表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/249

神さま、飛ばす。

 王宮は先代――カノンとアリアの両親が、精霊達から祝福と共に授かった、由緒ある格式高い建造物である。

 地下にある時の精霊(クロノス)から与えられた守護方陣も含め、国王を害する悪意ある者から守ってくれる。


 そしてその方陣は、国王の望みに応えてくれるように、国民を護り、領土を潤してくれる。

 その願いが真摯であればある程、霊力を注げば注いだ分だけ、方陣は祈りを形にしてくれる。


 昨今の不作は、その注がれた霊力が潤す勢いよりも、瘴気によって大地が蝕まれる速度を上回っているせいだ。

 なかなか努力が実にならないって、哀しいよね。


 よくもまぁ、アリアは徒労に終わると分かっているのに、長年方陣に霊力を注ぎ続けたものだ。

 結果が現れなければ、国民からは批判されるばかりだと言うのに。



 そんな一〇〇年以上続けている日課の霊力注入だが、今日の分はまだ、行われて居ない。

 とは言え、アリアは毎日のお勤めを、欠かす事無くこなして来た。


 襲撃が起こるとしたら、その方陣が効力が失われない限り、有り得ない。



 時の精霊(クロノス)はこの世界の精霊達の中で、最も神様に近い立場にあると言える。


 それぞれの属性精霊達も、どんなに微小な存在だとしても、人間よりも余程強い。

 低次元の存在は、高次元の存在に適うはずが無いのだ。



 そのトップに座する精霊の方陣を、誰に察知される事も無く破壊・無力化出来る存在なんて、時の精霊(クロノス)本人を除いて、他に居ない。


 例え燼霊だろうが、だ。



 特に燼霊は元々、この世界に干渉し辛い存在である。


 顕現する為の触媒とて、夢魔のように簡単には集められない。

 純度の高い霊玉や、霊力に満ちた肉体を、何十人、ヘタをしたら何百人分と集めて、ようやく顕現される。



 しかもその触媒が喚び出された燼霊の性質に適合しなければ、顕現出来るのは極々限られた、僅かな時間でしかないと言うのだから、コスパが悪いにも程がある。


 なので今後は燼霊召喚なんて、疲弊するだけ。

 割に合わない事はしないで頂きたいものだ。

 迷惑だし(本音)



 俺によく似た燼霊は、噂話がカノン達の耳に届いた時期や、俺が見た様子からして、顕現してから随分時間が経過している。


 つまり、用意された触媒が、あの燼霊の中身に適していると言う事。


 既に肉体が中身と馴染んでおり、地の精霊(テルモ)のように、肉体のON/OFFが任意で可能だと言う事が分かる。



 防護壁や守護方陣は、物理攻撃・精霊術による攻撃の両方を防ぐ。

 また悪意ある者を、退ける性質も持つ。


 内に秘めたる害意の程度によって、不快感を覚える程度か、動きにくくなる程度か。

 はたまた気絶するレベルになるかが変わる。



 国王という立場に謁見する為に登城する人間は、多かれ少なかれ、良くない感情を持っているものだ。


 しかもアリアの見た目は幼女だからね。

 舐めてかかるオッサンは多い。



 そう言う連中が毎度気絶していたら「あの城は呪われてる」なんて言われかねない。

 それならまだマシで「相手が気に食わないから国王は毒を盛っている」なんて醜聞が出たら大変だ。


 大抵の人間は「なんか反抗心を持った途端、胃が気持ち悪い……」とか「登城した途端、何となく頭が痛い……」程度の症状に留まる。



 昨日の襲撃犯達が、体調不良を気にする事なく、壁をよじ登れたのだ。

 ソコまで酷い症状が出ないのが、仇になってしまった。



 彼らはアリアに対する明確な殺意ではなく、任務遂行という目的が念頭にあった為に、気絶する事なく行動出来たのだろう。

 ソレを考えると、ちょっと設定をイジるべきかもしれない。



 ……そう。

 効果があるのは、あくまで人間にだけなのだ。


 俺が防護壁を強化した時、燼霊の存在自体知らなかった。

 元々の設定にも、精神体に対する規制は無かったし。



 なのであの燼霊が、手足となる精霊教の人間が居ないからと、直接動いて居たのならば、セキュリティなんて無いも同然。

 肉体がある状態で不具合が起きたのなら、精神体だけで動けば良い。



 精神体なら、慣れない人には迷路のように感じる通路も、複雑に入り組んでいる隠し通路も、関係無い。

 迷う事無くアリアの気配を探して、一直線に最短で移動出来る。



 クーデター慣れでもしているのか、単なる年の功か。

 カノンは愛しの妹が窮地に陥っているかも知れないと言うのに、やけに落ち着いている。



 夢魔との契約は、王都(ディルクルム)への‘’スファンクス‘’出店と交換条件で、捕らえた教会関係者の尋問をして貰う事。


 今はそれだけではちょっと報酬を貰い過ぎている、と言っていたので、更にオマケを付けて転移方陣の実験台にもなって貰っているが。



 危険とは無縁な、その上で自分達の趣味に走った実験を兼ねた、それはそれは楽しい時間を過ごせるハズだった。


 しかし今は、そんな悠長な事を言っていられない。


 尋問なんてしているヒマがあるなら、サッサと捕虜を避難させなければならない。



 ……あれ?

