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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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203/211

神さま、調べる。

 大きな亀と言えば、島と間違えて甲羅の上に上陸した船乗り達が、海に引きずり込まれて死んでしまうという神話に出てくる、‘’アスピドケロン‘’や‘’ザラタン‘’がある。

 亀ではなく、巨大な魚や蟹の姿で描かれている時もあるが。


 他にはインド神話において、天地創造の際に用いられた道具を支えた、‘’アクーパーラ‘’やヴィシュヌの化身である‘’クールマ‘’も、亀の姿で描かれている。


 なので空想の中において、大きな亀は珍しくない。

 あくまで想像の中のお話だが。



 まぁ、ソレ等の話に登場する亀よりは、足元の魔庭亀(テスフォルティ)は小さいと言える。

 事実よりも、妄想の方が勝つ事もあるんだな。


 焚火が出来る程の広さは無いし、世界を掻き回すための棒の支柱にするだけの頑丈さも、無さそうだもの。



 魔斑鰻(ヘテロファッガー)が寄生した跡なのだろう。

 魔庭亀(テスフォルティ)の背負う甲羅には、穴がアチコチに空いていた。


 つまりコイツは、熱に弱いのか?

 だから霜華紋(フロストフラワー)によって温度が氷点下まで下げられたこの空間でも、何食わぬ顔で動けているとでもいうのだろうか。



 だとしたら、マグマの中なんて特殊な環境下で過ごしていた魔物なのに、チンアナゴと亀は、全く弱点が異なることになるんじゃないですかね!?

 カノンの嘘つき!!



 責任転嫁をしても、魔物は弱体化しない。


 潔く向き合うが……

 神話の生物より小さいとはいえ、対峙するにはデッカ過ぎて、何処からどう攻撃すれば良いのやら。


 スッポンはカメ目だし、亀と共通点も多い。

 ならば、スッポンの捌き方を参考にすれば良いのだろうか。


 そのためにはまず、甲羅を下にしなければならないのだが。

 更に、首を掴んで引きずり出さなければならないのだが。


 首を切り落とすにしても、この太さじゃ現実味が無いから、ムリだね。

 人間、諦めが肝心だもの。

 早々に見切りを付けるのも大事なのだ。

 


 亀の甲羅は、言わば骨である。

 正確に言うならば、背骨や肋骨と一体化している骨甲板の上に、角質甲板というケラチンから出来たハニカム構造の、強度が高い鱗のようなものが重なっている。

 骨甲板と角質甲板はそれぞれ繋ぎ目が違うため、かなりの衝撃を与えても、割れる事が無い。


 ケラチンはタンパク質なので、この亀の甲羅は別の物質で構成されているだろう。

 そうじゃなければ、火山の内部では生きていけないもの。


 それとも、内部に寄生していた魔斑鰻(ヘテロファッガー)が、何かしらの作用をもたらしていたとでも言うのだろうか。



 だがもしそうなら、‘’寄生‘’ではなく‘’共生‘’が正しい言葉になる。


 闇の精霊(テネブラエ)が適当にソレっぽい言葉を適当かつ無責任に、鑑定眼の説明文に起こしているだけならば、実は共生でした、というオチがあるかもしれないが。



 寄生している魔斑鰻(ヘテロファッガー)が、宿主である魔庭亀(テスフォルティ)の体表、もしくはその近い位置にいる事・栄養資源を取得している事。

 この二つの条件が一定期間続いた上で、魔庭亀(テスフォルティ)魔斑鰻(ヘテロファッガー)によってハッキリと不利益を被っている場合、寄生と定義される。



 ボコボコとアチコチに空いた、穴の内部に手を突っ込んでみる。

 手袋がイヤな音と臭いを立てた所を見るに、魔斑鰻(ヘテロファッガー)は攻撃だけではなく、その身体も滅茶苦茶熱いらしい。



 そんなヤツを宿した甲羅の内部はと言うと……おや、引っこ抜こうと思ったのに、なかなか難しいぞ。


 抜けにくいように、アンカーでも打たれているのか?

 それとも、魔庭亀(テスフォルティ)の角質甲板の下が、そういう構造になっているのか。

 


 魔斑鰻(ヘテロファッガー)の内部に残った肉体をようやく引き抜けば、その先端にはギザギザの牙が印象的な、頭が付いていた。


 つまり、俺達に攻撃をしてきたのは、魔斑鰻(ヘテロファッガー)のケツという事?

