神さま、観察する。
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昨日書きそびれてしまいましたが、ブックマーク登録と感想を頂きました。
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大感謝です!!
体育会系のハツラツとした雰囲気の、裏表が無さすぎる思った事を全て口に出していそうな、短剣を装備しているのがトリスト。
間延びした喋り方をする、背が低く常に笑顔――どちらかと言うと、ニヤニヤとしている――矢筒を持っていない上に弦を張ってすらいない、洋弓めいた弓幹を持っているのがリュレル。
ほぼ役に立たない治癒術しか使えない、とんでもなく偉そうな態度のレイラ。
そしてガタイのいい素朴な外見をした、メイス装備のラウディ。
縦に長い体格で、妹に似た愛嬌のある顔立ちをしている長剣装備のフィブレス。
以上五人が、ダンジョンで魔物を生け捕りにして来るよう、司祭から命令されて行動している、精霊教のメンバーだ。
話に聞いていた通り、前者若者三人の保護者として付けられたのが、後者壮年二人って感じだな。
全員何らかの精霊術は使えるようだが、まぁ、弱い。
一般的な教会関係者の霊力って、こんなもんなのかな。
見る分には、襲撃者よりも少し劣る程度の霊力しか無いように思える。
ココまで戦って来た分で、消耗しているからかもしれないが。
よくもまぁ、チュートリアルの一、二階層ならまだしも、三階をクリア出来たなと思う。
余程連携が上手なのかな。
この階層まではまだ、殆ど単体でしか魔物が出ない。
毒を持った魔物でも、即死させないと厄介なだけで、倒そうと思えば倒せる。
例えば、盾職二人が身体を張って、多少の毒を受けつつも注意を引いているスキに、他の三人が総攻撃をすれば、ケガありきにはなってしまうが、先に進む事は可能だろう。
本当にその戦法を取っていたのなら、青年組は何で盾職二人を、落とし穴から助け出さなかったんだろうね。
二人が居なかったら、先に進む事がままならなかっただろうに。
経験が無さ過ぎて、盾職の役割を軽んじていた可能性はあるな。
三人とも迂闊だし、見るからにバカっぽいし。
教会における地位は分からないが、このメンバーなら巡礼経験の多い二人が指揮を取っていただろう。
その指示に従うのがイヤになったとか、そういう事なのかな。
なんかしきりにトリストとリュレルの二人が、言葉だけは謝り倒している。
態度はヘラヘラしてて、悪い事をしました、反省してますって雰囲気は皆無だ。
そして「お前もラウディとフィブレスを置いて行っただろうが」と言いたくなるが、ローパー相手に置いてけぼりを食らったレイラが、自分の事は棚に上げて二人を責め立てている。
それを壮年二人が宥めている。
お前らが一番怒る権利があるんだぞ?
聖職者と聞くと、キリスト教やイスラム教のお偉いさんだとか、仏教の僧侶なんかが思い浮かぶが、目の前の連中は、そのどれとも結びつかないな。
年長者二人が辛うじて、それらの道を導く者達のように、寛大な心で他者に接している感じはするが。
それはただの、長く生きた者が故の余裕でもって、接しているだけのような気がする。
この世界での唯一の宗教である精霊教は、宗教的な教えを広める側面が、少々乏しい。
どちらかと言うと精霊術を扱える基礎的な力がありながら、それを持て余し、捨てられる所を運良く拾われた、孤児の集団って感じだ。
力を持つ者がその使い方を学び、礼節と教養を身につけ、社会に出たり、社会貢献活動に精を出すのなら、俺のイメージする教会に近い。
だが精霊教は外部には一切教徒を出さず、勢力を拡大し続けている。
一部の地域では、国王よりも司教の発言を重んじる風潮があるとか。
精霊術は、人力だと人数や時間を要する作業でも、ものの数分で片付けられる事柄が多い。
民衆に力を示して恩を売って、ついでに回復薬や治癒術を有料で行い、活動資金も貯めている。
それはそれは立派な権威を示すような建物がドーンッ! と建っているのだ。
国よりも身近な存在として、目に見える形で自分達に恩恵が与えられるのだから、信頼されやすいよね。
ソレを国王や‘’王の権能‘’の威光や力が届かないような場所でやっているのだから、なかなかタチが悪い。
‘’王の権能‘’――つまりはカノンの事だが、転移術が使えるとはいえ、アイツが一人で回れる箇所なんて、たかが知れている。
特に治安が悪かったり、貧困に喘いでいるよつな場所を重点に赴く傾向にある。
教会が平和を保っている場所への視察は、どうしたって後回しになりがちだ。
国や国民への直接的な被害がなかった上に、むしろ教会への依存という形だったとしても、生活水準を底上げしてくれたのだ。
国として見るならプラスの働きをしてくれている。
そりゃ放置もされるだろう。
その上貢献に感謝し、しっかり国から活動資金の援助を出している。
貰えるモノはちゃっかり貰っているクセに「国王は玉座でふんぞり返っているだけの無能なのにも関わらず、精霊様のように、人間の上に立とうと偉ぶっている」なんてイチャモンをつけて、国王を害そうとしている。