 この世界って、捕虜に対する人権ってどうなっているんだろ??


 もし捕虜に対して「疑われるような事をした時点で罪。具体的な罪状は無くても、囚われたのだから、問答無用で死罪か奴隷堕ちの二択となる」のかな。


 もしそうなら、監獄塔に収容されている人達は全員、放置される事になる。

 生かすべき人間の避難が、再優先事項になるからね。



 襲撃者があの燼霊じゃなかったら、かなり後々揉めるな。

 イヤ、今の王都(ディルクルム)のあの守りを破れるのなんて、燼霊位しか思い浮かばないが。



 カノンは夢魔に協力を求めても良いのなら、避難者の誘導をお願いしたいと相談していた。

 今朝方言っていた、一般市民を避難させる地下通路は、比較的安全だ。


 もし地下の避難所では安全を確保しきれないと言うのなら、避難所近くにカノンが設置した転移方陣を起動させれば、(オルトゥス)に移動出来るしね。

 その起動を、どうやってやろうか、という問題はついてまわるが。



 夢魔は接客慣れしているから人の扱いに長けているし、能力的に、興奮している人を宥める事も出来る。

 混乱に乗じて暴れる人が居ても、眠らせられる。


 確かに、避難誘導に適した人選だ。



 自分達の命最優先で、追加の報酬が貰えるなら、とイシュクは二つ返事で了承をしたが、当然、難色を示す者も居る。

 「尋問する相手が居なければ、エロ漫画(聖典)に載っていたアレコレが試せないじゃないですか」の言葉に、一応納得のポーズは見せてくれたが。



 あぁ、という事は、監獄塔の収容者も避難させるんだ。

 手枷と猿ぐつわをした状態になるし、優先順位は最下位で、避難させるのは一番最後になるそうだが。


 避難は一般人が最優先

 次点で王城務めの貴族達。

 国王・宰相と続いて、最後が犯罪者になる。



 国王達の優先順位が、意外と低いな。


 そうは思ったが、国王(アリア)も宰相閣下殿も、なんだかんだ言って英雄の血族だ。

 自分の身は自分で守れるだけの、実力がある。



 何より、トップは誰でも務められるが、国は国民が居なければ成り立たない。

 それに大抵の争い事は、日々を慎ましやかに生きている国民とは、直接関係無い所で勃発し、巻き込まれる立場にある。


 そう考えているから、最も優先させるのは国民になるそうだ。


 その国民の血税で暮らしている貴族も、人の上に立つ者としての役目を果たすべく、国民を避難させる仕事をこなした後に避難する。



 その貴族を守る騎士の仕事の内容に、国王を守る事も入っていると思うんだけどね。

 避難訓練をしているなら、その予行練習を通して自分の動きを確認する機会が与えられる。

 いざと言う時は、国王よりも自分の身を優先させる行動に移せるだろう。


 しかし、普段は国王や民を守る盾となり、剣となる事を誉としている人達だ。

 咄嗟の事となれば、自分達だけ逃げるなんて出来ないだろうな。


 イヤ、我が身可愛さに「体裁なんて知ったこっちゃねぇ!」と、我先に逃げ出すパターンもあるか?



 施設では訓練という名の洗脳が行われて居たから、俺が‘’地球再生計画‘’を実行した時、礼儀正しく順番に、それぞれの階級に割り振られた避難先に逃げていたと思うのだが。

 途中から監視カメラを見ている余裕なんて無くなったから、多分、としか言えないけれど。



 転移方陣を使って王宮に移動した後、カノンは事実確認をしがてら、夢魔に避難誘導をして貰うために、各ポイントへ案内する。


 俺は直接アリアの所へ飛べるし、王宮内部の作りに明るくない。

 アリアの保護をしつつ、彼女の指示に従う形になる。



 ただの防護壁の不具合なら、笑い話に出来るのだけどね。


 常に最悪の事を想定して動いておかなければ、足元を掬われる。

 俺が想像出来る最低最悪なんて、たかが知れてるケドね。



 未だに手紙(シルフィード)による連絡が付かない事を考えると、カノンよりも霊力か、それに相当する、例えば魔力のような力が強い存在からの妨害を受けていると考えておくべきだろう。


