神さま、想う。
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前日譚?の『もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する』(https://ncode.syosetu.com/n9459jj/)がランクインしたそうです。
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例え大きく成長したとしても、アイツらなら我が子達の事をとても猫可愛がりしそうだ。
それを思うと、カメラが欲しくなるな。
もし息子達の前から消えたのが、自分達の死を察知したからだったとしてもさ、ソレは単なる思い違いだったとか、無いのかな。
実は失踪した手前気恥ずかしくて、戻って来られないだけだったとかさ。
この世界の何処かでまだ生きているんだとか、そういう事だった時の為に、撮っておきたいじゃない。
そうじゃなくても、空に向かって報告すれば、魂が輪廻に還る、この世界だ。
報告すれば、二人に届くんじゃないかと、そんな絵空事を思い描いてしまう。
兄妹仲睦まじく、ベッドで健やかに寝ている顔を見ると、遺された生者の為だろうが、墓のひとつもないのは、やはり少々悲しく感じる。
施設には無かったものだよな。
沢山の人を見送って来たけれど、その必要性を感じる事は無かった。
なのに、今。
あれば良かったのにと酷く思う。
施設にあったのは共同墓地……イヤ、それよりも懺悔室の方が近いか。
場所が無いからと、公にはされていないものの、遺体は全部、施設の外にポイだったからね。
墓はなかった。
人もモノも、死ねば個人の所有物ではなくなる為、全て施設に返附する決まりがある。
しかしその鑑査をするのは、心がある人だから。
余程の貴重品でなければ、お目こぼししてくれた。
それでも、バレたら手痛い処分を受けたが。
なので基本的には故人を偲びたい場合、回収されなくても大丈夫そうな、髪のひと房やボタンのような、資源になりそうにないものを譲り受けて、ソレを個人で管理していた。
だけどソレは、処分を受けなければならないレベルで、法に抵触する行為だ。
貴重な資源は、たかだか特定の個人の慰み物にするために、独占して良い物では無い。
リユース出来る物は、率先して次の持ち主の元で有効的に利用しなければ、とてもじゃないが施設の運営は回らなかったからね。
年々、遺品への取り締まりは厳しくなっていた。
強い「スキル」持ちが居ても、ゼロから何かを作り出す事は、酷く難しかった。
だから、俺の「創造」スキル持ちを大量に生産出来ないか、躍起になっていたのだろう。
地球再生計画の成功率を上げたい部分も確かにあっただろうが、一部の上層部は「そんな夢物語」と斜に構えて居る人が少なからずいた。
そりゃそうだよね。
「地球はもうダメだ〜」ってなって、「じゃあ、もうどうにもならないし、地球は捨てて次の星に逃げようか」と地球の外におサラバする事を受け入れられなかった、もしくはその方舟に同乗させて貰えなかった人間の子孫だもの。
思考のぶっ飛び具合で言えば、呼吸さえままならない宇宙空間へ飛び出した人達よりも、更に現実離れしていると言える。
宇宙に住処を造る計画は、何十年と時間を掛けてら検証と実験が繰り返し行われてきた事だからね。
信用度が違うさ。
対する地球再生計画は、ぶっつけ本番。
一回限りの大勝負だ。
そりゃ不便はあれども、不自由さはさほど感じ無い、安定した生活を自分達が生きている間だけでも続けば良いや、と考えるのは、致し方の無い事だろう。
だから有効的に利用するべく、資源は正しく回収されなければならなかった。
だが故人に対して思い入れが強過ぎて、立ち直れない人も中には居る。
氷の精霊がそうだった。
旦那である地の精霊が死んだ後は、仕事も出来ない、食事もろくに取れない。
不眠も祟って神経過敏になって、周囲の人間にまで害を及ぼす。
鬱と解離性障害を併存させる状態にまで陥っていた。
その為、気持ちに区切りを付けるために、慰霊室という名の故人を偲ぶ為の部屋を利用していた。
ソコは医療棟の中にある、精神疾患持ちの保護入院施設が実態だが。
大抵の人間の場合、ソコに入る前に生産性と社会貢献度が落ちた事を理由に処分される。
なのでそんな場所がある事自体、知らずに生涯を終える人は多かっただろう。
氷の精霊は、言い方はアレだが、冷却剤としてとても重宝されていたからね。
治すか、治ったように脳を誤魔化すか。
立ち直るまで様子を見るか、サッサと次を教育するか。
その方向性をどうするかで、だいぶ揉めたと記憶している。
医療棟の世話になる人自体が滅多に居なく、医療という分野そのものが廃れて来ていたんだよね。
病気や怪我は、自力で治すのが当たり前だったし。
