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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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202/210

神さま、怯む。

 光とは何かと問われれば、波長の短いエネルギー波の事だと答える。


 その光は大まかに分けると、二種類ある。

 見える光――可視光と、見えない光だ。


 見えない光には二種類あり、化学的なエネルギーを持つ‘’紫外線‘’と、熱エネルギーを持つ‘’赤外線‘’とがある。


 言葉自体は、有名だよな。

 ただ何となく、太陽光から出てるもんでしょ、炭火焼き肉する時のヤツだ、みたいな認識でいる感じかな。



 実際、四〇度を超えるお風呂に入っても平気なのに、外気温三〇度もしない外で、日焼け止めも塗らずに一日過ごしていると、日焼けを起こす。


 日焼けって、軽度の火傷だからね。

 火に触れたワケでも、熱く熱された物に触れたワケでもないのに、皮膚は火傷を起こす。


 その火傷を起こす原因となるのが、紫外線と呼ばれる波長の短い、目に見えない光である。


 熱を使わずとも、光重合や光分解のような化学変化を生じさせてくれる。

 ネイルアートとか、写真の感光とかが、例えになるかな。


 目に見えずとも、熱を感じずとも、ソコに確かにある。

 冷たいエネルギーと称すに相応しい、ソレが紫外線だ。



 では赤外線はと言うと、紫外線と逆で、熱を帯びたエネルギーだ。

 目に見えないと言う点では同じだけれど。


 赤外線は空気の温度と関係なく、対象となる物を直接温める能力がある。


 赤外線は水分に吸収されやすく、人の身体に当たれば皮膚のすぐ下で吸熱され、体内の分子の振動を活発化させる。

 分子の動きが活発化したら温かくなるのは、電子レンジと同じだね。

 結果体温が上がって、暖かいと感じるワケだ。



 焼肉の時は、肉の中の水分に赤外線が吸熱されるため、火から離れ、直火に当たっていない内部でも熱が通る。

 そういう仕組みだ。


 余計な脂が落ちるし、表面は直火によって水分が蒸発しカリッと食感になり、中は赤外線で熱が通り安全性を増しながらも、水分が保持されているためジワっとジューシーに仕上がる。

 肉の美味しさが凝縮されるから、野宿の時、俺は断然炭火焼き派だ。



 焚火を熾して、焼けた表面から食べる方法を最初は取っていたし、ソレが一般的と言われるけれど、食中毒が怖いじゃない。

 安心して食べられないのは、食事とは言えない。

 料理番として、ソコは譲れない。



 木炭なんて「スキル」を使わずとも作れるので、大量に作って四次元ポシェットに突っ込んである。


 野宿をしている間にも作れなくはないけれど、時間が掛かるじゃない。

 何時間も火の番をして、完成間近! ってタイミングで魔物に襲われて炭がムダになってしまったら、俺の八つ当たりによって、その辺一帯の地形が変わってしまうかもしれないでしょ。



 王都(ディルクルム)の各家庭には紋様具が設置されてちいるから、火を使用する事が基本的には無い。

 だが鍛冶場なんかでは、炭と火の精霊の力、両方が必要になる。


 それに琥珀(こはく)に料理を教わったサージが、炭火焼きや燻製の魅力に取り憑かれてしまった。

 そのため、調理場のリフォームをさせられ、ある程度まとまった量の炭が必要になったのだ。

 

