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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、不正する。

 まだ使い慣れていないせいなのか、それとも片目だから俺のソレより性能が劣るからなのか。


「カノン、自分の目に頼らないで、鑑定眼(右眼)を使えよ」


「……お前はよく、鑑定眼をそんな日常的に使えるな。

 俺には情報が多過ぎて、頭痛がするのだが」


「そんなもん、慣れだよ、慣れ。

 集中させる霊力量を絞れば、ある程度は抑えられるだろ?

 あとは……イメージだよね。

 どんな情報が欲しいのか、具体的に想像すんの」


 俺はプロフィール帳やらゲームのステータス画面やら、他にも図鑑や百科事典のようなものを思い浮かべている。

 表示される項目を統一しておけば、その都度欲しい情報がどこに表示されるのか、注目すべき場所を絞れるので、混乱せずに済む。



 カノンはザカザカと先に進んでいた足を止め、左目を手で覆い隠して、周囲を見渡した。

 時折首を傾げるのは、霊力量を少なくし過ぎて、欲しい情報が得られなかったからなのかな?


 片目を隠すのはウインクしているのを見られたく無いからなのか、そもそもウインクが出来ないからなのか。


 どっちにしても、きっとマヌケな顔をしている事だろう。

 想像するだけでウケるから、是非とも見たいのだが。


 前に回り込んで見上げると、既に鑑定眼を使い終えたのか、ちょうど手を顔から離す所だった。

 ちぇっ。



「特に変わった所は見受けられないが……

 おまえの眼には、何が視えているのだ?」


「ガオケレナの混雑種って、書いてない?

 この葉っぱとか、あの木とか」


「特には。

 見た目も、普通の 女無天(メンタ) 耶悉茗(フェルシア)に見えるが」


 言って小ぶりの葉を一枚千切って、おもむろに口の中に放り込んだ。

 安全確認が出来ていないものを、食べるなよ。


 イヤ、安全なのは鑑定眼で確認したのかもしれないけどさ。


「……大丈夫なの?」


「あぁ、旬の時期から外れているから香りは薄いが、間違いなく 女無天(メンタ)だ」


「イヤ、そうじゃなくて……」


「?

 なんだ?

 言いたいことがあるなら、はっきり言え」


 訝しげに顔を歪めるその口の中には、既に食べた葉は無いようだ。

 もう飲み下してしまったのか。


 なんという事だ……


「……魔物のオシッコかかってたら、ヤじゃね?」


「ぶっ!」


 指摘されてようやくその考えに至ったのか、カノンは勢い良く噴き出した後、聖水を取り出してメチャクチャ口をゆすいだ。

 うがいまでしている。


 なんなら、吐いても良いよ。

 アッチ向いてるし。



 人間って不思議だよね。

 さっきまで平然とモグモグしていたのに、汚いものだと指摘した途端、嫌悪をあらわにするんだもの。


 実際に魔物が尿をかけた現場なんて、誰も見ていないのに。


 魔物の尿は、別に人体に有害では無い。

 だが排泄物だから、掛かっていたら気分的にイヤ、というだけの話しだ。



 仮に尿が付いているからと、洗って汚れが取れたとしても、気分的な穢れは、付着した時点で取り除く事は出来ない。

 余程何度もキレイな水で繰り返し洗わない限り、俺はそこら辺の野草を口に入れたいとは、思わないな。


 だって俺、文字通りの温室育ちだもの。



 今更な話だが、食事当番が基本的に俺で良かった。

 そうじゃなければ、何も気にしていないカノン達が、ろくに洗いもせずに食材を使っていた可能性がある。


 一応、瘴気を除去するために一度は洗うのが基本ではあるが、ソレはあくまで瘴気を払う行為であって、洗浄ではない。

 聖水に含まれている霊力に問題が無い限り、桶に張った同じ水を使い続けるわけだ。



 カノンなんて、水を出す程度の霊力を惜しむ必要も無かっただろうに。

 俺なんて、ダバダバと流水で洗うぞ。



 カノンは回復薬作りが好きだし得意だけれど、医者ではない。


 薬草に対してはソコまでする? ってレベルで気を使うのに、それ以外には無頓着だ。

 俺と一緒に過ごすようになるまで、栄養も衛生も、何も考えない生活を送っていたもんな。



 手洗いうがいのような、最低限の衛生管理だけでも、叩き込んで置くべきだろうか。


 ……だから一緒に行動していたのに、カノンとアルベルトの二人だけが病気に掛かったとか、言わないよな。



 鑑定眼の使い方講座、という程のものでは無いけれど、闇の精霊(テネブラエ)が好き勝手にアレコレ表示させたら困る場合、俺はどうしているのかを教えながら、その辺に生えている草や、落ちている木の枝を、サンプルとして採集した。


