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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、観察する。

 精霊は多くの人々に認識され、崇拝されると強くなる。


 祈りによって捧げられた霊力を取り込み、自分のモノとする。

 その力を振るい人々に恩恵をもたらす。


 その循環によって、霊力を取り込む器が強化され、扱える霊力が増えれば、更なる恩恵をもたらす事が可能になる。


 取り込んだ‘’力‘’が多ければ多い程強くなるのは、人も魔物も、精霊も燼霊も同じだね。

 その‘’力‘’が、霊力か魔力かの違いはあるけど。



 そして俺は存外、実験が好きだ。

 新たな事象を発見し、立てられた仮説を検証し実証されていく、あの、ある種の快感が好きだ。


 黙々と言われるがままこなすような、単なる作業ではない。


 ある事象に対して、自分なりの予想を立て、目的意識を持ち、観察する。

 その際の時間の使い方が、酷く贅沢なもののように感じて、満たされていく感覚がする。


 施設にいた頃は、自分の時間を己のものとして使える機会が少なかったから、そのせいもあると思う。



 あとはカノンが実験大好き人間だからね。


 むっつり寡黙が基本なヤツが、こと実験に関してはとても楽しそうに説明して来るんだもの。

 興味を惹かれるのは、致し方あるまい。



 ディスカッションしながら検証を進めた時、俺の仮説が有力であるとなった時の、優越感も堪らないね。


 純粋な力では、俺の方が優る。

 しかしこの世界で長く生きているカノンを相手に、世間一般的な常識に関して、俺は一生勝てる事は無い。


 そんな中、新たに発見された、今後常識となる事象を俺の方が先に認識出来たとなれば、その事に関してだけは白星を掴む事が出来る。


 負けるのは悔しいからね。

 出来れば勝ちは多い方が、嬉しいじゃない。



 そういう、自分が意外と我が強い所なんかも、最近になって知った事だ。

 抑圧されていたから表面に出て来なかっただけで、こういう新発見が、この世界に来てから非常に多い気がする。



 えっほえっほと走りながらそんな事を考えていたら、浅葱(あさぎ)から『お前は地球にいた頃からガンコ者だった』とツッコミを貰った。


 組織において機械かと勘違いする程に従順で、自分勝手な振る舞いこそ見せなかった。

 しかし親しくなった友人関係の人間からしてみれば、負けず嫌いな部分は、当時からあったのだそうだ。


 目立たないように、常に二位から五位の成績に収まるように調節をしていたのに、ソレが外れた時なんかは、特に悔しそうにしていたのだそうだ。

 ……良く見ているね。



 だから‘’我‘’と言うよりも、‘’気‘’が強いと言った方がシックリ来るかもしれないと、一人で納得している。


 相手の都合を考えもせずに、自分の主義や主張を押し通そうと、皆を殺して回ったのは、我が強いのだと思うけどねぇ。



 ソレは命令されて否応無しに実行せざるを得無かっただけなのだから、ノーカンだそうだよ。

 殺された本人なのに、随分と甘い評価だねぇ。


 水晶球の白滝で、気にしていないと言っていたけれど、マジなんだな。

 よくイチャモンを付けて突っかかって来たイメージしか無いから、知らない間に大人になったんだなぁ、とシミジミしてしまう。



『――ソレで、あたしは何をすれば良いのかしら?

 また移動に使う感じ??』


「イヤ、光速移動は具体的に座標指定をしないと使えないだろ?

 予測を立てて有翼乙女(ハルピュイア)の群れとカチ合えそうな場所まで行くでも良いけどさ、追い越しちゃったらダサいし。


 何より到着してすぐに足場を確保しないと、海に落っこちちゃうじゃん??

 その時にスキが出来てケガでもしたら、最高に格好悪いしさ。


 せっかく海があるんだから、氷の精霊(スティーリア)の権威を見せ付けようと思ってる。

 浅葱(あさぎ)は、姉ちゃんのサポートしてやれよ」


『――見せつけるって……誰にだ?

 ギャラリーなんて誰もいないだろ?』


「あぁん?

 山程居るだろうが。

 海の中に」


 言って氷の精霊(スティーリア)を喚び出し、有翼乙女(ハルピュイア)が向かってくる方向を指定して、氷の道を作り出す。



 出来れば殲滅作業が終わった後、避難した人達が地下から出てきた時に、氷の精霊(スティーリア)が活躍したのだと、見せ付けたいんだよね。

 なので出来れば、その時まで溶ける事無く氷が残っている状況になるのが好ましい。


 それに何かあった時の為、俺一人が通れる程度の幅ではなく、もっと規模を大きくしたい。



 崇拝って、畏怖と紙一重な部分があるじゃない?

