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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、詰められる。

 世界中で魔物がかつてない程に活性化している。

 見た事のない種類の魔物や、精霊術のような力を振るう魔物まで出てきた。


 小さな村が幾つも滅び、人類は更に生活圏を狭める事となった。



 そんなタイミングで、王都(ディルクルム)に何年も立ち入らなかった賢者が、頻繁に出入りするようになった。


 異常気象が世界各地で観測され、特に火の精霊の動きが極端に減り、今年の厳冬では多くの死者が出ると見込まれている。

 それは王都(ディルクルム)も例外ではない。



 そんな中、いつの間にか整備された‘’喰魔の森‘’の、更にその奥。


 死地とされていた場所には、見た事の無い技術で建てられた、立派と言う言葉では到底片付けられない、大きな街が創られていた。


 不可思議な技術は建造物におさまらず、防衛面にも及ぶ。

 そびえ立つ背の高い塔からは、一瞬で数十の魔物を肉片に変えられる光の帯が伸びると聞く。


 冬でも作物が採れ、水は潤沢。

 無償で食事が振る舞われる大きな家屋では、精霊術師の量産が行われているらしい。



 王都(ディルクルム)から連れ去られた幾人もの女性が、その街で軟禁されているそうだ。

 その事実を知らない、何の前触れもなく、突如妻や娘を失った者達の悲痛な叫びは、相当なものだと聞き及ぶ。



 資金源不明の‘’冒険者ギルド‘’なる組織は、現在はまだ小規模である。

 しかし、素行の悪さ故に今迄どこの街にも所属せず、どの有権者にも子飼いにされる事の無かった、だが確かな腕を持つ者達が、(ディヴィティアエ)のアルによって集められている。


 その戦力は、既に軽く見積っても王国騎士団の近衛師団に相当している。

 なのにも関わらず、遠い別大陸からは、まだまだ相当な数の冒険者が集まる気配がある。

 近い将来には確実に、軍事力は王都のソレを上回る。



 世界の終焉を運ぶ者・毀魔馬(ワルタルス)は、数件の目撃例が報告された後、賢者を小麦(トリティム)街道の彼方から望んだ噂を最後に消失した。

 毀魔馬(ワルタルス)に住処を追われ、興奮状態の魔物の集団が押し寄せる現象は、地慣らしの痕跡こそ認められたものの、此度は観測されなかった。



 精霊教は秘密裏にニブルヘイムへの扉を開けようとしていたのだろう。

 その儀式を何年も掛けて画策し、フローリア平野に、瘴気の純度が高い魔石が多く運び込まれていた。


 それなのにも関わらず、そろそろかと思い足を向けてみれば、その残骸すら残らず、いつの間にか全てが浄化されていた。



 不帰のパゴベル氷山に隠されていた別世界の遺跡も、気が付けば封印を解除されていた。

 閉じ込められていた凶悪な魔物は、軒並み排除されていた。


 当然のように、内部にあるとされていた財宝の姿も無かった。



 年に一度のペースなら、それらの大事が起きるのも、まだ理解は出来る。


 それでも多いとは思えども、世界的に何も特筆するような事が起こらない年が、何年も続く平和な時があるのだ。

 その逆があっても、不思議では無い。


 だが、この約半年の出来事は、余りにも多過ぎる。



 極めつけが、今回の国王暗殺未遂だ。


 今年ちょうど国王の就任三〇〇年を迎える記念すべき年に、水面下で塞き止められた、精霊教による蛮行。



 恐らくフローリア平原の企みが失敗に終わったが故に、功を焦ったのだろう。

 ソレは、余りにもお粗末な結果に終わった。


 馬車に乗って居たのが替え玉だとすら気付けず、誰も逃走すら許されずに、全員が捕縛された。

 ダンジョンに居たはずの、別部隊も含めた、漏れなく全員が、である。



 自分達夢魔が関わらずとも――それこそ、本物の国王が馬車に乗っていたとしても、何の問題も無かっただろう。

 その場合は馬車に弓の一本も届かない所か、矢風が立つ間も与えられなかったに違いない。


 そう思わせるだけの、圧倒的な強さがソコにはあった。



 その場にいたのは、かの賢者ではない。


 今まで一切、噂すら立たなかったのが不思議に思う程に、飛び抜けた美貌と、他の追随を許さない実力を持つ、様々な意味で目を離せなくなる、一人の少年の姿が、そこにはあった。



