表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/249

神さま、

 ヒトは本能的に、他の生き物、特に同族であるヒトを傷付ける事に躊躇する生き物だ。

 狩りをして自ら捌いて食すような野性的な生活をしていた頃の遺伝子や、領土を広げる為に縄張り争いをして虐殺をするような遺伝子を受け継いでいるハズなのにね。

 


 この世界の住民は……どうなんだろうな。


 俺なんかは、自分で屠って捌いて料理して食べて、と言う一連の流れを経験している。

 そして当たり前のように受け入れている。


 しかしそれは、俺が冒険者をしているからしている事に過ぎない。



 街にある肉の卸売り業者なんかは、冒険者からある程度捌かれ、解体された状態――大体は枝肉の状態になった物を買い取って、ソレを更に部位ごとに分けて市場に流すからね。

 内臓や血を浴びるような機会は、滅多に無い。


 肉は冬場ならまだしも、夏場だとどうしても腐りやすい。

 身体に良くても腐っていたら食べられない。


 血抜きは当然狩った時にするとして、血液が沢山含まれている内臓なんて以ての外。

 全て廃棄だり

 半丸だと運びにくいから、もっぱら可食部の多い、船尾を選んで売る冒険者が多くなる。



 つまり、世の人達はバラ肉を余り食べないらしい。

 脂がのってて美味しいのに。


 まぁ、捌くのに手間が掛かるし、骨が多い分、可食部が少ないクセに重くなる。

 そうなると冒険者側は金になりにくいから倦厭する。

 食べた事がある人じゃないと、その魅力には気付けないから、肉屋もわざわざ「アバラ周りの肉持って来て」なんて言わないよね。



 鎧牛(アルタウルス)が家畜化されて、ソコソコの年月が経っていてるようだが、あくまで鎧牛(アルタウルス)は乳牛である。


 オスが産まれたら、ある程度の大きさになるまで育てて食肉になるのは、地球と同じだ。

 だが鎧牛の名に相応しく、大きくなる程に外皮が鋼のように固くなる。


 一歳を超える頃が、丁度親離れをする時期という事なのかな。

 一気に外皮が固くなり、ヘタな刃物では、また相応の腕がなければ、屠殺が出来なくなる。



 そのためその‘’ある程度‘’の基準は一年に満たない。

 そうなると、可食部は当然少なくなる。


 若い分肉は柔らかくて美味しい傾向にあるけれど、畜産動物として地球では当たり前にされていた、去勢処理はされない。


 英雄殿(日本人)は伝えなかったのかね。

 日本だと九割以上のオスはされていたようなのだが。


 特に日本は食に拘りが強いから、「どうせ育てるなら美味しくさせるのが、畜産農家の勤めである!」って考えが強かったのだろう。

 そんな当たり前は、この世界では通じない。


 「そんな手間をかける位なら、より多くの肉と乳を!」 って感じかな。


 なにせ魔物が居るから、人間の生息域が狭い。

 畜産を広大な土地で大規模に、とはいかないのだ。



 何の話だっけ?


 あぁ、そうそう。

 拷問の話だ。



 尋問は特殊な訓練を受けた者にしかさせられないからと、同席をアリアに拒否されたのだ。

 拷問を受ける側も施す側も、経験あるんだけどね。


 参加させてくれたら、自白剤でも死にたくても死ねない拷問器具でも、いくらでも創ったのに。



 とは言え、この世界とは常識が違うから、どこまでやって良いかのラインが分からない以上、参加すべきでは無いだろうと、拒否を受け入れた。



 ‘’拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約‘’略して‘’拷問等禁止条約‘’が世界規模で締結されてても、私刑も含めて普通にまかり通っていた世界と、そもそもそんなモノが無い世界とでは、どこまでやって良いのかが代わるからねぇ。

 もしかしたら余りの残虐加減に、気絶しちゃうかもしれないじゃん?



