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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、地雷を踏む。

 アルベルトに送った手紙(シルフィード)を聞いた騎士達だろう。

 ガヤガヤと、廊下から賑やかな声が聞こえる。


 朝早いというのに、元気なことだ。

 しかも仮眠しかとれていないと思うんだよね。


 何処から湧き出てくるんだ、その活力は。



 目立つのも、騒々しいのもキライだ。

 アルベルトひとりで来るなら、もしくはごくごく少人数だったのならば、挨拶位はしようと思って居た。

 しかしこの賑やかさからして、かなりの大人数だ。


 火を止めて、転移でカノンの別宅へと戻る事にした。


 丁度そのタイミングで、半鐘の高い音がカーン……と響いた。



 王都(ディルクルム)には使用用途に合わせた釣鐘が幾つかある。


 夏なら朝の四時、冬なら五時を報せる一の鐘の場合は一回。

 凡そ七時を伝える二の鐘なら二連打。


 そうやってメインの時間を報せる大きな梵鐘が、王都(ディルクルム)の内周を走る城郭にそびえ立つ鐘塔の最上階にドドン! と鎮座している。



 その梵鐘は、風の精霊術の紋を刻んであるので、霊力を込めて打てば、かなり遠くまでその音を響かせる。

 その低い鐘の音は、王都(ディルクルム)を囲む壁を越えて、広い草原まで鳴り響くとされている。


 鐘が聞こえる範囲の村で暮らしている人達は、太陽の位置とその音を頼りに、一日を始め食事をとり、仕事をする。

 休憩時間なんかの目安にもなっているみたいだね。


 遠くから王都(ディルクルム)を訪ねてくる人なんかは、森の中で迷っても、その音を頼りに街道へと戻る事が出来るのだとか。



 結構重要な任務な上、霊力が無ければ扱えない道具なので、撞木(しゅもく)番と言う名称の専属鐘撞(かねつき)人がいる。



 その梵鐘が鳴らされる時間と時間の間。

 一時間毎に鳴らされるのが、高い音を出す、やや小ぶりの半鐘である。


 コチラを鳴らすのは、撞木番候補の人だ。



 意外とコツがいるそうで、失敗が許されない梵鐘を鳴らす前に半鐘で練習を重ねる。

 時期撞木番の候補者が居ない場合は、撞木番が鳴らす事になる。


 一人でやるのは、ちょっと大変だね。



 鐘楼は火の見櫓としても活躍している。


 警告用の小さな喚鐘(かんしょう)は、音を鳴らす間隔と鐘を叩く場所で意味が変化する。


 何処で何が起こったのか、音の間隔と高さの違いで王都(ディルクルム)の何処で物盗りや火事が起きたのか。

 はたまた魔物の大群が、どの方角から向かってきているかが分かる。


 モールス信号みたいたものかな。



 それら全てが一斉に鳴らされた時は、緊急事態発生の合図だ。

 例外なく全ての住民は自宅、及び手近な家屋に入り鍵を閉め、警鐘が鳴っている間は決して外に出てはいけない。

 例外があるとすれば、兵士が避難の指示をしに来た場合だ。


 衛兵の誘導に従い、避難場所へ速やかな移動を命じられる。



 そんな特殊な状況になったのは、過去に一度きりだそうだけどね。


 多くの燼霊がコチラの世界に侵略に来た、その約三〇〇年前の一回限りだそうだ。



「あの時は隠し通路に魔蜘蛛(アラネア)が巣を張っていてな。

 数多くの民間人が犠牲になった」


「あら……王族用通路は定期的に点検してますが、城下町に続く通路はしていませんね。

 しておくべきでしょうか」


「こいつが新しく張った結界は半球ではなく、完全な球体だ。

 魔物は消滅している」


「魔物は居なくても、視界の妨げになったら危険です。

 地下は湿度が溜まりますし、苔で滑ったり、カビで肺を病むような事があったら事ですもの。


 ……撞木番候補の術師の仕事にしようかしら」


 よくもまぁ、三〇〇年も前の事を覚えているよな。


 アリアはその時産まれて居なかったのか、前線に立っていなかったのか。

 カノンが話す燼霊戦の思い出を、俺と一緒に聞く側に回っている。



 今後精霊教とぶつかるのなら、あの俺と似ている燼霊との戦いは避けられない。

 ソレは分かる。


 過去の歴史から対策を講じようというのも、とても大事だ。



 だけどさ、御飯の時位、仕事の話から離れようよ。

 兄妹揃ってワーカホリックだな。


 味わいはしているようで、好みの物を口に含んだ時は、喋る頻度が減るし、咀嚼回数が増える。

 ちゃんと美味しく頂いてくれているなら良いけれど、コレが生命維持の為に、ただ栄養を摂るだけの行為になっていたら、ちゃぶ台をひっくり返してやる所だったよ。


 作った人に対して、失礼が過ぎる。



「その地下通路ってさ、(オルトゥス)に繋げられないの?」


 三〇〇年前と比べたら、王都(ディルクルム)の城下町は大きくなったし、住民も増えた。


 防空壕のような設備が地下にあるが、何日も陽に当たらない、しかもいつまでソコに留まらなければならないのか、その目安すらも分からない。

 そんな場所に押し込められていたら、いくら安全確保の為と言われても、過度のストレスから気分を悪くする人は出てくる。



 距離こそあるが、(オルトゥス)へ直通の避難通路を用意しておけば、安全圏へと逃げる事が出来る。

