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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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208/211

神さま、言葉を失う。

いつもご覧頂き、ありがとうございます。


区切りの関係で、ちょっと今回いつもにも増して短めです。

ご了承ください。

 思い返してみれば、ヒントは各所に散らばっていた。



 一番の違和感は、何かと理由を付けて同行したがる琥珀(こはく)が、サルーメン山のマグマの対処をするためにと、別行動を取った事だ。

 専門じゃ無いからと理由を付けて直接出向いて以降、マグマ溜まりの始末が終わった報告を貰い、今に至るまで、彼の姿を見ていない。


 電波を受信したみたいに『完了した』と、頭の中に声が響いただけだ。



 いつもなら、即行で野暮用を終わらせるし、場合によっては、肉体をまとって食事の準備までしてくれるのに。

 ソレがココ最近、全く無かった。


 そのせいで、ご飯の内容が鍋一辺倒で少々食傷気味である。



 限られた調味料でも、ササッと何でも美味しく調理してくれる琥珀(こはく)と違い、俺は余り工夫の手立てを知らないため、レパートリーが多くない。

 「知識」でレシピ検索をしてもさ、‘’妖兎(レプス)の肉を使った料理‘’なんて調べても、出てこないもの。


 イメージから、ミートパイのレシピを調べて再現したが、見た目こそ似ていても、妖兎(レプス)はウサギの肉よりも余程筋張っているし、肉の味が濃いから、マズくはないのだけれど、イマイチ美味しいとも言えない料理が出来上がった。

