神さま、雲を霞。
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火の精霊が眠っているサルーメン山は、標高六〇〇〇mを超える、かなり高く険しい山だ。
急勾配の尾根に、石や岩が積み重なった足元が不安定で歩きにくい斜面が続いている上、当然のように道中に小屋は無い。
通常ルートで登頂しようと思うと、相応の装備を整えて、何日も掛けて登らねばならない。
なので琥珀から内部への侵入に許可が出ると、俺達は風の精霊にお願いをして、山頂の火口部まで連れて行って貰った。
颯茉は俺達が移動している間に、火山内の有毒ガスを外に出してくれる役目がある。
アッチもコッチもとお願いをして、どちらかを疎かにされたら、俺達の命が危ない。
後でスネられるかもしれないが、他の精霊達に頼める内容なのだ。
外部委託しても、問題あるまい。
一昨日まで溶岩が流出していただけあって、標高は高くなっても、周囲の温度はかなり高いままだ。
運ばれるだけなので動いていないのに、汗が出てくる。
以前は隣の島に居ても、汗をかく間もなく蒸発して居たのだから、随分落ち着いたと言えるのだが。
暑いもんは暑い。
噴煙は落ち着き、視界が開けているのが有難い。
目指すべき場所が、一目で分かった。
見るからに足場が悪そうな山頂に、ポッカリと大きな穴が空いている。
上空から覗き込めば、当たり前の話ではあるのだが、中は真っ暗闇で、内部がどんな状況なのか、全く分からない。
かなり火口部が大きく開いているので、中に入る時に風と水の防護結界を三重で展開しても、引っ掛かる事無く侵入出来るだろう。
空気の入れ替えを常にしてくれると言っても、念には念を入れておきたい。
事前に話していた通り、風の精霊に有毒ガス避けを、浅葱に熱気避けを担当して貰い、自分で適温に保つための水の結界を更に張る。
その上でいつもの防護結界も張るから、正確に言うと四重になるのか。
厳重だな。
俺は臆病者だからね。
細心の注意を払うくらいで、丁度良いのだ。
この距離になると、眠って微弱になっていても、火の精霊がどの辺に居るのかが分かる。
火口部の、真下。
言葉にすれば簡単ではあるが、その火口部から随分地下に行かないと、彼には会えないらしい。
気配が随分と遠い。
果たして中は、一体どうなっているのだろうか。
確認をするため、稜霓にビー玉くらいの大きさの球体を作って貰った。
彼女が作ったソレは、直視したら目が潰れかねない光を発している。
光そのものではなく、物質として作り出した物なので、中に落とせば周囲が照らされて、中の様子がある程度分かる。
それに底に当たった音が返って来れば、どの程度の深さがあるのか、おおよそ把握出来る。
火口部の空気に、生命活動を妨げる要素が無いか確認をし、光球を中へ落とす。
……二、…………五、………………十、ちょっと待って。
空気抵抗があるとは言え、マジでどんだけ深いんだよ。
結局二十秒を経過しても、音は返って来なかった。
直線距離で、二km以上かぁ。
もしかして、水準点〇m地点まで行かなきゃいけないとか言うのかな?
それとも、地下まで行かなきゃいけない感じ??
颯茉の力を借りれないとなると、六km垂直に降りるだけでも一苦労しそうだ。
その他の風の精霊達だと、細かい指示が伝わりにくいんだよね。
それに皆だとなあなあで済ませてしまう霊力の譲渡も、加減が難しい。
ここまで来る道中も、もう少しスピードを出して欲しいとお願いしたら、霊力を渡しすぎてしまったのか、もう少しなんて曖昧な表現が悪かったのか、はたまたその両方か。
危うく、空気による摩擦で燃えかけた。
カノンには呆れられたが、考えてみれば、俺が力を借りる精霊って皆か、力の弱い微精霊しかいなかった。
だから無茶苦茶な術が発現された事が無かったのだろうが……
ヘタをすれば、危うく味方に殺される所だった。
加減を覚えないといけないな。
暴走させる度に、浅葱に指さして笑われるのも癪だし。
ロープで降りるか、風の精霊にお願いをするかならば、練習も兼ねて後者の方が良いと判断され、再び風をまとう事になった。
何か予期せぬ事が起きた際に、両手が自由ならば、対処も容易だしね。
カノンが先導し、直径にして五m程ある火口からゆっくり降下し、内部に入る。
今まではどこへ行くにしても、カノンが行った事のある場所ばかりだった。
今回はお互い、初めての場所になる。
慎重に行動しなければならない。
俺ではその慎重さが足りない上、何に気を付ければ良いのか判断する経験値が、圧倒的に不足している。
なのでカノンが先に行く事になったのだ。
先程の光源を落とした時に痛感したが、中は完全な真っ暗闇になる。
目を開けても一切の光が無い状況では、降りて行く際、上下左右が分からなくなる危険性が非常に高い。
稜霓に頼んで、今度は拳大の、目に優しい灯りを作って貰い、カノンに渡してある。
器用に周囲のアチコチを照らしながら、時間を掛けて下へと降る。
火山は最低、数時間は休眠状態を保てると琥珀から言われている。
俺の身を、保護者以上に心配する琥珀がそう言うのなら、その倍の時間は問題無いと見て良いだろう。
とは言え、想定していない事が起こるのが現実だ。
早く終わらせて、サッサとシャバに戻りたい。
なのでカノンには、もっと早く下まで降りて欲しい。
……上から蹴り落としてやろうか。
直線に降りて行く火山の入口から内部へと続く火道は、勢い良く噴き出すマグマによって溶けたためか、思いの外ツルツルとした岩壁が続いている。
その溶けた岩やら土やらの、成分の違いによるのだろう。
光に照らされて、様々な彩りを見せている。
観光なら自然が作り出す、視界いっぱいに広がる色とりどりのキャンバスを楽しめたのに。
生憎、群青や洋紅に輝く壁に見惚れる暇は無い。
二〇〇m程降りただろうか。
不意に視界が広がり、ドーム状の広間へと出た。
ココがひとつ目のマグマ溜りだろうか。
今まで通って来た場所とはうって変わって、ボコボコとした壁に、天井からは鍾乳石のように、冷えて固まったマグマが、ツララのように垂れ下がっている。
鍾乳石と違って、下の方には突起物が無いのが特徴だな。
……うん?