 話してみれば、貴族のようにとても流暢な丁寧語を操り、心を開けば気さくで、整った顔からは想像も付かないような悪態が飛び出してくる、掴み所のない人物だった。


 知識も豊富で、物怖じをしない。

 世間を斜に構えて見る、この年齢特有の反抗的な態度もない。


 なんとも不思議な子供だ。



 雰囲気を見ても、賢者の稚児でも、弟子でもない。

 保護者と被保護者の関係とも、違うように思える。


 内に秘めた実力に至っては、対等か、もしかしたら賢者を超える次元にいる。



 だからこそ、問いたかった。

 何をしようとしているのかを。



 自分達夢魔は、死ぬ事がない。



 生命エネルギーは性行為によって得た方がより好ましいと言うだけで、それ以外の方法でも摂取出来る。


 食事にしても移動にしても、手段が多く便利だから、ヒトの姿を象っているだけだ。

 元々実体の無い生物なので、木と同化しようが、水と一体化しようが、問題は無い。


 しかし無気力に、ただ世間の波を漂って居るだけではつまらない。

 死にはしないが、生きているとも言えない状態になってしまう恐れもある。



 過去、物言わぬ生命体の姿となり、怠惰に過ごす日々によって自己を無くし、夢魔としての誇りを忘れた者が居た例もある。


 先に例えた樹木と一体化した夢魔は、そのまま自然に溶けて意識を亡くし、別の存在に成り果てた。

 そうなる事が、稀によくある。



 アルボルの森と呼ばれる、少々癖のある木々の多い森の為、行く際には気を付けるようにと注意された。



 だから夢魔はヒトの姿を好んで使う。

 しかしヒトは集団で生活する生き物で、同調圧力が生まれやすい気質を持っている。


 そのため世間との摩擦はなるべく少なくする。

 死なない程度に美味しく生命エネルギーを摂取出来て、面白おかしく生活出来れば、それで満足だ。


 だから場合によっては、全部の約束を反故にしてでも、俺とカノンから逃げる所存である。



 欲を出して二号店の話を持ち出してしまったが、不和を招いて、また殺されかけたら堪らない。

 散り散りになった同族には申し訳無いが、頓挫した時には多目に見て貰おう。



 付き合わせる事になる、(オルトゥス)で共に過ごしている仲間達には負担を強いる事になるが、群れの長として皆を護る義務が、自分にはある。


 砕けた祖国に二度と戻れないとは重々承知しているが、せめて、少しでも永く、かつて夢魔の世界が別にあったのだと後世に語り継ぐ役目位は全うしたい。



 そう、酷く真面目な顔をして、言いたい事は全て語り終えたと言わんばかりに、イシュクは口を閉ざした。


 ……正直、驚く事が多過ぎて、なんて答えれば良いのかが分からない。



 だって今の言い方だとさ、思惑なんてなーんにもなくて、ただ好きなように思いつくまま行動してたら、こうなってました、なんて言ったって、信じてくれないでしょ。



 何だよ、終焉を運ぶ者って。


 毀魔馬(ワルタルス)なんて、ただのデッカイ馬だぞ。

 心の厨二病が喜ぶ二つ名なんて、付けるんじゃないよ!


 そんな大層な存在なのに、カノンってば滅多に採集出来ないからと言って、ウッキウキで素材引っペがして懐にしまい込んだの?

 俺と一緒にその場で馬肉堪能してたの??


 バカじゃ無いだろうか。

 一番の大バカ者は俺だけどさ。



 (オルトゥス)の周辺が、そんな危険地帯だなんて当時の俺は知らなかった。

 だってカノンの家の周りの方が、余程凶悪な魔物が多かったし。



 フローリア平原って地名は知らないが、精霊教云々の話なら、アレだろ?

 パルム村近くの、燼霊が出てきて追い払ったヤツ。


 寒い地域の遺跡と言えば、氷の精霊(スティーリア)が居る所だよな。

 確かに封印を解いたし、魔物も倒した。



 ……何だよ。

 世間様から見たら、俺ってばいつの間にか無自覚に、色々やらかしてんのか。


 俺って天然ちゃんだったの!?

 「あれれぇ〜? ボクってば、また何かやっちゃいましたぁ??」系の人間だったの!!?


 知らんかったわ〜……

 教えてよ、せめてさ。


 同行していた保護者組。

 特にカノンだよ。


 俺がこの世界の常識に疎い事は、イヤでも分かっているだろうに。

 何故言ってくれないのか。


 言っても聞かないヤツだと思われているのだろうか

 その通りだけど。


 イヤ、でもさ!

 流石に少しは自粛しようと、思う事があるかもしれないじゃん!?