 意外と他にもチマチマと需要があるからと、街路樹の剪定や、王都(ディルクルム)周囲の管理をし始めた森で枝打ちする際に出た木材を使って、大量に作ったのである。



 お肉が美味しいのは、正義だからね。

 まだまだ成長期の俺としては、鍋ばかりでは飽きる事もあるので、作った炭を利用して、バーベキューをする時もあるのだ。



 さて、長々と語った光に関する講釈であるが、今回重要視すべきなのは、熱エネルギーである‘’赤外線‘’の方である。


 あのチンアナゴは、可視光によって敵を判断するとカノンは言っていた。

 だけどマグマだって、高温発光により可視光が放たれる。


 高温発光とは、化学反応の有無に関わらず、五二五度を境として発光を伴う現象だ。

 個体も液体も関係なく、大抵の物質は、温度の上昇と共に少しくすんだ赤色、白色、青色へと徐々に変化する。


 かつて白熱電球で利用されていた原理だね。


 今でも身近な高温発光は、太陽光だ。

 太陽が白熱した表面の高温発光が、太陽光として世界中の大地を照らしてくれている。



 マグマ溜りで溶けた岩達が、赤いのか白いのかは知らないが、確実に高温発光はしている。


 いちいち全方向に攻撃をしていたら、あのチンアナゴ達は疲れてしまうだろう。

 無意味だし。

 なのでアイツ等は、光全般に対して敵対行動を取るのでは無いと予測をした。



 では先程の稜霓(ろうげつ)が作り出した光と、高温発光したマグマでは何が違うのかと言うと、赤外線の有無ではないかと考えた。


 高温発光は、熱放射の一種だ。

 そして熱放射は、電磁波や赤外線も自然と伴うものである。



 対して稜霓(ろうげつ)の光球は、周辺を照らすためだけに作り出した、エネルギー消費量が抑えられた、かなりエコな仕様になっている。

 言うなれば、LEDランプのようなものかな。


 もちろん指定すれば光球も赤外線を発せるようになるが、今回はカノンが操作するからと、なるべく力を抑えて居た。

 なので発せられていたとしても、赤外線は極々微量だっただろう。


 カノンを慮ったが故の事故だったワケだ。



 先程の光球と同じ条件で作った物を火口に落としたら、中でド派手な音が響いた。


 次に赤外線搭載の光球を落とし、様子を見る。

 更に人間の体温と大体同じ、三六度の熱を帯びる光球を落とす。


 幾つもの光球を落とし、チンアナゴ達が何も仕掛けて来ないと確証を得るまでに、十分ほど費やした。



 その後霜華紋(フロストフラワー)を俺が唱えて、最初と同じ光球を落としても何の反応もない事を確認してから、再び内部に侵入した。



 腰抜けだとかビビりだとか言われたとしても、俺はさっきみたいな思い、二度としたくない。

 心臓に悪い事なんざ、起こらないに越したことはないのだ。


 充分過ぎる程の対抗策を行って、何が悪い。



 カノンに呆れられながらも、ようやく入ったマグマ溜まりは、先程とは様相が全く変わっていた。


 目に映る何もかもが凍てつく、銀世界。

 地面も天井も、魔物も全てが凍っていた。



 先行させた光球が煌々と照らし出すのは、昇華された水蒸気だ。

 颯茉そうまが空気を循環させているから、ダイヤモンドダストのようにはならないが、大小様々な氷の粒が煌めいていて、とても美しい。


 光源がひとつしか無いから、どちらかと言うとチンダル現象の方が近いかも。



「お前がやると、霜華紋(フロストフラワー)がこうなるのか」


「火の精霊じゃなく、氷の精霊(スティーリア)に頼んだから、余計かもね」


「ふむ……確かに、冷却ならば今後は氷の精霊(スティーリア)様に頼むのが筋になるのか」


 氷の精霊(スティーリア)が誕生する前は、温度に関する事は全部火の精霊(イグニス)達が請け負っていた。

 だがせっかく冷やす事に特化した精霊が居るのだから、ソチラに頼んだ方が、より効果の高い結果が得られる。


 今回みたいにね。


 ……まさか、ココまでキンッキンに冷えるとは思わなかったけど。



 軽く触れただけで、チンアナゴは手応えを感じる事すら無く、脆く崩れた。

 あんな脅威と思っていた魔物が、こんな呆気ない最期になるとは。


 精霊術って凄いね。



 初めて見る魔物だから、死骸の一部だけでも採集しておきたいと言われたので、四次元ポシェットをひっくり返して直接収納した。

 逆さまにしても中身が落ちてこないから、こういう時にはとっても便利だね。



 チンアナゴは触れば音もなく風に溶けてしまうが、裏を返せば、触れない限りはソコに生えたままだ。

 せっかくなので隅々まで観察させて貰う。


 戦闘時間が無くなった分、余裕が出来たからね。



 特殊な環境下に生息する魔物は、弱点が共通している事が多い。

 この先も霜華紋(フロストフラワー)を使って降りていけば、戦闘を避けられるだろう。



 ……妙だな」


 楽観的に考えていた俺の思考は、カノンの呟きによって終止符が打たれた。

 ハイハイ、世の中そんな甘くないですよね。


 知ってますよ。

 学びましたよ。


「カノンはさ、フラグを立てるのが趣味なの?」


「なんのことだ?

 妙なことがあったから、そう口にしただけだ」


 バカにされたとでも感じたのだろうか。

 ムッとした表情で抗議をして来る。


 だが俺が何か言う前に、まるで返事をするかのように突如、揺れだした地面が言葉を肯定する。


 ほれ見た事か。


「ちなみに聞くけど、その妙な事って言うは、コレと関係ありそう?」


「そうだな。

 お前が卑猥な名前で呼んでいたあの魔物だが、魔斑鰻(ヘテロファッガー)と言うそうだ。

 魔亀庭(テスフォルティ)に寄生すると、鑑定眼に出ている。

 だがその魔亀庭(テスフォルティ)の姿が、どこにも見えなかったから妙だと言ったのだ」


 ヒワイって何だよ。

 チンアナゴは漢字で書くと()穴子!

 チンは犬の名前から来てるんだぞ。


 エロと結び付ける、お前の思考回路の方が、余程ヒワイだってぇの。



 普段はOFFにしている鑑定眼を通して周囲を見れば、ナルホド、納得した。

 今揺れている地面が、チンアナゴ改め魔斑鰻(ヘテロファッガー)が寄生している、魔亀庭(テスフォルティ)というワケだ。



 理解した途端、揺れが酷くなる。

 地震ではなく、俺達が立っているのが、魔亀庭(テスフォルティ)の身体の一部だからなのだろう。

 慌てる事無く、二人とも杖を取り出し身構えた。



 もし地震だったのならば、もっとタチが悪かったので、魔物が動くなり暴れるなりしているのだと原因が分かっている分、心は落ち着いている。

 地震なら、噴火の予兆かと、身構えなければいけないじゃない。


 そうじゃないのだから、対処は十分に出来る。

 ようは、冷たいのに弱いんでしょ。


 何処からでも掛かって来いやぁ。



 心構えをすると同時に、大きな……とても大きい、黒目がちな巨大な目と視線がぶつかった。

 眼球だけで、俺の上半身はあるんじゃなかろうかと思うレベルで、デカい。



 あの、やっぱり寝ていて貰えるんなら、眠ってて貰えると、大変助かるのですが……


 後込(しりご)む俺にはお構い無しに、その巨眼の持ち主は重たそうに頭を持ち上げ、鼓膜が張り裂けんばかりの咆哮を放った。

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