 怖がるなんて言語道断。

 楽しんでもいけないし。


 淡々と役目としてこなせるような人でなければ、確かに尋問や拷問の類は限られた人にしか出来ないお仕事だね。



 ブッチャーから関連付けてアレコレ考えてしまったんだろうな。

 俺の思考は直ぐに脇道に逸れていけないね。



 気配察知の精度がイマイチとされてしまったアルベルトは、ソレを挽回する為に尋問官に名乗り出た。


 彼は元々お貴族様の家系の末子だ。

 騎士として自分の領土を護る訓練をする傍らで、そう言う特訓も受けた事があるそうだ。



 やたらと魔物の解体が上手だったのは、冒険者を長くしているのもあるだろうが、筋肉や骨をどう断ち、どう動かせば、どういう結果が得られるのかを熟知していたからだったのだろうね。


 大抵は切れれば良いんだから、と筋肉の付き方なんて丸無視して、デッカイ斧やら剣で叩き斬ってしまうものだから。

 

 そのせいで肉の繊維潰してしまって価値が下がるんだよ。

 ガルバめ。

 勿体ない事をしやがって。



 ジャビルが(オルトゥス)で解体屋さんをしているのは、人間相手だと咎められるだけの行為が、魔物だと周囲から喜ばれる行為へと変わる。

 しかもそんな受け入れられ難い趣味に、給料まで発生する。


 そういうやり甲斐と需要とが見事に噛み合った結果だよな。


 しかも上司が気心知れた、長年一緒に旅をしてきたガルバだし。

 恐らくジャビルが(オルトゥス)の移住者の中で、一番良い思いをしていると思う。



 ガルバは責任ある立場におさまった上、人生の墓場と言われる結婚もする事になった。

 それが幸となるか不幸となるかはまだ分からないけれど、自由を謳歌する冒険者稼業をしていた身としては、その不自由さが窮屈に思う日があるだろう。



 サージは料理に目覚めたのが(オルトゥス)で暮らし始めてからだしな。

 それまでも、冒険者をやっていた時代から料理を担当する事が多く、人に食べて貰って美味しいと言われる事の喜び自体は知っていた。

 なので料理屋を突然任されることになっても、本人はソコソコ楽しんでやっているようだ。


 しかしお金を貰って料理を提供するのにも、食中毒も含めた責任を負わなければならないし、その時気分じゃ無いものでも注文されれば作らなければならない。


 気分次第で適当に作って、生だったとか塩が多かったとか、失敗をしても笑って許されていたような時とは違う。

 しかも、今回の催しで大量に作り慣れないパーティ料理を作らなければならなくなったし。



 アルベルトは俺と一緒に旅がしたい、なんて世迷いごとを言ってしまったが為に、死ぬような思いをしながら実地訓練を散々させられてる。

 それ所か実際、一度死んでるし。


 今もただの冒険者を続けていたら絶対にしなかった、拷問を伴う尋問をさせられている。


 やっぱりジャビルが、一番居心地の良い所に落ち着いたよね。



 さて俺は何をすれば良いのかと言えば、教会がもぬけの殻だと報告した時点で、アリアから指示を貰っている。



 司教が()()()()()()()()と言う鍵を使って、教会内部の偵察をする。


 全員が出払っている状態が異常であると、やはり誰もが感じているようで、教徒を全員捕らえたと油断して教会に乗り込んできた騎士達に向けた、罠が仕掛けられて居るのではないか。