 地上を通らなくて良い分、魔物に襲われる心配は不要。


 避難場所として、悪くないと思う。



 今の(オルトゥス)王都(ディルクルム)で暮らす人達全員を保護するのは、ちょっと広さ的に厳しいが。


 住民になると言うのならまだしも、一時的なものでしょ。


 仮設住宅程立派な物を創ると、その設備に味をしめて王都(ディルクルム)に帰りたくないと、駄々をこねる人は必ず出てくる。

 何せ一時滞在を目的とした冒険者の多くが、一部屋を小さく設定した、一番安い宿屋の利用だけで(オルトゥス)に根っこを生やしちゃってる位だし。



 もし実行するのなら、(オルトゥス)の住民用の物と、王都(ディルクルム)からの避難者用とで、体育館的な施設が複数個必要だな。


 そうなると納税分で持って行かれる量も増えるが、穀類の備蓄も増やしたいし、(オルトゥス)の面積も広げたい。

 許可が居るなら、今アリアに直接貰って良いものだろうか。



「守護方陣の形が変わってしまわないかしら?」


「精霊様方の領域だからな。

 判断しかねる」


 どうやら王都(ディルクルム)で王が守っている、時の精霊(クロノス)から授けられた方陣と言うのは、思っていた以上に大きい代物のようだ。


 王宮の奥深くに霊力を注ぐ方陣がある。


 しかもほぼ毎日霊力を込めなければならない。

 そう言われた時点で気付けば良かった。



 カノン程では無いが、アリアも一般的に見れば桁違いに霊力が多い。

 そのアリアがほぼ毎日霊力を注がなければ維持出来ないような方陣、となれば規模は王都(ディルクルム)全域のみならず、世界レベルに展開されている物かもしれない。


 (オルトゥス)の護りと雨避けの方陣で、一日に必要な霊力が大魔熊(ペンマウルス)の霊玉一個分。

 ソレは俺の霊力を一億とした時に、約二千の値になる。



 カノンは百十万無い位。

 アリアは百万無い位だし、俺と旅をする前のカノンと大体同じだ。



 体内の霊力を全て使い切ると死ぬ。


 その前に防衛本能により、その前に目眩や倦怠感、意識喪失によって身体が強制停止を行うが。


 体感として、半分を切るとそういう症状が現れるかな。

 一気に失うと、それよりも早く気絶するが。

 一度皆の肉体を付与術の練習中に作った時にしでかした。



 ゆっくり少しずつ消費していくなら、今の俺なら七割使い切るまで意識を保てる。

 消費する事に身体が慣れていくんだろうな。


 アリアなんかはカノンが王座を渡してからコッチ、一〇〇年単位でずっと霊力を注ぎ続けて居るのだ。

 ヘタをすれば、九割消耗しても、ケロッとしているかもしれない。



 そう仮定したとするのならば。

 (オルトゥス)の方陣の、約四〇〇倍の霊力を消耗する守護方陣、か……

 しかもソレって、カノンが自分の人脈と知識を総動員して、何とか少しでも消費量を減らしてようやく、これだけの消耗で済んでるんでしょ。


 とんでもねぇな。



「その方陣、俺も見て良い?

 もしかしたら、改善策とか、どういう風に弄れば不具合が出ないかとか分かるかも」


「いや、……」


「それは……」


 二人は互いに顔を合わせて、言葉を濁して沈黙する。



 やはり国家機密だろうし、部外者の俺には見せられないか。


 何せ俺、この世界だと魔王扱いされてるワケだし。

 中枢機関を晒すのはダメだよな。



 キチンと納得していたのだが、しょんもりしているように見えたのだろうか。

 慌ててアリアがフォローの言葉をかけてきた。


「あの、違うのですよ?

 見せたくないとかではなく、規模が大き過ぎて視界に捉えられない物なのです。

 地下に張り巡らせてあるものですし……」


「避難通路そのものが方陣となっているのだ。

 しかも、五段……だったか?」


「七段ではありませんか?」


「……まぁ、幾重にも重なった、立体的な方陣なのだ。

 (オルトゥス)の守護方陣でもやっただろう?

 雨避け、物理結界、霊力結界、魔力結界に分けて重ねた方が効果が増す上に、消費霊力も幾分か減ったのを、覚えていないか?」


「あぁ〜、あの立体的な方陣って、カノンオリジナルじゃ無かったのか」


「模倣は別に、悪ではないだろう」


 あからさまにムッとした顔で、カノンは箸を止めた。


 当然方陣には独創性に溢れて居なければならない、なんて決まりは無い。

 学問なのだから、むしろヘタに弄り回してしまったら、先人が築き上げて来た証明の歴史を瓦解させる事になってしまう。


 モチロン長年正しいとされていた事が間違っていたのなら、ぶっ壊す勇気を持つ事も大事だ。

 しかしよく理解しないままイチャモンだけを付けたがるようなヤツも、稀にいる。


 俺はそんな失礼な輩ではない。


 何より方陣は、精霊に敬意を払ったお願い文を書き込む物だ。

 ある程度の様式があるのは、手紙と同じである。

 定型文は、模倣やパクリではない。


 最低限倣うべきマナーだ。


 しかしすぐにケンカを売っていると思われたのは、‘’賢者‘’たる者の矜恃として、腑甲斐無いと思っている部分を刺激してしまったのだろうか。

 もっと言葉を選ぶべきだったな。


 カノンにとって、デリケートな話だったか。

 失敗したな。

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