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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、提案する。

 目眩を起こすハプニングこそ起こったものの、想定以上に事は上手く進んだ。


 有翼乙女(ハルピュイア)の女王の魔石を三つ回収し、ソレには劣るが大きめの魔石が三十個。

 中くらいのものが一〇〇個以上、小さいものとなると、数えるのもバカバカしくなるくらいに、山盛り一杯回収した。



 ソレだけの量が集まると、なんだか不穏なオーラを放っている気配がして、近くに居続けると、血反吐を吐きかねない程に胃の痛みを覚える。

 実際、こんな瘴気を放つモノの近くにずっと居たら、肉体が汚染されてしまいかねない。


 俺やカノンなんかは、意識せずとも霊力の制御が出来るけれど、一般的な人は、意識をしても魔力を押し返せるだけの霊力が無くて、身体を蝕まれてしまいそうだよな。

 まずはこの魔力を抑え込む道具を作る所から、始めなくちゃいけないね。



 まぁ、一旦は四次元ポシェットの中に放り込んで置くけれど。

 そうすれば無害だし。



 ……入れ物に入れてからの方が良いか。


 四次元ポシェットの中は、時の精霊(クロノス)の管理下にある。


 時間の流れが止まるのだから、魔力がポシェットの中身に影響を及ぼす事は無いだろう。

 だけど空間を維持し続けるのが、時の精霊(クロノス)の負担になるのなら、ソレは避けるべきだ。



 せっかくカノンが分別してくれたので、大きさ別に容器を創って収納してから、改めてポシェットにしまった。

 容器が大きくなるのを避けるため、幾つか分割したので、カノンと分配して持つ事にした。



 コレでカノンも、いつでも魔石の実験が出来るようになったワケだ。

 夜な夜な見張りをすると称して、身体を休めずに実験をしてしまわないかが心配だな。


 野宿でも、コイツならやりかねない。



 有翼乙女(ハルピュイア)の巣が形成された島と、その周辺の島々は、見事に植物以外の生命が全て死に絶えてしまった。

 植物ですら、巣の素材に利用されたモノは、瘴気による腐食が酷く、物によっては朽ちて枯れ、場合によっては根腐れを起こしていた。



 そのまま放置したら、地面まで瘴気に侵食されてしまう。


 聖水の雨による浄化はしたけれど、植物の内部に浸透するのには時間がかかるからね。

 植物の内部を汚染するのが先か、浄化されるのが先か。


 ソレは賭けでしかない。



 コルク層の外樹皮部分が汚染されただけならば、まだ賭けに乗る価値はあるだろう。

 復活の方に分がある。


 だが大抵の木々は、内樹皮の更に奥の導管まで、瘴気に侵されていた。

 導管は、人間で言うところの血管に当たる。


 見た目の外傷は一部だが、導管を通して瘴気は樹木全体に回り、中はとうに腐ってしまっているだろう。

 運に任せるのは、余りにも無責任というものだ。



 仕方が無いので、見付けられたものは全て根こそぎ焼き払った。

 有翼乙女(ハルピュイア)の殲滅よりも余程時間が掛かってしまったが、ココで手を抜けば、この島は遠くない未来に死んでしまう。


 鳥型の魔物が植物の種を運んでも、泳いで来た魔物が巣を作ろうとしても、この世界の魔物である以上、ニブルヘイムの要素に汚染された環境では、殆どは生きて行けない。

 適応するモノも居るだろうが……ソレこそ、賭けにしかならない。