 そこで騎士達を一網打尽にして、別に待機している――例えば教会本部のお偉いさん方が王宮を乗っ取る。


 そんな手筈だったのかもしれない。



 もしそうならば、ヘタに騎士団を動かすと死傷者が出る。


 その点俺ならば、鑑定眼でワナを見破られる。

 余程タチの悪い、俺ですら対処出来ないようなワナが用意されていたら、それこそ誰も手出し出来ない。


 俺は一応、引き際が判断出来ないような愚か者ではないし、何か危機を察知したら、即アリアとカノンに連絡を入れて撤退をする。

 そんな手筈になっている。



 そのせっかく()()()()()()と言う教会の鍵だが、俺には不要なのでわざわざ届ける必要は無いと返事をしてある。

「スキル」で創れるからね。


 ただでさえ騎士団の強い人達の、大半が出払っているのだ。

 人数迄減ってしまったら、万が一の時の対応が出来ないじゃない。



 扉を切ってしまった方が楽だけど、後から難癖つけられても困るから、手を抜かずに合鍵を創りますよ。



 日中は開かれたままだと言う、教会の敷地内に入る為の金属製の扉は、特に苦もなく簡単に開いた。


 墓荒らし何かが出るといけないから、夜は理由が無い限りココの扉は閉ざされている。

 逆に理由さえあれば開いておいてくれるのが、この重厚感のある装飾が施された、クラシックな門扉である。


 精霊術で加工しているのかな。

 ちゃんと不法侵入を目論む人間には痛い、槍や剣をモチーフにしたデザインになっている。

 花や唐草を彷彿とさせる意匠もあしらってあり、そのふたつのモチーフのバランスが絶妙だ。

 真鍮製で格好良い。



 ソレを通り過ぎた正面にある、教会の建物に入る為の、大きな扉。


 コチラは見た目シンプルな木製の物なのだが……シンプルなのは見た目ばかりで、鍵の構造は複雑だ。

 コレ、封印が施してある。


 精霊術とは少し原理の異なる、霊力を用いた術式による物だ。

 物理的な鍵は完全なフェイク。


 鍵穴に差し込むと、トラップが発動する仕様になっている。

 ……と、思う。



 カノンに習ってはいるけれど、地球にはなかった定理や原理がガンガン出てくるから、覚えるのに難儀しているのだ。

「知識」というチートが使えないと、俺の脳ミソって一般人とそう変わらないんだよな、と現実を突き付けられてるよ。



 そんな術式を構築するのは苦手だが、解除するのは「スキル」で行えるので何の問題もない。

 この世界の法則に則るのであれば、時の精霊(クロノス)の力を借りるべきかな?


 最初の予定とは違う方法になってしまうが、臨機応変に対応するのが大人と言うもの。

 俺もこの世界では立派な、大人とされる年齢だからね。

 

 型通りに収まらず、機に臨み変化に応じた行動を取ろうじゃないか。



 施錠する前まで時間を戻して解錠する。


 パターン以外の方法で開いたら爆発、なんて事がないのは確認済みだ。

 問題ない。


 フェイクの鍵を挿したら。

 扉を破壊しようとしたら。


 そのふたつの方法を取ると、玄関前に隠されている方陣が起動して、閉じ込められる仕様になっている。

 あと、ある一定以上の霊力を有している者だと、どこかしらに転送するようになっているんだよね。


 行き先が何処かなのかまでは分からない。


 だって俺、この世界の地名全く知らないもの。

 インフェルヌスとか言われても分からんってぇの。



 すんなり開いた扉をくぐり、シンと静まり返った天井の高い建物の中を歩く。


 幾何学模様やアラベスクが壁に描かれている事は無い。

 十字架や聖母の像が置かれて居る事も無い。

 ステンドグラスのような煌びやかさも、アトリビュートが祀られて居るなんて事すらない。



 宗教的な荘厳さも何も感じない、ただ他の家屋よりも天井が高いだけの建物。

 そんな印象を受ける。



 教徒ではない、一般人が立ち入りする区画だからなのだろうか。

 イヤ、入信者(金ヅル)を増やしたいのなら、そう言う場所程金と手間を掛けて、見栄を張るものだよな。



 足音を立てないように歩くが、建物自体が古いらしく、ギッギッと床が鳴く。

 その音に反応するモノは特に無し。


 些細な事でも見落とさないように、気配感知に割く霊力濃度を上げているのだが、人が上手に隠れて居る事も無い。

 玄関以外に、分かりやすく設置されているワナも今の所ひとつも無い。



 教会の人間が、単にとてつもないおバカさんで、「いっちょ国王の首取って来よか〜」と、軽いノリで全員参加を強制したのだろうか。

 だとしたら、余りにもバカが過ぎる。


 もしそうなら、今後は関係者の連座を防ぐ為にも、国王側が不穏分子を積極的に排除するべきだろう。

 そうじゃないと、国民の割合が数%、ヘタしたら十数%の単位で減りかねない。


 黒光りするGの付く虫と違って、人間は簡単に増えない。

 人的資源は有限なのだ。


 一通り見て回ったら、アリアに一度進言しようっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