事だ。
防護壁は遺伝子情報に身体的特徴。
また霊力の質等の俺のデータと、六〜七割方一致すれば、同一個体と見なしてしまう。
クローンならば、遺伝子情報なら一〇〇%一致する。
しかし他のデータで適合率はドンドン下がっていく。
まさか、基準を満たしてしまう存在が、俺自身以外にも居るなんて……
そんな事、想定していなかったんだよ!
出来るわけ無いじゃん!!
可能性として、兄妹程度の存在なら出てくるかもしれない、と思ったから五割一致じゃダメだなと思って、基準をもう少し厳しくしていたのだ。
基準を厳しくすればするだけ、消費霊力が爆増する。
常時使うタイプの精霊術なのに、霊力を阿呆みたいに喰っては、いざ戦う時に霊力枯渇していた、なんて事態になりかねない。
だから六〜七割方にしておいたのに……
ぬかった。
イヤ、本来は本人以外にココまで情報が一致するのは、有り得ないんだよ。
まず親ですら、STR・SNP一致率は五〇%、兄妹なら二五~五〇%となる。
STRは遺伝子的な多様性が高く、親子鑑定や個人識別なんかに利用される。
SNPは進化研究や祖先解析、また遺伝的な疾患リスクの評価をするのに用いられる。
どちらも、DNA上の遺伝子マーカーで、遺伝子解析において、重要な役割を持っている。
本人確認をする上で、最も精度が高い見分け方とされているのだ。
その見分け方で、最大五割の適合率。
六割一致しなければならない時点で、どちらも除外されるじゃない。
だから、俺が確認している‘’この世に存在する・していた人物‘’を対象とするならば、起こり得ない事だった。
一卵性双生児やクローンの場合は、遺伝子情報が同じなので、コレらの情報は当然、一〇〇%一致する。
しかしそれでも、染色体構造は異なる。
DNAの折り畳まれ方、とでも言えば良いのかな。
DNAは螺旋構造になっているが、その構造が緩かったり、キツかったり形に差が生じる。
同一遺伝子体であっても、だ。
そしてその差によって生成されるタンパク質の量が変わる。
ソコから一卵性双生児でも、病気のなりやすさとか、外見的要素に差が生じたりするのだ。
そういう情報も判断基準に加えていた。
俺は俺以外とを比較する際、DNA以外にも別個体ならば、例え全く同じ遺伝子を持っていても差が生じる事を知っていた。
だから万が一にでも、あのクソ野郎がクローン体を隠れてコソコソ作っていて、なにかの間違いでこの世界で生活していたとしても、防護壁をすり抜ける事は無い。
そう、思っていたのだ。
ちゃんとクソ野郎がいかにクズかを知っているから、念には念を入れた対処をしていた。
その数値が、六〜七割方の情報の一致だったのだ。
改めて燼霊を見た時、俺との外見の差は、髪と目の色、あとは身長位だ。
声は意識すれば、かなり近く似せる事が出来る。
燼霊の態度からして、俺の事を嫌っているのは明白。
似ている部分を少しでも増やしたくて、ワザと違う声を出しているのかもしれない。
身長に関しては、この世界に来てから伸びた分がある。
それに同一遺伝子で似難いのが、身長とされる。
睡眠の量や質、また食生活や運動習慣のような、後天的な要素が多く影響を受けるからだ。
一、二cm程度の差なら、誤差と認識されてしまったかもしれない。
なにせ徹夜で猫背キープして実験をしていると、余裕でそれ位身長減るし。
目の色は人格が変わる度に、目印のように変化をしている。
最も大きな違いはココだろう。
精霊の皆も、生前に近い容姿をしているが、目の色だけはそれぞれの属性を象徴するかのような目の色をしていた。
燼霊も同じように、性質によって目の色が変わるのかもしれない。
それでも、瞳の中心に光る独特な色味は、確かに俺特有のものかもしれない。
ソコで判断されたら、虹彩の色なんて余り関係ないとか言われちゃうのかな。
髪色こそ、俺特有の、唯一無二の変な色に近いと言える。