国王はむしろ「代わってくれるなら是非とも代って頂きたいです! 今直ぐにでも!!」と言っているのに。
単に自分よりも上の存在が目障りなだけなんだろうな。
「摩訶不思議な力を、何でか分からないけど使える自分達は、選ばれた存在なんだ!」と勘違いして、その‘’何故‘’の部分を深堀しないが故の、愚かな行動だよなぁ。
精霊の人間への愛情に依怙贔屓があるのならば、間違いなく国王の方が愛されているのに。
だって火の精霊と地の精霊からしてみれば、可愛い姪っ子なワケだからね。
風の精霊にとっても、大事な人達の子供になるでしょ。
闇の精霊はどうか知らんけど、光の精霊も時の精霊も、俺が大事だと思っている人をぞんざいには扱わない。
芋づる式になるが、氷の精霊は地の精霊の大事な存在を、を俺みたいに私怨が無い相手ならば慈しみをもって接するし、シスコンな水の精霊は氷の精霊が大切に扱う者には礼を以て接する。
あぁ、それを言い出したら闇の精霊も、光の精霊が慈愛を向ける相手ならば、粗雑に扱うことは無いだろう。
つまり、アリアは全精霊の寵愛を受けていると言っても過言では無い。
そんな存在にケンカを売ったのだ。
精霊教の今回の騒動に関わった人間、特に主犯格は今後、精霊術を使うのは難しくなるだろう。
アルベルトが俺に向けて精霊術を放とうとして不発に終わったように、まずアリアに対しては使えない。
今回の襲撃は、馬車の中に居たのがイシュク達だったから術を使えただけだし。
本人が乗っていたら、アレだけ術に頼りっぱなしの戦い方だと、俺が手を貸さなくても、すぐに制圧出来て居ただろうな。
アリアもそれを見越して、街に直接自分が向かうと言っていたのだろう。
目の前の五人は、若いのだからこの先の事を考えると、精霊術が使えなくなってしまう状況に陥るのは、勿体無いよな。
そんな彼らは、まだ任務を遂行している最中だから、この階層で目的を達成出来なければ、更に奥に進むと言い出した。
つまり、五階に向かうのは決定してしまっている。
そうなると、着いて行くと不自然に思われてしまうな。
どうやって外に運び出そう。
だってこの階層にもう、魔物は一匹たりともいないし。
フロアボスもいないしな……俺が倒しちゃったから。
邪魔だからと殴るんじゃなかった。
もしボスがいれば、死なない程度に痛めつけて貰って、気絶した所を回収出来たのに。
設定イジって復活させられないかな。
……ムリか。
そりゃそうだよね。
復活出来るとしたら、このフロア全体をリセットすることになる。
ザコもトラップも、全て含めて、だ。
今リセットすると、確実にコイツらでは対処出来なくて、俺も戦うことになって非常に面倒臭い事になる。
さっきの戦闘で、俺が強いと認識されてしまっているからね。
仲間すら置いて行くような連中だ。
ヘタすりゃ「んじゃ、ヨロシク!」って言って俺だけ置いて行かれそうだ。
……イヤ。
ソレならソレで、動きやすくなるし良いのか。
そんじゃま、ポチッとな。
一瞬、目眩を覚える程の瘴気がフロア中に充満する。
ボスの形成が真っ先に始まり、三階からの転移場所付近から順に、魔物と罠が出現していく。
うんうん、順調だね。
リセットをしただけだから、難易度は変えていない。
毒を持つ魔物しか出ないし、ちょっと対処が面倒臭い罠しかない。
盾を持たない前衛二人を先頭に、油断しきって喋りながら歩いているけど、大丈夫だろうか。
「あ、おじょ〜。
待ってぇ」
リュレルの役目は、カンタンな斥候も兼ねているのだろうか。
レイラが捕らわれたローパーが飛び出してくる場所の手前で、静止をかけた。
生体反応が近付かない限り、ローパーがその触手を伸ばして来る事は無い。
獲物を捕らえようと、壁から微妙にはみ出している触手の先端を指差し、口元を押さえ、回避行動を促した。
前から襲ってくる魔物は、レイラが軽い補助術をかけて、ラウディとフィブレスがその身で攻撃を防ぎ、後方からリュレルが戦力を削ぎ、トリストがトドメを刺す。
……なんだ。
意外と連携はシッカリ出来ているじゃないか。
ただ、毒が怖いからなのか、単に実力的な問題なのか、手加減が出来ずに倒してしまうようだ。
レイラが「また殺しちゃったの!?」と声を荒らげている。
俺に任務の内容を言っていないので、他の四人に「シーっ!」と言われて、慌てて口を噤んだが。
行く道にある罠の回避も、ローパー以外も全て恙無くこなしている。
多分、範囲こそ狭いが、リュレルは気配探知が出来るのだろう。
霊力の反発の仕方がオカシイ所に着目すれば、自ずと罠か魔物が潜んで居ると分かるからな。
なのに何で、落とし穴なんて古典的な罠に掛かったのだろう。
その疑問は、すぐ解決した。
あからさまな宝箱が前方に見えると――恐らく、まだ気配探知の外側だが、視認は出来るような距離――ソレ目掛けて青年三人が止める間もなくダッシュをした。
……そして、手前の落とし穴を踏み抜き、底へと落ちて行った。
わざわざ再現しなくて良いのに。
ってか、やっぱりバカだわ、コイツら。
同じ罠に同じように引っ掛かるなよ。
そして後衛ならば、前衛よりも前に出て隊列を乱すな。
俺とラウディ、フィブレスの、深〜いため息がトリオを奏でた。