 瘴気の質が違うんだよな。

 毒素が強過ぎる。



 そんな瘴気が鬱滞した状態になれば、次元の裂け目も開きやすくなる。


 つまり後回しにしたり、手を抜いたりした時の方が、面倒臭くなる。

 良い事なんてひとつも無いので、浄化は徹底的にしなければならない。



 得は無くとも、将来的に自分の身に降りかかるであろう損を無くす為なら、俺は動ける人間なのだなと学んだ。

 命令以外では、誰かの得になる事なら動けると認識していたのだけれど、それ以外でも動けるだな〜と思った次第だ。



 まぁ、考えようによっては、こういう世界にとってマイナスになり得る事の始末は、今までは全部精霊神の皆と、カノンがやっていた事だ。

 その手助けをしていると考えると、皆の手間を肩代わりしているのだし、皆の得にはなるんだよな。


 ソコまで意識せずにやっていたな。

 この後は、より張り切って浄化作業が出来るというものだ。



 火の精霊(イグニス)を起こしに行く前の寄り道にしては、少々時間が掛かってしまったが、お陰で周辺のトルリダ諸島に蔓延っていた脅威は、コレで綺麗サッパリ無くなった。

 年末の大掃除後のような清々しさを感じるね。



「伐採する基準を、厳しくしすぎただろうか……」


「うん、見事に丸坊主だよね」


 周辺に見える島は、有翼乙女(ハルピュイア)の魔の手が及んだ場所か否か、非常に分かりやすくなっていた。

 遠くの島々は緑色に霞んで見えるのだが、近くの島は、まぁ、自生していた木々も草花も、その大半が見事に汚染されていた。


 瘴気による影響を少なからず受けた植物は、全て燃やし浄化し土に埋めて処分した。

 そのため、見事に土が剥き出しになって、茶色くなっている。


 コケも雑草も、何もかもダメになっていたからなぁ。

 仕方が無い。



 俺がやる気を出してしまったがために、カノンも遠慮せず基準を決めたため、例え僅かな瘴気でも、一切見逃される事が無かった。

 見た目の傷がどんな些細なものだったとしても、導管がヤラれてしまっていては、年月をかけて汚染は進む。

 放置されれば、汚染は連鎖し自然が死ぬ。


 結果としては、良かったと言える。

 見栄えは、最悪だけどな。



「実験して良いならさ、何も無い島、使って良いかな?」


「何をするかによる」


 ……ですよね〜。

 二つ返事で許可はくれないか。



「地球――カノンの両親達が生まれ育った世界の動植物が、この世界に適応するか、試してみたいんだ」


「その意義に納得出来たら、アリアへの報告はしてやろう」


 カノンを言いくるめられたら、国王への事後報告をしてあげるって意味だよね。

 ソレはつまり、やって良しという事だ。


 ならば全力でプレゼンしなければならないな!



 とはいえカノンは根っからの研究者気質で、好奇心の塊と言える。

 聞く体勢に入っているという事は、既に興味を持っているという事だ。

 堕ちるのに、さして時間は掛からない。



 ただ霊力や魔力が無い世界に自生していた動植物と魔物達の違いを、何と説明すべきかが難しい。


 ‘’動物‘’という存在を知らないんだもんな。

 愛玩動物という概念が、理解出来ないだろうしなぁ……



 スライムを創って愛でていた時も、奇異な目で見られたし。


 イヤ、アレは魔物だからか?

 それともゴミや排泄物を処理する益虫ならぬ益魔物を、利用するではなく、飼うという概念が理解に及ばなかったが故の視線だったのか??