 そんな失敗談があるから、どうしても無難な鍋になってしまうのだ。


 カノンに至っては、料理を美味しくしようなんて、そもそも考えて居ないだろうし。



 有翼乙女(ハルピュイア)が通って来た次元の裂け目も、探しはしたのだが、実は見付かっていない。


 全ての巣は破壊したし、有翼乙女(ハルピュイア)も根絶やしにした。

 だが移動範囲から想定された最初の巣から予想される、次元の裂け目があるであろう場所を探したけれど、見付からなかったのだ。


 くまなく探すには時間が掛かりすぎるし、殲滅後、追加で有翼乙女(ハルピュイア)や他の魔物は次元を渡ってコチラには来ていない。

 ならば先に火の精霊(イグニス)を起こそうと判断し、現在に至っている。



 その次元の裂け目があるかもしれないと予想した範囲には、サルーメン山はギリギリ入っていなかった。



 魔精霊(カドゥーシャー)の数も、異様な程に多かった。


 ココは微精霊が集まる、もしくは誕生しやすい地脈点ではある。

 ソレら全てが瘴気によって、魔精霊(カドゥーシャー)になってしまったのだろう。



 だがその現象が、そもそもおかしいのだ。


 だってココは、火の精霊のトップである火の精霊(イグニス)が居る土地なのだから。



 精霊は階級が上であればある程、より多くの瘴気を浄化出来る。

 霊力のキャパシティが増えるのだから、処理能力が上がるのは、ある意味当然と言える。


 瘴気は霊力で中和、あるいは魔力をエネルギー転換して霊力に置き換える事が出来るのだから。

 一度に使える霊力が多ければ多い程、瘴気への対処が容易になるのは、至極当然の事なのだ。



 眠っているとは言え、火の精霊(イグニス)は大精霊だもの。

 余程の事が無い限りは、周囲に発生した瘴気は、意識をせずとも勝手に浄化されていく。


 なのにも関わらず、全ての微精霊が魔精霊(カドゥーシャー)に変貌してしまっていたのだ。

 ‘’余程の事‘’があったのだと、その時に気付くべきだった。



 その事を知っているカノンが、特にね。

 俺は聞いてないから、知らなかったし。


 ……まぁ、責任の擦り付け合いをしても、意味が無いので言わないけれど。

 俺に指摘されずとも、カノン自身が、悔いているだろうから。



 火の精霊(イグニス)に対する違和感ならば、そのカノンはもっと強く感じていたはずなのだ。

 なのに()()()()に思い至らなかったのは、先入観からなのか、起こって欲しくない現実だったから、目を逸らして逃避をしていただけなのか。



 例年とは比較にならない程、酷い寒波が世界中を襲っている。

 大精霊がただ眠りにつくだけならば、過去に何度もあった。


 以前火の精霊(イグニス)が眠りについた年は、今季よりも気温は高かったが、積雪量が多かった。

 その程度の差なら、眠る・眠らないに関係なく、幾らでも生じる。


 特に今年は氷の精霊(スティーリア)が誕生したのだ。

 ソレが原因で、天気が酷く荒れているのかもしれない。



 そう思い、深くは考えなかったのだと、後に語っている。


 実際は、酷くならないよう抑えてくれていたのが、生まれ変わり立てで、器ばかりが大きく、ろくに霊力を操れない氷の精霊(スティーリア)だったワケなのだが。

 そうじゃなければ、もっと酷い事になって、新生王都(ディルクルム)が雪で埋もれていたかもしれないね。



 カノンは火の精霊(イグニス)が消滅した所を、直接は見ていない。


 どのような状況だったのか、説明くらいならしたけれど、その時その場に居なかったのだ。


 過不足無く伝わっているとは思えない。

 俺、説明するのヘタだし。



 だが……そう、俺も()()()から、違和感はあったのだ。



 本体となる核が別にあるとは言えど、大半の能力を持っているハズの分体が、なぜあそこまで弱かったのか。


 だって、一発だぞ。

 燼霊(じんれい)のトップである()()()が相手とは言え、コチラだって精霊の一角を担う大精霊だ。

 たった一発で消滅するなんて、有り得ないだろう。

 

 ……実際は、分体に割いていた能力が、さほど多くなかったからなのではないか。

 


 火の精霊(イグニス)はその属性の性質故に、基本四大精霊の中で最も強いとされている。

 もちろん相性として水属性の術には弱い傾向にあるのだけれど、その水とて、熱を奪えぬ程の業火に巻かれれば蒸発して終わる。


 風属性もヘタなやり方では火の威力を増すだけだし、地属性も溶かされて終わりだ。



 術者同士の戦いならば、器の総霊力量や手数の多さ。

 術を維持し続ける忍耐力や制御力によって勝敗は決し、優劣が決まる。


 だから水や地の属性が火に勝つ事もある。



 だが相手が人間ではなく、大精霊同士だったのならば、元の属性が持つ特性で、勝敗が左右されてしまう。

 それはもう、自然の摂理と言える。


 覆しようがない。



 唯一勝てるとすれば、火の精霊(イグニス)が攻撃を仕掛けてくる前に、颯茉そうまを筆頭とした風の精霊達に、酸素をゼロにして貰う方法だけれど……


 まぁ、自爆になるからね。

 酸素が全く無い状態では、一呼吸しただけで体内の酸素が空気中に吸い取られて卒倒、死亡するから。


 昏倒したら、その時点で精霊術の制御が出来なくなり、酸素がゼロの状態を維持出来なくなる。

 そうすれば、火の精霊(イグニス)に主導権が移る。


 だが酸素が全く無い状態だと、火の精霊(イグニス)は存在出来なくなる。


 場外に出たらその時点で負けならば、一応勝てる。

 なのでどれだけ頑張っても、ルールによっては勝てるって程度なんだよね。



 と言っても、こんなのは勝ったと言って良いのか、分からないレベルだよね。

 それくらい、火の精霊(イグニス)は強いって事。



 火は生活に欠かせないものだし、人々の信仰心だって厚い。

 ソレだけ強いのだから、霊力の器も相当のものだ。



 当時地の精霊(テルモ)だった琥珀(こはく)が『今全力で兄弟喧嘩をしたら、勝てるか分からない』と零すくらいだもの。

 認めたら悔しいからそういう言い方をしただけで、恐らく、勝てないんだろうね。



 精霊神となった今なら、また違うのだろうけれど。

 ソコは火の精霊(イグニス)も精霊神にならないと、フェアじゃないしね。



 ……そう、考えていたのだけれど。


 琥珀(こはく)を過大評価していたのか、火の精霊(イグニス)を過小評価していたのか。

 正直、目の前の光景が信じられない。



『――やぁ。

 君が来る前に、どうにかしておきたかったのだけど……ごめんね』


 見ててコッチが痛く感じる程、満身創痍になった琥珀(こはく)が、力無く笑いながら謝った。

 見ていて吐き気を催すような、濃密な魔力をまとった火の精霊(イグニス)に、その首を鷲掴みにされながら。

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