 えぇ〜……実はあの攻撃、放屁だったとか言わないだろうな。



 途端に嫌悪感が増した。

 あの魔物、見た目はチンアナゴだけど、中身はスカンクだったのか。


 放屁にしては、余りにも殺傷力が高かったが。



 穴の内部を覗き込めば、骨甲板を貫通して内部まで侵入していたようで、奥には血が溜まっていた。


 寄生という説明は、あながちウソではなさそうだ。



 ただ宿主である魔庭亀(テスフォルティ)が死なないよう、魔斑鰻(ヘテロファッガー)が率先して外敵を倒すように動いているようだし、共生している部分もあるようだが。


 まぁ、もともと寄生という言葉の定義自体が難しいのだし、良いか。


 ネチネチと重箱のスミをつつくようなマネをしていたら、時間が勿体ないもんね。



 せっかくなので引っこ抜いた魔斑鰻(ヘテロファッガー)の上半身も、魔庭亀(テスフォルティ)の血液も四次元ポシェットに突っ込んでおこう。



 血液と言うには、色が変だが。

 暗がりだからなのか、紫っぽい色に見えた気がする。


 地球では特定の無脊椎動物の血液中に含まれる、へメリトリンという名の酸素結合タンパク質によって、血液が紫やピンクに見える場合もあるそうだけれど。


 この世界の生物に、いちいち地球の常識で反応してはいけないのだろうけれど、ついつい比較してしまう。

 実際、ソレが役に立つ時もあるのだし、仕方ないよね。



「おい!

 いい加減、観察するのは後にしろ!」


 足場が限られたフィールドで一対多数では、戦闘に混乱が生じるかもしれない。


 俺なりに気を使って、カノンに戦いを押し付けたのだが。

 俺が魔斑鰻(ヘテロファッガー)を引っこ抜いたり、血液を採集するのに、瓶を穴に突っ込んでグリグリと押し付けたのが痛かったらしく、その度に八つ当たりを受けたのだろう。

 遂にカノンの口から文句が出た。



 見た目はまんま亀っぽいのに、鋭い牙を持つ魔庭亀(テスフォルティ)は、幾度となくカノンに噛み付こうとし、避けられては地団駄を踏んでその身体を揺さぶる。


 亀と一緒で顎が非常に大きく立派なので、噛む力は滅茶苦茶強いだろうなぁ。

 腕の一本でも噛まれた時には、すり潰されるか、噛みちぎられるかの違いだし、まぁ、大差は無いよね。


 とりあえず、このデッカい亀が、肉食及び雑食だという事は分かった。



「口の中攻撃しても効かないの?」


「生半可な術は通用しないようだな。

 ……お前が後ろで何かやっていたから、攻撃が効いたのか、お前のせいなのかが判らなかったが」


 「そりゃスンマセンねぇ」


 嫌味を言う立場から、言われる立場になってしまった。

 挽回しなければ。



 亀と同じで甲羅が二重構造になっている事や、その二種類の甲板が非常に頑丈な事。

 またそれぞれ防御に特化した特性が違う事も判明した。



 まず外側の角質甲板は、マグマの高温に耐えられる程の耐熱性に優れており、衝撃にも強い。

 面での攻撃をすれば、威力をそのまま弾き返されて、コチラが痛い目を見る。



 一点に集中し、身体強化した状態での全力攻撃ならば、表面は多少削れる。

 しかし角質甲板が砕けるまで、連続でそんな事をしていたら、腕の骨が砕けそうだ。


 削岩機でも用意すればまた違うのだろうが、アレは両手を使う必要があるから、完全な無防備になる。


 こんな限定された空間だ。

 しかもドーム状の構造内部である。

 そんなもの使用したら、マジで鼓膜が破れる。


 治癒術で治せるのだろうが、戦闘中に破れて方向感覚を失うと、危ないでは済まない。



 角質甲板をどうにか削り終えても、骨甲板が待っている。


 その骨甲板はというと、骨なだけあり、ある程度の柔軟性があるようだ。

 角質甲板とは違い、耐熱性はさほど高くないが、代わりに保温性が高い構造になっている。


 そのお陰でマグマの中でも、氷点下の中でも行動に支障が出なかったのだろう。



 起きたのは偶然か、寒さに対しては辛抱強い方では無いのか。

 どっちかまでは、分からない。


 お口の中が精霊術に対して抵抗力が強いのなら、他の魔斑鰻(ヘテロファッガー)も引っこ抜いて、ソコを攻撃するのが良さそうかな。


 とても地味な作業になりそうだね。

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