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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、顔がひきつる。

 俺は医者では無い。

 「知識」によって、その手順や必要な物を調べる事が出来るだけだ。


 そんな何度も、知識だけでは無く、専門の技術を要する外科手術なんて、出来るワケが無い。



 イヤ、根性を出して「スキル」や鑑定眼を駆使しまくれば、可能か否か答えるのであれば、一応は‘’可‘’である。


 しかし有翼乙女(ハルピュイア)に限らず、魔物がいつ襲って来るかも分からない、気温も低く風まで吹いてるお外でそんな事したら、危険が多過ぎるし、何よりラファスの体力がもたない。

 成功率は、ほぼゼロだ。


 ……正攻法で行くなら、ね。



 ありがたい事に俺は、奇しくも既にファウノとラファス、二人の父親で、邪道かつ決して一般的には普及させられない方法で、不可能を可能にした。


 ほんと、ついさっきの話だ。



 一番最初に助けたファンチョが、二人の父親だったのだ。


 ファウノの血縁者という括りでラファスを見付けた時に、彼も探知に引っ掛かって気が付いた。


 動けなくなったからと、二人を置き去りにして逃亡した無責任な親というのが、()()だと言う事実に、驚きはしない。

 むしろ、納得しか出来ない。



 驚くポイントは、ファンチョが妻帯者かつ二人も子供が居たという事に対してだけだ。

 あんな図体だけがデカくなった、知能も精神も子供みたいなオッサンが、と思わずには居られない。



 まぁ、こういう瀕死で絶対絶命な状態の子供を救う手段を、あぁいう輩で試せたのは僥倖だったよな。

 万が一があっても、良心がさほど痛まずに済む。



 ファウノの視界に入れたら、横から手を出される恐れがある。

 口を挟まれても煩わしい。


 少し高めの縁取られた台を用意して、ソコにラファスを寝かせた。


 ファウノに再びジェスチャーで、黙っているように伝える。


 そしてラファスの肉体を不活性化させ、更に時間の流れを遅くした。

 コレで俺が干渉した部分以外、スロー再生でもしたかのように、ありとあらゆる動きが鈍くなる。



 通常ならば腹を割けば当然血が吹き出るし、内臓だって(まろ)び出る。

 血圧が急降下し、脈拍は頻脈化し弱くなる。


 いわゆる循環血液量減少性ショックの状態に陥る。


 今掛けた術は、そういう肉体の反応が起こるのに時間がかかるようにする、時の精霊術になる。



 例えば今回は、寄生型の魔物を除去する為に、魔物が居る胃袋を開かなくてはならない。


 そのために腹部を切り裂いても、血は殆ど出ない。


 もちろん切り傷はシッカリ付いているので、開腹鈎で開いて切開創を横方向に引っ張れば、視野を確保した状態が維持出来る。

 その際にも、血の流出はほぼ無い。


 ちんたらやってたら、徐々に漏れ出ては来るが。

 停止じゃなく、ゆっっっくりは時間が流れているからね。



 もちろん胃鉗子が無くても、内容物の流出が起こらない。

 ラファスの肉体を包むように術が掛かって居るので、術者の俺以外は、この範囲の中ではろくに動く事が出来ない。


 つまり、必要な道具が少なくて済む。

 「スキル」を使う頻度が減るので、とても負担が軽くなるのだ。