 この世界においても、地球における分類ほど細かくは無いが、やはりある程度植物にしても魔物にしても、似たもの同士で区分したり、体系付けたりしているそうだ。

 そして全く別の種類同士が交配し、異常が出現する事なく、次世代が誕生するなんて事は、今まで確認されなかったらしい。



 カノンが手作業で、薬草同士を交配させられないか、実験をした事があったそうだ。

 それこそ、先程食べた 女無天(メンタ)が良い例だ。


  女無天(メンタ)は耐暑性・耐寒性共に併せ持ち、多少の瘴気ならものともせず、魔草化せずに成長を続け繁殖する、かなり強い薬草だ。


 薬効として、胃腸の働きを助け食欲不振を解消し、排尿を助けるため解熱効果が高い。

 暑い地域では熱中症予防のため、乾燥させたお茶が好んで飲まれている。



 その 女無天(メンタ)だが、余りにも強すぎるため、近似種の植物を取って食う。


 ムシャムシャ咀嚼をするのではなく、交配した次世代は交雑種が生まれるのだが、それ以降に発生するのは、全て元の 女無天(メンタ)になるのだ。


 二代目はに交雑種、三代目に 女無天(メンタ)

 ソコでまた別の品種と混ざれば四代目は交雑種、五代目にはまた 女無天(メンタ)となる。


 必ず隔世代ごとに 女無天(メンタ)が発生するんだよね。


 しかも繁殖力が強いので、取り込まれた他の草の繁殖地は、全て交雑種が誕生した後、 女無天(メンタ)に置き換わる。

 だから、取って喰う、という表現が使われる。


 喰われないのは、 女無天(メンタ)と余程遠い品種か、 女無天(メンタ)よりも強い品種になる。

 つまりこの辺は、 女無天(メンタ)とその他の植物達との陣地争いの激戦区って事だね。



  女無天(メンタ)が新たな要素を獲得し、強い品種に成長するなら生物として理解出来るのだが、昔から変わらないそうだ。


 ……って言っても、外見が変わらないだけかもしれないけどね。

 なにせカノンは、ガオケレナと交雑した 女無天(メンタ)をスルーしたし。



 自分の鑑定眼だとやはり書かれないし、スーッと鼻の通りがよくなる爽快感のある香りも、苦味を伴う味も、通常の 女無天(メンタ)と同じだと言って、なかなか信じてくれないのだが。