 精霊を畏れる対象が魔物でも良いのか、その検証をしたいのだ。


 だって人から認知されていない、時の精霊(クロノス)が今迄一番強い精霊だったんだよ。

 生前の「スキル」に左右されていたとしても、説明が付かない位に扱える霊力が大きく、強い。


 なにせ精霊神となった皆からは、少し劣る程度の強さだもの。

 精霊の皆と手合わせをしたとして、周囲の被害を気にせず「スキル」も遠慮なく使用して本気を出した時に、勝てるか分からなかったのが、時の精霊(クロノス)だ。


 他の精霊の皆は、精霊教会の悪事のせいで、確かに弱体化はしていた。

 けれど、日々人々の祈りを捧げられる対象だったのだから、霊力の循環による強化の話だけが道理となるならば、かなり強かったはずじゃない。


 なのに一番強いのは時の精霊(クロノス)だった。


 では時の精霊(クロノス)は、何に崇められてソコまで強くなったのか。

 そう考えた時に行き着いた仮説が、人以外の何かからの崇拝。

 もしくは、良く似た感情である、畏怖の念によるものだった。


 その際は霊力が捧げられる事は無いが、もしかしたら魔力を霊力に転換して吸い取る位は出来るのかもしれない。


 

 もしその仮説が全くの見当違いだった時、氷の精霊(スティーリア)をコキ使うだけ使って、彼女に何の利も得も無いのは、少々可哀想だろう。

 なので活躍が人の目に触れる機会も用意して置きたいのだ。



 なにせ俺に喚び出されても、琥珀(こはく)と一目たりとも会う事が許されないのだし。


 考え付いたのは、琥珀(こはく)にアルベルトの護衛を頼んだ後の事だ。

 決して、ワザとじゃないんだよ。


 だから脳内でグチグチネチネチ言うの、辞めて欲しいな。

 女性の金切り声って、ずっと聞いてると頭がおかしくなりそうだ。



 既に陸地は見えなくなっている。

 海面に立っている場合、俺の身長だと水平線まで四.七kmって所かな。


 結構沖の方まで来てしまったな。

 まぁ、陸地からなら見える距離だろう。


 外洋では距離感が狂う。

 俺は航海士じゃないから、ソコの部分が視覚的情報だけでは判断し辛い。


 ならば念の為、被害が街に及ばないよう、まだ離れるべきだ。



 この辺まで来ると、海面の温度が意外と高い。

 二〇度はありそうだ。


 俺の意を汲んで、浅葱(あさぎ)がサポートに入ってくれた。

 海水の温度を下げて、氷が形成しやすいようにしてくれる。


 元々、氷の精霊(スティーリア)が誕生する前は、火の精霊(イグニス)と共同で雪を降らせて居た位だ。

 温度の調節もお手の物なのだろう。



 自然には発生しない、精霊の御力によって生成された物であると一発で分かるよう、歪みの無い、完全な直線に延びる道は、横から見たら巨大な豆腐でも浮かんでいるように見えたかもしれない。


 急ごしらえで強制的に凍らせた海水は、空気が大量に含んで居るから真っ白だ。



 南極なんかにあった氷も白いけど、アレは雪が降り積もった結果だから、今回作った氷とは、成り立ちが違う。

 何万年も掛けて圧縮され続けたものだから、空気が沢山含まれていて、真っ白に見える。


 その氷は溶ける時に、チッチッ、ぷちぷちと音を立てるそうだよ。

 何万年も前の空気が、氷から解放されて弾ける音なんだって。

 そんな遥か昔に直接触れて想いを馳せられるとか、ロマンを感じるよね。



 ……この世界の場合は、どうなんだろうね。

 南極点とか、あるのかな。


 あったとしても、精霊が季節を運んで来るんでしょ。

 高緯度の場所でも、分かりやすく四季があるなら難しいのかな。



 パキパキと音を立てて、一直線に幅広の道が完成した。

 表面がツルツルなので、いつぞや創ったスケート靴が移動に適していそうだな。


 シャーッと氷の上を走る音が響く海上からは、見た事の無い海の魔物が遠巻きに、コチラの様子を伺っているのが確認出来る。


 とても美味しそうには見えないが、アレ等も食べたら以前食べた 青花鮄(スコベル)魔堅魚(アミア)みたいに美味しいんだろうなぁ。

 ダシ取ってみたいな、ダシ!