 カノンが王都(ディルクルム)に頻繁に出入りするようになったのも、俺が関わっているし……

 最近のカノンの奇行とされている話は漏れなく、俺のせいなんだよね。



 無自覚にアレコレとやらかしてしまうなら、俺ってもしかして、田舎で隠居生活でもしているべきなのだろうか。


 カノンの家の近くに一戸好みの家を建てて、薬草や野菜を育てたりしながら、ノンビリと過ごす。

 それも悪くは無いだろう。


 やらなければならない事や、やりたい事をやり尽くした際には、そんな生活をしても良い。

 むしろ片田舎での牧歌的な暮らしとか、憧れる。



 だが俺はまだまだ、世界を見て回りたい。

 世界の半分すら、まだ見ていないんだよ。


 それどころか、大陸を超えてすらいない。


 旅に飽きが来る程、この世界を堪能していない。

 全然足りない。



 俺の欲求的な話はモチロン、火の精霊(イグニス)起こしに行かなければならないし。

 他にも地球人の生き残りと会ったり、この世界に転移して来ている施設にも用がある。


 大人しくしているのは、ちょっとムリそうなんだよね〜。



 面白おかしく生きたいと、俺だって思っているんだもの。


 夢魔の為に俺がガマンするのはイヤだな。

 妥協点を探すならまだしも。



 そもそも、根本的な部分を勘違いしているから、ソコを正す所から始めないとだよね。


「イシュク達はさ、カノンが何をしようとしてると思ってるの?」


「……それを口にして、不敬にはなりませんか?」


「内容によっては、カノンに直接言ったら、そうなる可能性位はあるだろうけど、今相手にしているのは俺だよ?

 単なる一般市民」


「…………ジューダス様は賢者様のご子息なのでは、と我々の間では結論付けられていたのですが」


 お稚児みたいな不名誉なものから、当たらずとも遠からずな弟子と来て、今度は子供かよ。

 髪色こそ近いものになっているけど、似てないでしょうが。


 俺としては、年上だろうが親友二人の子供だ。

 父親の方なんて同い歳だった事もあり、兄弟同然に育って来た。

 だから親戚や近所のオジサン的なポジションの心持ちでいたのだけれど。


 なのに、まさかの子供扱いか。



 ……つまり、過去にカノンにそういう相手が居たという事か!?


 なかなかに夢魔は情報収集力が高いようだ。

 お相手が居たからこそ、そういう結論に結び付けられたのだろう。


 何せカノンは研究バカだ。

 許されれば何日でも部屋にこもっているような、オタク的資質がある彼だもの。

 色恋沙汰を想起させる要素が無ければ、そんな話にはならない。


 是非とも時間がある時に聞き出さなければ!



 カノンは長期的に同行者を伴った旅をする事が、殆ど無かった。

 だけど息子ならば、鍛える意味でも護る意味でも、共に行動をする理由になる。


 誰もが舌を巻くような博識さも、平民とは掛け離れた、隠しきれない端々から感じる優美な振る舞いも、賢者による英才教育の賜物なら、理解出来る。


 また見た目の年齢と実年齢が噛み合って居ないのならば、桁違いの強さにも納得がいく。



 そう思っての‘’賢者の息子‘’発言だそうだ。


 残念でした。

 その予想は見当違いにも程がある。



 国王と同等の力を持つ‘’王の権能‘’が未開の地に新たな大規模な街を造り、軍事力を高め、幾度となく国王と話し合いの場を設けている事。


 この事だけを見れば、謀反の可能性もあった。


 しかし二人がシスコン・ブラコンの関係である事は、周知の事実。

 その可能性は限りなくゼロに近い。



 では、何が起ころうとしているのか。



 精霊教――この際はその後ろについている燼霊――の思惑を、ことごとく阻止している事を鑑みるに、精霊教との表立った争いが、遂に行われるのではないか。


 その防衛ラインを後退させられる余地を作る為に、(オルトゥス)を造ったのではないか。


 現状では後退が確実だと、自分達の陣営の不利を認識しているから、王都(ディルクルム)の一等地を易々と譲り渡そうとしているのではないか。


 戦火に巻き込まれる可能性があるのなら、甘言に騙されてはいけない。

 同族を避難させる決断を、長として早く下さねば。



 なんと、イシュクは戦争の準備をしているのだと思っているらしい。



「はっきりと言って下さい。

 夢魔の力が必要と言うのであれば、仲間を逃がすことを条件にさせて頂きますが、私がその一助となりましょう。


 その日は、いつ頃を予定しているのですか?


 雪解けの、前ですか?

 後ですか?」


 悲壮さを漂わせる事なく、覚悟した漢の目を向けてくるイシュクの姿は、紛れもなく一族の長としての風格をまとっていた。


 その高説に、スナンは酷く感激したようだ。

 さっきまでエロ本片手に適当に流し聞きしていたのが嘘のように、目を輝かせながらイシュクを見詰めていた。



 ……だけど、ゴメン。


「覚悟している所、非っ常〜に申し訳ないんだけどさ、アリアとはモチロン、精霊教とも戦争する気、微塵もないよ?


 イシュクが挙げた話は……勘違いさせてゴメンなんだけど、全部、俺が原因。

 説明するわ」


 とてもじゃないが信じられない。

 そう目が訴えていたので、隠さなきゃいけない事は隠して、大まかにこの半年の事を話す事になった。


 この間に、馬車が出発準備を終えていないと良いな。

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