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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、頭を抱える。

 時間が経過しないと分からない、遠い未来の事は、一旦置いておこう。

 大切なのは今、この瞬間だ。


 なぁに、どれだけ長生きしたとしても、精霊になった皆が居るのだ。

 寂死ぬという事はあるまい。



 ……だが、精霊とて死ぬ事はある。


 精霊石は精霊が死んだ時に生成される。

 数多く出土する精霊石の量を見れば、過去どれだけの数の精霊が亡くなって来ているのかが、容易に想像出来る。


 石の大きさからして、微精霊のような、力を殆ど持たない低位の存在のものだ。


 皆のような、最高位に位置する精霊は、そうならないように対策を取っていると言う。


 それは裏を返せば、対策を取らなければ皆も死ぬという事実に他ならない。

 火の精霊(イグニス)も、その対策を取っていなければ、ヤバかったんだもんな。



 俺が超長生きするのだとしたら、精霊の皆が死ぬ可能性はゼロにしておきたい。


 寂死ぬのはイヤだ。

 どうにかしなければ。



 ついでに長生き同盟を組めそうな……というか、既に長生きをしているカノンの寿命を延ばすのも、大事だな。


 イタズラに死生観が歪むような、不老長寿の人間を増やすのは如何なものかと思うが、元々長生きの人の寿命を、更に延ばした所で、そんなの誤差にしかならないだろう。


 何年生き続けられるのか何て、それこそ、神のみぞ知る領域の話だ。


 あと何年生きられるか、生き続けなければならないのか。

 カノンには分からない。


 霊力に応じて寿命が長い傾向にある、程度の認識でしかないのだ。

 ならばオレがすべき事は、カノンの霊力を底上げする事だな。


 ……何をすれば良いのかは、イマイチ分からんが。



 中身か外身のどちらか、あるいは両方が俺と関わりがある燼霊の出没を伝えると、カノンは額を押さえて目を閉じた。

 厄介な事が起きていると、不足なく認識してくれたようで何よりだ。


 多分燼霊だろう、と伝えたが、カノンの中ではあの少女は既に燼霊で確定している。



「‘’あの子たち‘’が指すのは、状況からして精霊教の信者たちの事だな。

 ‘’成果‘’は……憶測の域を出ない。


 ……が、ろくなものではないな」


 あの少女が言っていた言葉も、モチロン、カノンに伝えてある。


 司教や司祭のようなオッサン達をお子様呼ばわりしている時点で、人外及び、そのレベルで長生きしている存在なのだろうなぁと予測出来る。

 

 

 カノンも随分長生きしているが、中年に向かって‘’あの子‘’呼びをする事はない。


 精霊の皆は……どうだろうな。

 カノンの両親をそう呼ぶ事があるくらいか。


 そこまで親しい、存命の人間が居ないからだろう。

 精霊の口から聞いた覚えは無い。



 つまり、あの燼霊にとって、王都(ディルクルム)にいる精霊教の一部、もしくは全ての教徒が、一定以上親しい身内扱いするに足る人物である、という事か?