 胃を開いて目的の魔物を見付けたら、無抵抗な状態のソイツを引っ張り出して、おもむろに浄化し、鑑定眼で他に問題が無いか確認をする。

 特筆するような事は無いので、そのまま傷を手で戻し傷口を同士をピッタリとくっつける。


 開創器を取り外して、コチラも同じように元に戻す。



 縫合なんて必要無い。

 術の解除と同時に治癒術と浄化を行えば、感染症のリスクも無く傷は塞がり、完治する。



 栄養失調とスタミナ切れは、治癒術じゃどうにもならない。

 目が覚めたらシッカリ水分を補給して、飯を食って泥のように眠れば良い。



「治療は終わったけど、ファウノはどうしたい?」


「ちりょー?」


「あぁ……ラファスの病気もケガも、治ったよ。

 んで、ラファスはお前等を置いて行った父親じゃなく、多分、母親の所に助けを求めに行こうとしたんだと思う。

 さっきも聞いたけどさ、お前等、メリディーから来たんだろ?」


「母さんは……父さんが、じゃまだから、置いてけって……」


 半ベソ状態で言われるが、ソレでは質問の答えになっていない。

 イヤ、否定しないって事は、肯定と捉えて良いのかな。



 一応彼等一家を発見した場所の立ち位置的に、ピスカ街から順にファンチョ、ファウノ、ラファス、母親となっている。


 その母親は、ココからそこそこ離れた位置に居る。

 近くに居る沢山の人達と同様、同じような場所から、今も一切、動かずに居る。


 ケガで動けないのか、隠れているのか……死んでいるのか。



 メリディー街の住民、皆が皆、霊力が低過ぎて死体か生者か俺が判断出来ない可能性がある。

 なので現状では、誰がどんな状況にあるのかは分からない。


 しかし少なくとも、有翼乙女(ハルピュイア)達はその集団から離れ、今はピスカ街へ向かっている。



 救助活動を終えたら、俺はそのピスカ街へと行かねばならない。

 救助した人々、全員を連れて。



 一度は自分達を棄てた父親と一緒に、ピスカ街へ避難をするか、死んでいるかもしれない母親を求めてメリディー街へと戻るか。

 ファウノに希望があるなら、その通りにする。



 正直、あのファンチョが、父親としての責任を果たすとは思えない。


 なにせ嫁ですらジャマとのたまうクソなんだろ。

 そして一度子供達を棄てている。


 どんな理由があろうと、嫁を見捨て、更には力尽きた我が子等を顧みる事なく平然としている野郎なんて、ロクなもんじゃない。



 ファンチョが子供達を大切に思っているのなら、俺に治療され生還した時点で、ファウノのように連れの心配をするのが普通の反応だ。


 平気なフリをしているだけなら、男のムダに高いプライドから平静を装っているのだろうと思えた。


 どっちみち、クッソくだらないけど。



 だがヤツは俺に文句を言うだけで、誰かを探す素振りも心配する振る舞いも、一切していない。


 サッサと安全圏に逃れたいが、一人になるのは怖いから動けない。

 保護して貰いたいが、他の人間の救助をしているばかりで、誰も守ってくれない。


 そんな不安からイライラと当たり散らしている、幼稚な面しか俺には見えなかった。



 何せ提供した水も食料も、遭難者を発見して空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)に戻る度に減っているもの。