 俺は手紙(シルフィード)を送れた。

 つまりカノン以上、俺未満の力の強さって事だ。



 燼霊は強さが測れないのが、厄介だよね。


 魔物なんかはどの程度強いのか、何が弱点なのかを鑑定眼で視れる。

 そのお陰で、初見の相手でも苦なく倒せるし、何なら倒した後に剥ぎ取る素材の状態までも気遣う事が出来る。



 魔蜈蚣(ミレペダ)みたいな虫系の魔物は通常とは異なる場所に魔石がある。

 その事を知らなければ、毒液を吐いてくる厄介な頭部をサッサと潰してしまおうと考えてしまうものだ。


 知っていたとしても、どっちが尻なのか頭なのか判断出来なくて、手こずって痛手を被る位なら両方潰してしまえ、と気前良く頭を破壊して、魔石を砕いてしまうのがオチだろう。


 鑑定眼のお陰で、弱点だって、どんな攻撃を仕掛けてくるのかだって、ひと目見れば分かる。


 その戦い方に慣れてしまったせいで、燼霊のように、姿すら視認出来ない存在を相手にするのが、正直シンドい。



 冒険者達の普通の視界ってこうなんだよな、と思うと、そりゃ死亡率も負傷率も高くて当然だと納得する。


 よくもまぁ、あんなデカい相手に生身で立ち向かおうなんて思えるな。


 デカいって、それだけで本来は圧倒的な強者になるんだぞ。


 大きくて重量があれば、相手がただ手を振っただけの動作だとしても、コッチは丸太でぶん殴られたような衝撃が加わるのだもの。

 ソレだけで致命傷になり得る。


 我ながら今更過ぎるが……この世界に転移した混乱の中で、こういうものだと教えられたから「そういうものなのか」とすんなり受け入れてしまったけれど、トンデモねぇ事だよな?


 止むを得ない場合を除き、ヒグマやグリズリーと接近戦を繰り広げる人間は、地球には居ないだろう。



 それよりも何回りもデカい、毒を持っていたりワケの分からん術攻撃をして来る魔物と、地球人と大差ない大きさの人間が戦って、人間側が白星を掴める、この世界の住民が異常なのだ。



 そんな異常な世界の中でも異常な存在である燼霊は、世の理不尽を具現化させたような存在だろう。

 精霊術は封じられるし、ジャミングされて脳内会話も出来なくなるし。


 規格外の力に翻弄されて、まともに戦える気がしない。


 せめて、あの燼霊が()()()と比べて強いのか、弱いのか。

 ソレだけでも分かれば、対抗策が出てくるかもしれないのに。



「段取りは済んだ?」


「ああ。

 夢魔共の案内が終わったら、すぐに合流する。


 それまで、アリア達を頼む」


「頼まれました。


 イシュク達は、コレ持って行って」


「こちらは……?」


「割るとココに戻って来れる道具。

 危険だと思ったら、即使って。


 使わなかったら回収するし、無くさないでよ」


「一体、いつ作ったんですか……?」


「今さっき創った」


 一から作る時間は流石に無かった。

 なのでカノンが王都(ディルクルム)から戻って来る時に使った物と、同じ仕様で作ってあった俺の分を「スキル」で複製した。


 精霊術では再現出来ない「スキル」は、なるべく人前で使いたくないが、緊急事態だし仕方ない。


 何者? って聞かれた時に、「スキル」の説明をするのは、大変だからね。

 だからと言って「御伽噺に出てくる魔王です」だなんて、言えるハズもない。


 ツッコミを入れられる前に、サッサと移動をしてしまおう。



 何か聞きたそうな顔をしているイシュクを、さっき転移したリワトが立っていた位置まで、下がるように促す。

 他の夢魔も同様だ。

 それと、カノンも。



 カノンは時の精霊(クロノス)と契約をしているから、一緒に転移方陣で移動すれば、万が一の事故も防げるだろう。


 実験もついでにしたい所だが、相手が燼霊かもしれないのだ。

 そんなノンビリと、一人一人送り付けてる時間はない。


 それに既に転移方陣の出口側が敵に抑えられていたら、バラバラに移動したら、危ないじゃない。


 接近戦は得意だけれど、争い事が苦手だと言っているのだ。

 コチラが無理を通して貰い、助力を願い出ている側だし。

 なるべく、戦闘は避けてやりたい。



「んじゃ、また後で」


 先程とは違い、一気に叩きつけるようなイメージで霊力を方陣に注ぐ。

 グラスに水差しからチョロチョロ水を注いでいたのが実験の時なら、今は大型のタライをひっくり返したような感じだ。


 溢れ出るのは気にしない。

 時間をかけずに、グラスを満杯にする事だけを考えた。



 俺の言葉に返事をする間もなく、方陣の中に居た二十余名は瞬時に居なくなる。

 念の為気配を探るが、ちゃんと王都(ディルクルム)に着いたようだ。


 俺も、移動しなきゃな。

 その前に、二件。

 手紙(シルフィード)だけ飛ばしておこう。


 念の為、ね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