ヘタに辛いと主張して、処分されるのを恐れての事だ。
それで病原菌を撒き散らされたら、周囲は溜まったもんじゃ無いんだけどね。
需要が無ければ、当然技術は衰退していく。
医者と呼べる存在は、あの世界では本当に少なかった。
その数少ないお医者様方は、生命を作り出すのにかかりきりで、既に産まれて生きている人達には、なかなかその目が向けられる事が無かった。
この世界の回復薬があの時あれば、死なずに済んだ人も多かっただろうに。
それを言い出したら、霊力があれば地球の問題をマルっと解決出来そうだよな。
今更言っても詮無いが。
だからこの世界が、地球の知識を持つ人が多く移住してきたにも関わらず、あまり発展していないのも頷けはするんだよね。
自分達の得意分野以外の事なんて、何も分からないもの。
特に生活に疑問を持たれないよう思考能力を上げないために、定められた仕事のみをこなす事を強いられた。
用意された環境で、指示され与えられた事にのみ取り組んでいても、どのような仕組みで目の前の機械が動いているのか。
自分達が作った物は何に使われているのか。
それらを疑問に持つ人は少ない。
ヘタに質問を繰り返せば、処分されるんだもの。
口を噤むのも当然だ。
最初に転移してきた人達は、大変だったろうなぁ。
俺はまだある程度、文明と呼べる物が栄えていて、人の営みが目に見えて築かれている、今の時代で目が覚めた。
四〇〇年程の間に、発展した技術も多いだろう事を考えるとね。
苦労が目に浮かぶよ。
その中に、カメラは無かったんだよなぁ。
写真が飾ってあったのだ。
今でこそ崖の上の家にひっそりと置かれている物だが、昔はカノンの両親が持ち歩いていたというし、興味を持たれる機会くらい、あっただろう。
撮影に時間がかかるピンホールカメラなら、特別な道具は要らないのだから作れそうなのに。
その撮影時間が掛かるという部分が、この世界ではかなりのネックになるのか。
五分じっとしてろ、なんて言われても、魔物が居るような場所では静止し続ける事は酷く難しい。
肖像画家の腕も良くないみたいだし、あまり後世に自分の姿を残したいと思う人が、なかなか居ないのかな。
絵描きのような、日常生活とは程遠い、しかも金が掛かるような作業は、始めるにはハードルが高すぎるか。
意外とね、カノンは絵を描くのが上手だよ。
あくまで、薬草のスケッチだけど。
あとは風景画だね。
ここの地方の○○と呼ばれる村から南西方向に歩いて数日、こんな山連なりが見える位置に始めて見る草花があった。
みたいな記述がされたページが、カノンが持ち歩いている分厚い手帳に書かれている。
たまに押し花や調合の割合なんかと一緒に。
ホント、回復薬作りが好きだよね。
彼の両親はそう言う頭を使う系統の仕事は、得意とは言えなかったんだけど。
……地の精霊が料理好きだし、血の繋がりとしては要素がシッカリとあるのか。
料理って科学だから。
カノンは料理には興味無さそうだけどね。
無難に食べられるなら、そして栄養が不足なく摂れるなら問題ないって感じ。
最近は、美味しいものの方が、より好ましいと思っているみたいだ。
しかしあの、クッソマズイ回復薬を平然と飲める時点で、味覚がおかしいのは明白だ。
飲むと漢方薬を煮詰めてる最中の臭いが、鼻から胃袋まで満遍なく漂うんだよ。
最早拷問の域である。
暫くは口の中にずっと青臭さが残るし。
カノンに拾われた後に初めて飲んだ回復薬は、彼が子供にも飲みやすいようにと改良をしている最中の物だった。
そのため、青汁とかうがい薬を足して二を乗算したような味で済んだ。
飲んで飲めない事は無い。
それ位の味だった。
アレで改良した味だもんね。
通常の回復薬なんて、そりゃ薄めなきゃ飲めないさ。
効果は落ちるとしても、回復薬のマズさに殺されかねないもの。
ん〜、それこそ、食に興味を持てたのなら、更に味の改良を求めてくれても良いと思うんだよね。
子供の生存率を上げるために、飲みやすい物を作ろうとしてあの味まで持っていけたのだ。
美味しいと思えような……もしくは、錠剤薬のように、飲み込みやすい物を作るとか?
木クレオソートを主成分とした、胃腸薬みたいにさ。
アレも臭いが激ヤバで、このせいで病気になるんじゃなかろうかと思わせる凶悪な見た目をしているのに、胃腸の不調所か歯痛やアニサキスによる食中毒にも効果があるとされていたお陰か、世界中で愛されていた。
結核や虚弱体質にも効果があるとして、戦争時には万能薬扱いされて兵隊さん達は携帯していたそうだよ。
回復薬も、言わば万能薬じゃん?
風邪にも効くし、傷の治癒にも使える。
糖衣が出来たら、カンペキだよね。
不快な味や臭いを気にしなくて済む上、揮発性分を閉じ込める。
効果が高くなるなら、カノンもこの話に食いつく気がする。
今日無事にアリアを街に迎え入れて、週末に控える結婚式が終わったら、打診してみよう。