 追加で保護した人達も、そりゃ食べているんだろうけどさ、減り方が尋常じゃない。


 後から来る人達の事を全く考えていない、自分さえ良ければ他はどうでも良いってタイプだよね。


 そして後から保護した人達も、似たような感じだ。


 正直あの連中は放って、この二人と、恐らくメリディー街であろう場所に居る人達の保護をして、そのままピスカ街に戻りたくなる。

 そういう不平等は、カノンから怒られるからしないけどさ。



「……母さん、生きてるのかな」


「分からん。

 ……イヤ、そんな顔をするなよ。

 お前等兄妹ですら、あと一歩間違えてたら死んでたんだぞ。

 確約なんて出来ない。


 だが……待っているのが地獄みたいな光景だったとしても、確認に行きたいなら、連れて行ってやる。

 その覚悟が無いのなら、大人しくファンチョと一緒になってしまうけど、ピスカに避難しろ」


 先程よりも顔色が良くなり傷の無くなったラファスを、広げられた両手の中に返す。


 安堵した表情を浮かべたのも束の間。

 逡巡を巡らし、泣きそうな顔になる。



 母親の安否は確認したいが、妹を危険には晒せない。

 その相反する行動に、心が揺れ動いている。



 ヘタにメリディー街へ連れて行って、ソコに広がる光景が阿鼻叫喚だったなら、目を覚ました時が地獄だろう。


 直接母親の死体を目にしたなら最悪だ。

 そうじゃなくても、多かれ少なかれ無残な遺体はアチコチに転がっている。


 ソレが魔物に襲われた集落の運命だ。



 だからといって、自分だけ連れて行ってとも、言いにくいのだろう。


 その時妹はどうするのか、と問われた時に、この場に置いていくという選択肢しか、彼には思い浮かばない。

 なにせファウノは空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)の存在を知らないからね。


 知っていたと仮定しても、粗暴なオッサンと自分達を棄てた父親しか居ない場所に、妹を一人置いて行くなんて選択は出来まい。

 何をされるか、分からないからね。



 母親を諦めるか、妹の保護を諦めるか。

 ……酷い選択を迫っているな、俺。



「あんたは……たくさん、色んなことができるんだよな?」


「そうだな。

 失礼な物言いのクソガキ一人始末するのなんて、呼吸をする労力しか掛からない程度には、大抵の事は出来るし、さして苦にもならないな」


 俺のうっすらと笑みを浮かべて放った言葉に、ビクリと身体を震わせるファウノ少年。

 語彙力が低いから、俺が言った言葉全てを理解する事は出来なかっただろうが、それでも雰囲気で、自分が何かヤバい事を言ってしまったのだろうと察したらしい。



「ゴメンなさい」

「申し訳ありません」


 そうしきりに繰り返す。



 ……ホント、ロクでもねぇ教育されてんだな。


 周囲の大人、特に親から感情的に怒られる事が多いと、子供は反射的に謝る言葉が口を出てくるようになる。


 悪い事をした時に素直に謝れるのは、良い事だ。

 ちゃんと、どんな悪い事をした結果怒られたのだと、理解した上で謝罪が出来るのなら、の話だが。



 こうも過剰なまでの謝罪、しかも敬語なんて知らないクセに、ソコだけはやたらと丁寧な口調になっている。

 怒って来た相手が、「こう言え」と謝罪を要求して来たから、覚えてしまったのだろう。


 覚えるまで、反射的にそう言ってしまうレベルに達するまで、何度も繰り返し、行われているという事だ。



 コレは相手の意に反した事をしてしまった時に、謝らなければならないと強迫観念が働いている。

 咄嗟に謝罪が出てしまうレベルで、表情や口調の変化に敏感になっているのだろう。


 自分が悪い事をした、という理由ではなく、不快にさせた事でその後に自分の身に起こるであろう事に恐怖したから、という理由で謝っているのだ。



 そうじゃないと、殴るか蹴るか。

 どういう形によってかは知らないが、イヤな事をされるのが、ファウノにとっての日常なのだろうな。


 一方的に、理不尽に、特に理由もなく怒られて来たようだ。



 とても不健全である。

 自己肯定感がダダ下がるし、過度に人の顔色を窺うような、自分らしさを表に出せない大人に成長してしまう。


 しかも既に、親から見捨てられている経験までしているしな。

 コレはアカン。

 なんとかしなければ。



 ファウノの唯一の良心が、妹のラファスか。

 この子が死んだら、自分の心の拠り所が無くなる。


 自分の人としての生命線を握っているのが妹であると、本人も無意識に自覚しているから、ラファスを何よりも気にして居るのだろう。


「ラファス、お前はソコまで謝る必要は無い。

 丁寧な言葉を学ぶ機会が無かっただけだろ?

 ならお前が言うべきなのは、謝罪では無く、どう言えば良かったのか、教えを乞う事だ。


 そしてソレが分かって居ながら、俺の言い方も悪かった。

 済まない。


 ……詫びとして、何でもひとつ、願い事を叶えてやろう」


 周囲の人間は、怒るだけではない。

 教え導いてくれる人も居るのだと、彼には教えてやらなければならない。


 さぁ、言え。

 母さんの所に行きたいと。


 もしくはラファスと二人、安全な場所に逃げたいと。



「母さん……を、生き返らせて欲しい!」


 …………そう来たか〜……

 ……どうすんべ。


 何でもって、言っちゃった俺が悪いのか。


 デスよね〜……

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