沢山生み出された試験体のうち、俺の髪色に近い個体程「スキル」が強い事や、神々の名を冠するに値する「スキル」を使える傾向にあると言われていた。
まぁ、力が強い分、肉体が耐えられずに死ぬ確率がかなり高かったが。
この燼霊は、俺の髪色とは違うものの、七色の輝きを持っている。
「スキル」の使用時に放たれる光も七色である事を考えると、髪色の濃淡ではなく、この独特の色味が重要なのかもしれない。
なにせ俺が毛染めをしていても、その艶色だけは七色のままだったし。
ただ俺のクローン体ならば、使える「スキル」は「万物創造」だけのはず。
他の皆から奪った「スキル」を所持していなければ、適合率はうんと下がる。
「万物創造」で誤魔化せるか? と問われれば、否だ。
他の「スキル」が「創造」で生み出せるかの実験は、過去にやっている。
結論を述べるならば、不可能だった。
なので誤魔化しも、通用しない。
それっぽい事象・現象は起こせる。
だが劣化版というか、非効率というか。
例えば水を生み出すならば、「水のスキル」持ちの人間ならば、飲料水を生成する時、指定した容器を満たすと思い描けば瞬時にグラスを飲水で満たせる。
何なら色付き、味付きの水を生み出す事も可能だ。
だが「万物創造」の場合、水を思い浮かべるとH2Oを生み出す事になる。
飲料水というものは実は非常に複雑で、様々なミネラルが含まれているものなのだ。
科学的に考えて、水=H2Oだと定義してしまうと、超純水が出来上がってしまう。
当然、飲めない。
イヤ、正確に述べるならば飲めるが、マズイ。
余計な物質が一切入っていないからね。
水の美味しさを引き立てるカルシウムを含めたミネラルが入っていないと言うことだ。
金属アレルギー体質の人や、胃弱な人にはもってこいな水だけど、「万物創造」で「水」と同等の飲料水を作ろうとすると、ソコに鉛や亜鉛、ヒ素やクロムが何mg/L以下でなければならないとか、色々考えないといけない。
「水」のスキル持ちなら、一瞬で終わる事なのに。
「万物創造」は確かに便利なスキルだ。
しかし各分野のスペシャリストには、どうやったって敵わない。
「破壊」と「再生」に至っては、「万物創造」で再現する事は出来なかった。
「何でも壊せる道具」と「何でも治せる薬」すら創れない。
単にソレは、俺の想像力が貧困だからかもしれないが。
だが目の前の燼霊は違う。
精度こそ低いが、確実に「破壊」も「再生」も使っていた。
三人分の人格がこの身体に入っているのだ。
それぞれの「スキル」の元の持ち主――暁と風の精霊、もしくは基未や徹の感情の一部が入り込んでいるのか?
その仮定は、するだけムダだ。
前の人格が俺の一部だと名乗りを上げているし、最初の人格は俺と別人格を見間違えていた。
イヤ、それもおかしな話なのだが。
鏡越しに話でもしていたのだろうか。
そして今の人格は、自分が俺のクローンだと、認めている。
俺の切り離した人格が、それぞれ独立した燼霊となってこの世界に来てしまった事までは、良しとしよう。
決して良くは無いけど、ウソをつく理由がないのだから、ソレは事実なのだろう。
受け入れねばならない。
それと、この肉体は、どこから出てきた?
暁が顕現した時のように、外部から寄せ集めた素材から作られたのでは無いだろう。
どれだけ馴染んでも、器は容器でしかない。
水とグラスが混ざらないのと一緒。
素体に血は通わない。
血が出る時点で、コイツは燼霊とはまた、違う存在なのだ。
イヤな予感が、ヒシヒシとする。
闇の精霊がクソなのは知っていたが、性格や思考も、遺伝ってしてしまうものなのだろうか。
「お前等は、一体何者なんだ……?」
「――最初に「再生」――試験体三号が、名乗っていたではありませんか。
我々は、オリジナルであるアナタを人工的に創り出そうと、アナタが今際の際に遺した体液から暁が作り出した、実験体です」
闇の精霊の盲目的なまでの偏愛っぷりと、想い人への異常なまでの執着っぷりは、暁に遺伝してしまったらしい。
なんて迷惑な……