 「闇の精霊(テネブラエ)がウソを吐くとでも?」と言ったら黙ったが。


 聞き入れてくれたのは良いのだが、俺の言葉よりも、あのオッサンを信用するのは腹立たしいな。



「こんなに集めて、何をするのだ?」


「生物は遺伝子って情報を、それぞれ漏れなく持ってるって話しただろ?」


「ああ、性質や特徴のような、それぞれの生物らしさを形作る、設計図のようなものだと言っていたか」


「そうそう」


 細胞が分裂する際に見られるのが染色体。

 通常二三対、四六本ある。


 俺の場合は性染色体異常があるので、本数が変わるのだが……

 そういうイレギュラーなのは、この際置いておこう。



 その染色体はヒストンというタンパク質にデオキシリボ核酸――DNAが巻き付き折り畳まれ、棒状になって束ねられている。

 DNAは二本の細い糸が螺旋状に捩れた構造をしており、その内側に、四種類の塩基がハシゴ状に並んでいる。


 アデニン・チミン・グアニン・シトシンの四種類ね。



 人間なら塩基数は、約三〇億個のペアで構成されている。


 個人による違いは、だいたい〇.一%程かな。

 多くても、〇.四%がせいぜいと言われている。


 その程度? と思うかもしれないが、約一%違うとチンパンジーに、約五〇%違うとバナナになってしまう。

 どちらかと言うと、ヒトはバナナと約五〇%相同遺伝子を持っている、と表現すべきか。



 その程度の僅かな差かと思うかもしれないが、共通の祖先を持っているのだから、ある意味当然と言える。


 そしその遺伝子の違いは、相違点で見ればたかだか一%未満の微々たる差でしかない。

 だが時間で考えると、何千万、何十億という途方もない長い時をかけて作られた差になる。


  時間の距離で考えると、それだけ差が開いているのだ。



 遺伝子情報は、先に挙げたA・T・G・C四つの並び順で決まり、遺伝子は人間の身体ならば、二万個程ある。


 生物の個体の維持、繁殖等の生命活動に必要な遺伝情報を、カノンには説明していないが‘’ゲノム‘’と呼ぶ。



 そのゲノムを解析をすれば、ガオケレナを復原する事が可能なのではないかと思ったのだよ。


 だって、絶対探すの大変じゃん。

 現生種が残ってるかも分からないんだし。



 そうなると、サンプルはあればある程良い。

 より正確に、ガオケレナを再現出来るからね。



 ゲノムDNAを抽出したり、ショットガンクローンを作製したりする設備は、こんな異世界の離島にあるはずが無い。

 当然、シーケンサもキャピラリも無い。

 遺伝子領域を推定するためのパソコンすら無い。


 無い無い尽くしの中、ではどうやってゲノム解析をするのかと言えば、「知識」を使用する。



 俺の脳には「知識」にアクセスする為の装置が埋め込まれている。

 「知識」とは、ようは施設全般の電子系統を制御していたマザーコンピューター、その機能の一部だ。


 ソコに闇の精霊(テネブラエ)の能力を使い、俺が考えたり意識したりする余地を与えず、直で情報を送る。

 そしてガオケレナのゲノムを再現して貰い、俺が「スキル」で創る。



 自力でやらねぇのかよ、と思うかもしれないが、ひとつの植物が持つゲノムあたりのDNA量は、最小のシロイヌナズナですら一億三千万塩基だぞ。

 カラマツだと、人間を遥かに凌駕する一三五億を超える。


 差の幅はデカいが、単位がソレだ。

 何が言いたいかって、人間が暗算出来るような数じゃないって話。



 更に、そのヘタすりゃ何億もあるようなDNAの中から、幾つもの種類の草花に共通している配列を導き出して、再構成しなければならない。


 何十年もかければ人力でもどうにか出来るだろうが、生憎、今俺に与えられた自由時間は一日だけだ。


 だからPCに丸投げする。



 頭を指でトントンと叩く動作に、意味はない。

 単に今からやるぞ〜と気持ちを切り替えるための、儀式のようなものだ。


 カノンに一切身動きが取れなくなるし、返答も出来なくなると告げて、植物と向き合う。



 遺伝子情報まで表示させるような鑑定眼の使い方をした事が無いから、まずはどの程度の霊力が必要なのかを掴まないとだな。


 徐々に出力を上げていき、頭痛を覚えた所で、一旦休む。


 肉眼では見えないものを見ようとしているのだ。

 しかも、この世界においては、完全なるオーバーテクノロジーとなる。

 なかなか生半可な量じゃ、足りないらしい。


 霊力喰い虫(テネブラエ)め。



 まぁ、だいたい通常使用時と、今直前まで見ていたデータ量の差から、どれくらい霊力を込めれば良いのか、概算は分かった。

 思っていた以上に霊力を消耗するが、今の俺なら大丈夫だろ。



 ふぅ、と溜息を吐いて、目を開くと同時に視えた情報を等閑するように、そのまま「知識」へと転送する。


 植物はゲノムが複雑なので、データが山程あるヒトよりも、解析に少々時間がかかる。

 復元となると、更に時間がかかる。


 脳ミソが焼き切れやしないか心配になるが……

 無心に、ひたすら並んだ植物の情報を「知識」に送った。



 一時間くらい、経過しただろうか。

 頭を使い過ぎて、メチャクチャ腹が減った。


 最後のひと仕事だけは、しないとな。

 そうじゃないと、やった意味が無くなってしまう。


「はい、あげる」


「何だ、これは?」


「わかんない。

 遺伝子的には、コレがガオケレナって事になる」


「……この、奇っ怪な形と色のものが?」


「確かに、けったいな見た目してるよね」


 ケラケラ笑いながら、夢魔の秘宝と言われたガオケレナをカノンに押し付けた。



 細長い花の色は、中央の深紅から先端の紫色を帯びたピンクへと変わるグラデーション。

 あからさまに男性器にしか見えないフォルムをした赤黒い雄しべが、アワビのようなヒダが付いた子房から伸びている。


 見た目が卑猥過ぎて、持っていたくない。

 直視もしたくない。


 誰かモザイク処理してって言いたい。



「……これがどうやって、他の植物や木と混ざるのだ?」


「ソレは夢魔(イシュク)に聞かない限り、分かんないよ。

 とりあえず、追加で創るのは大変だから、しまっておけば?」


「何故、俺が持たねばならない?」


「……ほら、薬草として利用出来るかもしれないじゃん?

 いつでも研究出来るようにっていう、親切心だよ」


 余りにもウソ臭い笑顔を作り過ぎたのだろうか。


 ジト目を向けられたかと思えば、胡散臭い程キラキラした笑みを浮かべられた。

 その直後、有無を言わさず俺の四次元ポシェットにガオケレナが突っ込まれる。


「ぎゃ〜!

 ンなもん入れんな!!

 穢れる!!!」


「やはり見た目のせいではないか!

 俺に押し付けようとするな!」


 ガオケレナの見た目以上に醜い争いはその後も続き、結局ジャンケンの結果、カノンが持つ事となった。


 ふっ。

 なんとか勝ったぜ。


 やっぱり、持つべきものは(クロノス)だよね。

 手を出す瞬間時間を止めて、何を出すのか振り下ろされた手の形を盗み見して勝ちました。


 完全なインチキです!

 バレなきゃ良いのさ!!

 はっはっは〜

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