 もしくは、親しく接している人が近くにいるのかな。

 子供なんかだと、周りの人間の呼び方を真似するじゃない。

 そのノリなのかも。



 燼霊は元々、この世界に顕現しにくい存在だ。

 自然に開いた時空の裂け目を、たまたま運良く通って来れたとしても、素体がない限りは、長い時間留まる事は出来ない。


 それらの条件を総合的に考えた時、あの燼霊を呼び出した者が居て、そしてその人が、あの燼霊に肉体を与えた。


 そしてその人は、教会で司教達にアレコレ命じる立場である。


 そう考えるのが、自然かな。



 今の俺と地の精霊(テルモ)の関係に近いかな。


 俺と彼の場合は友人枠だが、通常の精霊でもし地の精霊(テルモ)にしたような事をするのであれば、主従契約や従事契約を結ぶ。


 相応の実力が無ければ、契約は結べない。


 神様のような存在だもの。

 精霊を服従させられるだけの力を示さなければならないのは、当然だよね。


 むしろそれだけで、強力な力を我がモノ顔で使えるようになるのだ。

 鍛錬の良い目標になるのではなかろうか。


 力を常に優先して貸してくれるような贔屓を、するに足る人物だと証明出来なきゃ、精霊に失礼ってモンだろう。



 カノンの場合は契約者は両親で、その息子だから時の精霊(クロノス)の力を借りる事が出来る。


 つまり、契約者本人が死んでも、内容によってはその契約は生き続ける。



 ソコから考え得る最悪な想定は、その燼霊を呼び出した人物は既に逝去しており、燼霊との契約だけが残っている場合だ。


 燼霊には人間と交わした約束事なんて、守る道理はない。

 しかし契約の内容如何では、破棄した瞬間にこの世界に居続けられなくなる。


 だから大人しく従っている。


 そうじゃなければ、可能な限り暴れ回って破壊して、ニブルヘイムへと戻っているだろう。

 燼霊の悲願は、この世界を滅ぼすことなのだから。



 知恵が働くのなら、契約に反するような事はしないが、抵触しない程度の事をしているのかもしれない。

 ソレが自分が動くのではなく、他者を動かす事だったりして。



 しかし重要なのは、何故燼霊がこの世界に顕現し続けているのか、ではない。



 世界に仇なす危険な存在が、教会を勝手知ったると言わんばかりに出入りを自由にしている、その事実だ。


 王都(ディルクルム)の教会は一支店だ。

 余程本部の偉い立場に居ない限り、許される行動ではない。


 つまりあの燼霊は、教会のトップである教帝か、それに準ずる立場である可能性が非常に高い。



 精霊教会の一部で、精霊と勘違いして燼霊を祀っている者が居る。

 その程度の認識だったが、改めなければならないかもしれないな。


 精霊教会は一部を除いて、その殆どが既に燼霊が掌握されている。

 そう考えるべきだ。



 旅の途中で立ち寄ったルイーナ街の教会は、カノンと昔馴染みのおじいちゃん司教が代表を務めていた。

 その様子におかしな所は無かったし、精霊を信仰する心に後暗い様子も見られなかった。


 ダンジョンで会った若い教徒五人組も、世界の破壊を望んでいる様子は無かった。

 だからといって、精霊の信仰に自分の人生を賭ける程心頭している様子も無かったが。


 教会のそもそもの立ち位置的に、それ位ラフな考えの人は多いと思うんだよね。

 今回の国王暗殺と王宮乗っ取りに関しても、参加していた連中は、命令されたから仕方なくやっている感が強かった。


 だから全ての精霊教徒が、燼霊の手中にあるとは思えない。


 だからこそ、そういう望んでも居ない事ですら、遂行しなければならないと思わせるような命令を下せる立場に燼霊が居ると考えるべきだ。



 精霊教会のトップである教帝とは、カノンは会った事が無いそうだ。


 教会の総本山に挨拶に行った時も、席を外していたり、時間の都合が合わなかったりと、アレコレ理由を付けて直接対面する事は今迄無かった。

 そして、代替わりをしたと連絡を貰った事も無い。


 ヘタをしたら、教帝があの燼霊ってパターンもあるって事だ。



 もしそうなら、世界中で信仰されている宗教を、瓦解させなければならないのか。


 宗教というのは、心の拠り所だ。


 信じる者は救われる、なんてよく聞くが、盲信して疑わず、思考の停止による信仰心を持つ者の場合、ソレを奪われた時の反動が行き着く先は、死だ。


 だってソレに生かされているんだもの。

 信仰心そのものに支えられて生きている人からしてみれば、信じる先のモノを奪われるのは、空気を奪われた動物と同じだ。


 呼吸せずに生きられる存在なんて、居ない。



 この際、クマムシみたいな特殊すぎる生物は除外してね。

 アイツは放射線を当て続けようが、カラッカラになるまで乾燥させようが死なないんだもの。

 生物として、特殊過ぎる。


 乾眠状態のヤツらは、最強と言っても過言じゃないもの。

 酸素が無くても死なないってどういう事なんだよ。

 ワケわかんねぇ。



 閑話休題(横道逸れた)



 精霊教会がどの程度、燼霊の影響を受けているのか、シッカリと調査しないとな。

 頭が燼霊だというだけならば、すげ替えれば何の問題も無い。


 精霊を崇めていたのが、いつの間にか燼霊を敬仰するようになっていたように、また信仰対象を燼霊から精霊にすれば良い。

 本来あるべき姿に戻すだけなのだから。



 だが、変わったのが信仰対象ではなく、その内容だったら、ちとマズイ。

 来たるべきXデーに向けて、この世界の破壊行為を推進しているのならば、それはもう、テロリストと同じだ。


 決して屈してはならないし、洗脳をされていない人を見つけて、最低でもそう言う人達は確実に救い出さねばならない。


 その際は、内部に侵入する、かなりリスクが伴う調査が必要になる。

 しかも確実に長期戦になるよね。


 その間にそのXデーが来てしまったら、どうしようか。



 なにせ国王(アリア)襲撃って大事件を、既に起こしているワケだし。

 未遂に終わってはいるけど。



 ただあの言い方だと、少なくともあの燼霊は「国王を殺せ」なんて指示は、出していないんだろうな。

 全員出払っている理由を、知らなかったようだし。



 そして……あの燼霊との邂逅以上に、目下の問題は淵窩(エンカ)と呼ばれていた、あのガウの中身だ。


 人工的に作られたギンヌンガの裂け目の素。

 どのようにして作ったのか、先の戦いを振り返れば分かる。

 まぁ、ろくな方法ではないだろう。


 アレが育ったら、マズイなんてもんじゃ済まされない。


 燼霊の対応や対策を講じるのは、確かに大切だ。

 しかしそれよりも淵窩(エンカ)の対処を、真っ先にすべき事だ。


 アレがもし王都(ディルクルム)内で裂け目まで育ったら、最悪王都(ディルクルム)が無くなる。


 あの時は何も無い、だだっ広い平野だったから、何か壊したり誰か巻き込んだらどうしよう、なんて考えなくても大丈夫だった。


 だが王都(ディルクルム)では、当然、そんな危険なモノがあるなんて想像すらしていない、日々を懸命に生きているだけの無辜の民が数多く暮らしている。

 裂け目は開かれるのなんて、待ってくれやしない。


 どのようにすれば、安全に処理出来るのか、精霊の皆なら知っているだろうか。

 そして、どうにか淵窩(エンカ)を探し出す方法は無いのだろうか。


 感知で見付けられないだけで、もしかしたら、世界中にアレが散らばっている可能性だってあるのだ。

 もしあの淵窩(エンカ)が、同時に世界中で裂け目になったら。


 ……この世界は、終わる。


 平和な世界を創るハズだったのに、なんでこんな事になってるんだろうなぁ……

 今度は俺が頭を抱える事となった。

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