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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、思案する。

 本日の知見。

 クズはどこまで行っても、クズである。


 子供の目の前で母親を殺すとか、ナニ考えてんだ?

 あのオッサン??



 俺の中でオッサン扱いするヤツのことごとくがクズなせいで、世の中のオッサンと呼ばれる人達の株が直角に下落しているぞ。

 責任を取れ、オッサン。


 せっかくオッサン代表だった闇の精霊(テネブラエ)が、世界の為、人の為に今は苦労しているのだと聞いて、底辺を横這い状態だった株が、ほんの少し上昇していたと言うのに。

 ホント、ロクでもねぇ。



 余程ファンチョから与えられた恐怖が根深いのだろう。

 幾つ言葉を重ねても、ファウノは決してこの事に関して言葉を口にはせず、頷くか、首を横に振るかしかしなかった。


 だが幾つかの、ハイ・イイエで答えられる、閉じた質問を重ねて、その時の状況が多少分かった。



 メリディー街が襲われる前に、魔物襲来の警鐘が鳴った。

 この時即座に海に避難をした人々は、ピスカ街へと海路で向かい、現在現地で保護をされている。



 ケガをしていたのか、持病があったか。

 何らかの理由で避難に手こずったファウノの母親は、子供すら置いて我先に逃げようとするファンチョと、口論になった。


 その際、激昂したファンチョが母親を殴るか突き飛ばすかをして、母親はバランスを崩して転倒。

 駆け寄ったファウノの目には、血溜まりに沈んだ母親が写っていた。


 恐らく、倒れた時に家具にぶつかって、頭部から出血したのだろうと思われる。



 何の反応も示さなくなった母親を置いて逃げようとするファンチョを、ファウノは止めた。

 殺人が犯罪である事は知っていたファウノは、自警団に言うと弾糾した。


 しかしファンチョは母親に泣いて縋る妹を盾に取り、ファウノに今見た事を誰にも言うなと脅した。

 そして一緒に着いてくるように命令をして、母親はその場に放置。



 最初はラファスを担いで逃げていたファンチョは、周囲に誰も居ない事を確認した後、途中でソレを放棄。

 ファウノに押し付け、サッサと一人でピスカ街へと向かってしまう。


 走ってなんとか着いて行ったファウノは、ラファスを担いだままでは、どんどん引き離されてしまい、やがて精も根も尽き果て、倒れ、俺が助けるに至った。



 ……あのオッサン、

 ホント助けなきゃ良かった。



 一目見ただけで、悪人や外道か分かるようにハッキリと顔に「私は極悪非道の無頼漢です」と書いて置いて欲しいものだ。

 本人にその自覚が無かったら、名乗り上げる事はしないか。


 悪事をひとつ重ねる毎に、精霊がバツ印でも付けてくれれば良いのに。

 どの程度の悪事でバツを付けるのかは、精霊の采配で良いからさ。



 恐怖が支配されてるとは言え、ファンチョ本人がココに居ないのにも関わらず、ここまで頑なに約束を守れるのだ。


 ソレならば「墓まで持って行け」と約束さえ交わせば、コレから俺が何をしようとも、ファウノは誰にも打ち明けず、死ぬまで隠し通すだろう。



「ファウノ。

 お前が言った願いだが、母親の状態を見てみないと、出来るか否か、正直分からない」


 想定出来る状況は、五つ。

 ファウノが理解したかどうか、様子を見ながら説明をした。



 人差し指を一本立てる。


 もし母親が生きていたのなら、ファウノやラファスにそうしたように、完全回復をさせると約束をした。


 最も楽で、平和的にファウノの望みを叶えられるパターンだ。



 ファンチョの中で、既に三人共死んでいる事になっているだろう。

 この場合ならば、ファンチョの行いを全て水に流し、忘れて、別の地――王都(ディルクルム)ででも、幸せに仲良く暮らしてくれれば良いと思う。



 中指を更に立てて次に言ったのは、死んでから、さほど時間が経過していなかった場合の事だ。


 人間の魂は、次の生へと繋げるべく、精霊が輪廻へと運ぶ。

 死を自覚し受け入れ、生前世話になった者達との別れを済ませるのに、おおよそ三日の猶予が与えられ、その後昇天する。


 その前の段階ならば、この季節だ。

 遺体が腐っている事は無いし、魂を肉体に戻した後に修復するなり、肉体の時間を巻き戻してから魂を戻すなりして、固定をすれば生き返る。



 ただしこの場合、どんな反動が起こるのかが、まだ分かって居ない。


 魔物のスタンピートに巻き込まれた人達を、死者の蘇生と分からずに復活させた事があった。

 ただ出来るからと、イタズラに死者を弄んでしまった、この世界に来て俺が最初に犯したやらかしだ。



 結果としては感謝されたし、そのトルモ町の代表から定期的に(オルトゥス)に届けられた手紙には、その人達の異変は特に書かれて居なかった。

 今の所問題は起きていないのだろうが、ソレが今後この先、該当人物達全員が天寿を全うするまで続くのかが、不透明なままだ。


 共に行動をしていた間は、飲み食べ眠り、笑い狩りをし何の問題も無いようには見えた。


 だが長期的に見た時に、子供を作れるのか、そもそも老いるのか。

 そういう生物としての営みが滞る事なく可能なのかは、何十年と経過しないと分からない。



 だからこの方法を取る場合、リスクをキチンと理解して置かなければならない。

 そして復活させた時、母親が黄泉返りを拒絶した場合には、その気持ちを汲まねばならない事も、受け入れる覚悟をさせなければならない。


 想像するのが難しいようで、地面にガリガリと絵を描いて説明して、ようやく、渋い顔をしながらも頷いた。