「何だ、アレ??」
鍾乳石やツララ石の類いとは違う突起物が、地面のアチコチから伸びている。
ソレが、動いた気がした。
気のせいと片付けるのには、見逃してはいけない違和感だ。
「探知には……、……っ!
臨戦態勢!」
探知には、引っ掛からなかったのだろう。
しかし身体強化により視力を上げ、カノンも同じ違和感を抱いたようだ。
そしてその違和感は、突如襲いかかってきたその突起物によって、現実のものとなった。
カノンに言われる前に、既にいつでも戦えるよう抜刀していたので、難なく初手の攻撃に対応する事が出来た。
……つもりで居た。
「ぬあぁっ!?
俺の森羅斬輝刀が!!」
「お前の剣、そんな名前だったのか……っと。
これは……なかなか、苦戦しそうだな」
呆れた声を放たずには居られなかったのだろうか。
そんなコトをする余裕があるなら、避ければ良かったのに。
カノンに向けられた攻撃は、全ての防護壁を貫通し、彼の髪を一束落とすと同時に、その先端を燃やした。
慌てず騒がず短剣を取り出し、毛先を切って放り捨てる。
タンパク質の焦げる、イヤな臭いが辺りに充満した。
だがそれ以上に俺の意識を支配するのは、愛刀の見るも無惨な姿だった。
ムダに科学的な知識があるために、想像力の限界があったのだろう。
地面から生えているヤツからの攻撃を弾いた愛刀は、その切っ先が溶けて消えていた。
刀と言えば玉鋼だろうと考えていたから、こんだけデロリと溶けたというのならば、先程のビームのような攻撃は、一〇〇〇度を超えて居た事になる。
タングステンででも作られていたと考えなきゃいけなかったかな!?
ソレでも溶けていたら、おおよそ三五〇〇度以上か。
恐ろしや。
「あの魔物、見た覚えは?」
「あるわけがない」
デスよね〜って言うか!
一昨日までマグマで満たされていた空間に、何で生き物がいるんだよ!?
有り得ねぇだろうが!!!
タンパク質で構成されていて、体内に、もっと言うなら細胞壁内に水分を一定数保持しているのが生物だ。
マグマの温度は六五〇~一三〇〇度。
水は一〇〇度で蒸発してしまうから、マグマの温度に耐えられる生物は、存在しない。
そもそもご覧の通り、金属ですら分子構造が保てないんだぞ。
どうやって炭素ベースの生物が、そんな高温の中活動出来ると言うのか。
そうは思うが、実際に目の前に居るのだから、面妖な現実を受け入れざるを得ない。
チンアナゴの如く、底部から生えているニョロニョロとした魔物は、侵入者である俺達を、自分の縄張りを荒らす敵と見なしているらしい。
初手の攻撃を防がれると思って居なかったのか、チャージするのに時間が掛かるのか、コチラに顔を向けたまま、ユラユラと警戒するようにその身をくねらせている。
危害さえ加えて来ないのなら、スルーするんだけどな。
お互いのために、そうしようよ。
だって宙に浮いた足場の無い状態で、あんな攻撃を何度も食らってたら、そのうちカノンの髪の毛が無くなってしまうじゃない。
何より、攻撃を弾いた方向にあった、天井も溶けた。
天井が落ちて来たり、火口部までの出入口が塞がれてしまったら、生き埋めになってタイムオーバーを迎えてマグマに溶けて消える事となる。
そうなれば、骨も残らないだろうな。
チンアナゴの口が、再びカパッと開かれた。
それも、底部に居るヤツら、全員の口が、一斉にだ。
「た、退避!
退避〜!!」
慌ててカノンの首根っこを掴んで、颯茉の力を借りて、火道を全速力で走り抜ける。
一直線にしか進まないのであろう攻撃は、一部天井や壁を溶かすに留まったが、そのうちの幾つかは、俺達を追ってまっすぐコチラに向かって来る。
「――氷霧の花よ、咲き乱れろ霜華紋」
なんかカノンが英単語を口にすると、変な感じするね!
急激に周囲の気温が下がり始め、空気中の水分が結晶化してフワフワと氷の花が幾つか出現する。
湖や河に出来る、水蒸気が空気によって冷やされ結晶化したものをフロストフラワーと言うが、コレは周囲の気温を操作し、強制的に温度を下げる術のようだ。
その副産物として、この花の形の氷が出来るんだね。
もし何も無い所から水を、氷を生成する術だったなら、俺がツッコミを入れる間もなく水蒸気爆発が起きて、二人共火口部からバラバラになって排出されていた事だろう。
風の精霊の風の防護壁を抜け、浅葱の防護壁にまで術の効果が及び始めた段階で、ようやく先程の魔物の攻撃に、変化が生じた。
俺達に迫るスピードが徐々に落ち、追うのを辞めた。
冷却され、固まったようだ。
「このまま一旦、外に出るぞ」
第二撃が来ないとも限らない。
体勢を立て直すため、一旦火口の外まで逃げる事になった。