  青花鮄(スコベル)魔堅魚(アミア)は、いわゆる青魚だった。

 なので煮熟して乾燥させたら良い感じの節が出来たのだ。


 他の魚類系の魔物でも出来るのか、是非とも試したい。



 こういう事を考える時は、琥珀(こはく)が居てくれるととても心強いのだけど……

 万が一の時の為に、アルベルトの傍に付いてて欲しい。


 何より氷の精霊(スティーリア)が居るから、喚んでもすぐ戻ってしまう。

 ならムダな事はしないでおこう。


 氷の精霊(スティーリア)には先程からブーイングが上がって居るが。

 ムシだ、ムシ。


 それに今は食欲を満たすのが目的では無い。

 魚介類は後回しだ。



 この距離なら、有翼乙女(ハルピュイア)も気付いて居ると思うのだが……


 舐めて掛かっているのかな。

 進路をズラす事なく、真っ直ぐコチラに向かっている。


 むしろ人が居ると確信を持った為か、スピードが増した。

 程なく接触するだろう。



氷の精霊(スティーリア)浅葱(あさぎ)は、タイミング合わせてね」


『――分かったわぁ』


『――了解』


 霊力を練り上げ、何をして欲しいのか、明確に、明瞭に伝えるべくイメージを具体的に構築する。


 使うのは「スキル」ではなく、精霊術だ。

 間違ってはいけない。


 魔物ではなく、燼霊でもない。

 この世界の絶対王者は精霊であると、知らしめるのだ。



 有翼乙女(ハルピュイア)達は、俺が一人であると視認したであろうタイミングで、気配が変わった。


 愚直に進んで来るから、気が緩んでくれていると嬉しいなと思っていたのだが……

 残念ながら、決して油断はしていなかった。


 敵を見付けたから、気を引き締め直しただけのようだ。



 女王を護る為だけに行動するならば、陣形など気にせずに、各々が自己判断で俺に襲い掛かって来ただろう。


 しかし有翼乙女(ハルピュイア)の群れは鶴翼の陣を崩す事無く、速度に乱れもなく、そのまま向かって来る。

 女王も出しゃばる事無く、最後尾に配されて居た。


 徐々に両翼を雁行陣へと移行し、旋回し俺を全方向から取り囲み、退路を塞ぎ袋叩きにするつもりだったと思われる。


 酷く賢い。

 アリアの所有する騎士団よりも、余程統率が取れている。



 しかし俺と接触する、ほんの一秒にも満たない短い時間の間に、小さな水滴が次から次へと海面から浮かび上がった。

 そして瞬きする間もなく、ソレ等は氷の粒に変化する。


 そして「今」と三人に伝えた瞬間。


 幾百、幾千の氷の礫が、一斉に有翼乙女(ハルピュイア)に襲い掛かる!



 霰や雹が着水する、その瞬間を逆再生で見ている感じだろうか。

 ソレが光速の速さで行われたのだ。


 有翼乙女(ハルピュイア)達だけではなく、コチラの様子を伺っていた魔物達全てが、何が起こったのか分からなかっただろう。



 空を飛んでいた魔物の群れが、気が付いたら氷の道の上に落ちていた。

 そんな感じかな。



 氷の粒を、小さくし過ぎたのだろうか。

 それとも、稜霓(ろうげつ)に頼んでしまったが故に、射貫く速度が早過ぎたのだろうか。


 傷穴が小さ過ぎて、女王を仕留め切れなかった。


 他の有翼乙女(ハルピュイア)達は、絶命しているか、しかけているのだけれど。



 ……イヤ。

 女王の近くに転がっている有翼乙女(ハルピュイア)の損傷が激しい。

 身を挺して守ろうと動いたのか。


 共喰いをする割には、仲間思いだな。

 ……そうではなく、女王が絶対的な存在が故の行動か。


 ミツバチなんかは、越冬する際に女王蜂を囲むように働き蜂が蜂球を形成して自分達の熱によって女王を冷気から守ると言う。

 その際寒さによって外側の働き蜂が次から次へと死んで行ったとしても、女王を守り続ける。


 有翼乙女(ハルピュイア)の生態は、どこまでもハチに似ているのだな。



 死にかけているのは、術の発動範囲の外側に居た個体だ。

 攻撃範囲にムラが生じるのは頂けない。


 集団で襲われた時なんかに使えるかな〜と思ったんだけど、雨粒程度の大きさだと、殺傷能力も落ちるし、実践向きとは言えないな。


 既にあるモノを使うと消費霊力が抑えられると言うし、雨が降っている時限定の精霊術として、形骸化して広めたいと思ったのだけど……

 まぁ、集団で襲われて逃げたい時には有効かもね。


 俺には不要の長物だけど。

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