 母親が生き返る事を拒否する可能性を、思い描きたく無いのが、透けて見える。



 殺されるっていうのは、かなりショッキングな出来事だからね。


 あんな思い、もう二度としたくない。


 そう思うだろうと想像出来てしまうのは、俺が一度死んでいるからなのだろうなぁ。

 死にかけた事はあっても、死んだ事の無いファウノには、想像出来ないのだろう。


 ラファスが母親に執着している様子からして、母親は愛情を注いで育ててくれたのだろうし、自分達が望めば、生き返る事を拒否するなんて有り得ない。

 そう考えているのかもしれない。



 みっつ目は魂が既にこの世に無く、肉体は万全な状態で存在していた場合だ。


 その場合、器は確かにファウノの母親になるのだが、中身は全くの別人になる。



 流石に悪霊(マイニズ)を憑依させるワケにはいかないので、そこら辺にいる低位の精霊を入れる事になるかな。

 樹の妖精(ドリュアス)みたいな存在になるのだろうか。


 沢山の人間を見て来ている、長生きしている精霊が魂の代わりになってくれれば、願えばソレっぽい演技はしてくれる。

 だが当然中身が違うので、大衆的な‘’母親‘’らしい事は出来ても、‘’ファウノのお母さん‘’らしい事は出来ない。


 違和感から拒絶したくなった時、家族ごっこをしてくれた精霊から、どんな仕打ちを受けるのか、考えたら怖いよね。



 イヤ、精霊は優しいから、怒りがファウノに向かう事は無いか。

 上手く出来なかった自分を責めて自壊をされたそうだから、俺の寝覚めが悪くなるし、コレは選んで欲しくない。



 四つめは、魂は留まって居るが、肉体の損傷が激しかったり、そもそも存在しなかった場合だ。


 修復不能な状態の肉体があったのなら、まぁ根性を出して、時の精霊(クロノス)に怒られながら時間の巻き戻しをすれば、キレイな肉体を取り戻せる。

 損傷度合いによっては、かなり霊力消費がキツい事になるが。


 ソレでも、何とかなる。



 だが骨の一片すら残らず、魔物に喰われてしまっていたら、どうにもならない。


 一応「スキル」で肉の器を創る事自体は可能だが、俺はファウノの母親を見た事が無い。

 ファウノの記憶を覗いて、ある程度の再現なら出来るけれど、ソレってファウノの主観が入ったイメージ映像だからね。


 現実の母親との乖離は生じてしまう。


 他の家族や友人の記憶を読んで、サンプルを増やせば限りなく本人に似せられる。

 だが似るだけで、本人にはやはりなり得ない。



 五つ目が、魂も、肉体も、全て揃わなかった時だ。

 正直、約束を反故にする事になるが、諦めて欲しいと願わずには居られない。



 イヤ、ムリをすれば一応は可能だよ?

 だって俺、凄いし。


 その凄さを自画自賛出来る語彙力が無いのが非常に残念でならないが、能力だけはムダに高いからね。



 今ピスカ街に避難した人や、空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)の上に保護した人達。

 まだ回収されずに横たわっている状態の人も巻き込むし、なんなら最悪、エリアール街で倒した女王も含めた有翼乙女(ハルピュイア)達が復活する事になるが。



 ようは、メリディー街全域の時間を丸ごと、ファウノの母親が生きていた時間まで巻き戻して、死ぬ前に俺が干渉して助ければ良い。


 関わっている人間の数がハンパ無いし、時の精霊(クロノス)の術の影響で時間の流れがゆっくりになって居るとはいえ、何日も戻すとなると霊力の消耗は桁違いに多い。


 王都(ディルクルム)でせずに済んだ事を、地方の街で何でせにゃならんのだ、という気持ちになって来る。

 自業自得だが。



 しかもその場合、王都(ディルクルム)の時と違って無機物にのみ干渉して時間を巻き戻すのではなく、生物もその対象に含めなければならないのだから、考えただけで目眩がしてくる。

 霊力が足りるかどうか、心配をしなくてはならないレベルだ。



 死んだハズの者が生き返る……ではないな。

 死んだ事実が無かった事になる人が大量に出ると、どんな影響が出るのか、正直、不安だ。



 結構な大きさの次元の歪みは確実に出来るから、有翼乙女(ハルピュイア)なんて目じゃない、凶悪なニブルヘイム産の魔物がわんさか出て来るだろうな。

 最悪、燼霊(じんれい)が出て来る。


 しかも俺が消耗した状態でだろ?

 誰がその燼霊(じんれい)を相手にするんだよってお話だよね。



 カノンに言ったら当然止められるから、やるなら尻拭いまで全部含めて、俺一人でしなくちゃいけない。


 精霊神となった皆が、後ろで騒いで喚いて止める位には、禁忌と言える事だ。

 皆に敵対するような行動は取りたくないし、やはり五つ目だった場合は素直に謝って、代替案を出して貰おう。



 なので五つ目は、説明をする前に広げかけた親指を元に戻した。

 何はともあれ、メリディー街に行かねば話にならない。


 「どんな悲惨な光景が広がっていても、受け入れろよ」とだけ言って、念の為ラファスには深い睡眠状態になるよう術をかけた。


 ラファスも母親が戻って来る事を望むだろうが、あくまで俺が叶えるのはファウノの願いだ。

 二人の間で結論が割れた時に面倒だし、何度も親の死体なんて見たくないだろう。


 ソレを抜きにしても酷い光景だと、最初から分かり切っているのだ。

 幼い子供に見せるのは、気が引ける。



 年齢に不似合いな、随分と骨ばった手を取って、三人でファウノの血縁者がいる、その場所へと転移した。

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