 どっちもか。



 この世界からしてみれば、動物は異世界の生物になる。

 生態系が乱れるリスクもあるのに、やってみようと思った、そのキッカケが、実はある。


 (オルトゥス)で地球の農作物を、コッチの世界に適応するよう遺伝子を改変して創って植えたのだが、存外アッサリと次世代の種が取れたのだ。

 その種が育つのか試してみたくて、温室を創って植えてみたが……ちゃんと、育ったし収穫出来たし、勿論食べれたし美味しかった。


 地球の、特に品種改良された野菜や果物は、栄養価が高く、何より美味しい。

 更に地球の品種と交配させれば、もっと美味しいお野菜が食べられるのではと考えた。



 育てる農地が霊力に満たされていれば、その成長速度を早め、実りも豊かになる。

 純粋なこの世界の農作物も同様に、成長は早くなる。


 だがこの世界に順応するように遺伝子改変をして創った地球の作物と比較した時に、その違いは顕著に出た。


 地球産の品種は、霊力に影響を受けやすい。

 倍速とは言わないが、在来種が花を咲かせる頃には、既に収穫段階になっていた。



 では魔力や瘴気に対してはどうだろうかと思えば、コレが全然害が出なかったのだ。

 この世界の作物は、土地が瘴気にまみれていると、全然育たないのに。



 ならば地球の作物に少しづつでも全部置き換えていけば良いのではないかと思えば、そうもいかない。

 地球の作物は、日照時間や水、土の栄養に出来が左右される。


 対してコチラの世界の作物は、その辺の科学的な作用は殆ど影響しなかった。



 なので普及するなら、それぞれの良い所を受け継いだ、ハイブリッドな品種をするべきである。

 そう結論付けた。



 コレが自然の植物なら自浄作用があると言うなら、話は別だったんだけどね。


 瘴気に汚染され続けると、朽ちるか、耐性をつけて魔木や魔草が誕生してしまう。


 その利用価値は、今の所無い。

 害は沢山あるけれど。


 生態系への影響も出るし、出来れば自然に生えている木々や草花も、瘴気に対する抵抗力を上げて欲しいと考えている。



 魔物もそうだ。


 王都(ディルクルム)滞在中に届いた手紙の中に、興味深い内容が書かれているものがあった。

 魔馬(カバルス)妖馬(エクス)を調教し、飼い慣らして品種改良を続け、常用馬として利用している、トルモ町の先代町長さんからのものだ。



 手紙の内容は、俺が遺伝子改変し馬の遺伝子に近付けた魔馬(カバルス)達と、元々飼っていた魔馬(カバルス)を掛け合わせた仔馬が産まれたという報告だった。


 遺伝子操作しても、無事に誕生するんだ。

 そもそも馬の基準で言うなら、妊娠期間って一年近くあるはずだよな、と思ったのだが、ソコは魔物基準となるので、半分以下の一三〇日前後で生まれて来るらしい。


 特にその妊娠期間には、問題は無かったそうだ。

 敢えて言うなら、全体的に少し長かったかな、程度のものだった。



 驚く所は長めの妊娠期間ではない。

 どの仔馬も非常に大人しく、人に懐き言う事をよく聞く、良馬ばかりが生まれたのだと言う。



 どうしても魔物は野性的な本能が強く、産まれたばかりの赤子でも、人を襲おうと衝動的な行動を起こす。

 人が用意した水もエサも、根気強く付き合わなければ口に入れようとしないし、人間が触れられるようになるのに、随分と時間が掛かる。


 通常は。



 その苦労が全然要らなかったと、余程興奮して書いたのだろう。

 踊った筆跡の文字で、手紙が埋め尽くされていた。



 植物と同じように、地球産の動物が魔力や瘴気に対する抵抗力が強いのであれば、と仮定するならば。

 全ての魔物を捕獲して遺伝子操作するのは難しいが、少しずつでも変えて行ければ、魔物も、人の良き隣人のような立場になるのではないか。

 そう思った。



 まぁ、ヒグマやアナコンダのように、人をエサと認識して襲ってくる動物は、地球にも沢山居たけどね。

 でもヒグマは真空波を放って来ないし、アナコンダは猛毒の霧を吐いたりシッポの先に毒針を仕込んでいたりしていないもの!


 凶悪さで言うなら、この世界の魔物は段違いである。


 大きさも、地球の動物なんてミニチュアサイズと言える。

 ヒグマは大きくても三m程だけど、大魔熊(ペンマウルス)は平均で五mだもの。


 話をいくらか盛っているとは思うが、目撃例では十mを超す巨体を持つ個体が観測されているとか。

 ヒグマですら、プチっと潰されそうだよね。



 よく考えなくても、よくもまぁ、この世界の人達って、そんなバケモノ共と肉弾戦なんてしようと思うよね。


 イヤ、剣や弓も使うけどさ。

 リーチを考えても、ムリがない?



 銃火器類で遠距離攻撃したとしても、致命傷を与える前にコッチに猛スピードで近付いて来て、殴って殺されてTheENDになるのがオチじゃない??


 精霊術を使っても、同じ事が言えると思うんだよね。

 俺みたいに底無し状態で霊力があるならまだしも、総量と威力を考えながら戦わなきゃいけないワケじゃん。


 命が幾つあっても足りない気がする。


 ……だから人間の数が、ドンドン減って居るのだろうけれど。

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