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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを満喫する  作者: 可燃物


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神さま、沸く。

 精霊術とは便利なものだ。 

 想像さえすれば光速で移動しても、慣性の法則すら発生させずに、目的地到着と同時にピタッと停まれる。


 車は急に止まれない、なんて言う通り、大抵の乗り物には加速する為の装置がある。

 それと同時に、減速あるいは停止を行う装置が付けられている。


 だが空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)にはブレーキも無ければ、制動距離も空走距離も関係ない。

 止まりたいと思った地点が、停止する場所だ。



 その目的地の設定なのだが、残念ながらピスカ街の門前には出来なかった。


 霊力による探索が可能なのは、時間の流れが同一の場所に限られるらしい。

 少なくとも、今の俺にはムリだった。



 なので時間の流れが遅くなるよう区切られている、ギリギリの場所まで稜霓(ろうげつ)の力を借りて光速移動をし、ソコからピスカ街に向けて、通常通りの走行をする事にした。


 走らせながら、どの辺にピスカ街があるのか、今街の中はどのような状況なのか。

 この区域を抜けたら、改めて索敵を行おう。


 多少時間のロスは生じるが、仕方が無い。


 少なくとも、今出来ない事を試行錯誤して出来るようにする、時間の余裕は無いのだ。

 少しの手間を掛ければ、不足なく把握出来る。


 急がば回れとも言うのだ。

 焦って事を仕損じてはいけない。


 そう考えた。



 ……なのだが、稜霓(ろうげつ)に運んで貰った地点から、ほんの数cm程度の距離がピスカ街だった。

 慣性の法則が働いていたら、門を吹き飛ばす程度じゃ足りない被害を出していたかもしれない。


 ホント、良かったよ。



 街のギリギリの場所までこんな事をするのなら、いっその事、街を覆うように結界でも張ってくれたら良かったのに。

 方陣や紋様具のような物を介して、ヒトの手が入らない状態では結界を張ってはいけないのだろうか。


 制約のラインが、イマイチ分からないな。



 固く閉ざされた立派な門を、空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)に乗ったまま越え、中に入る。


 非常事態なのだし、別に出入りの際に義務付けられている手続きは、今しなくても罰せられないよね?

 万が一の時には‘’王の権能‘’様に責任を押し付けよう。


 保護者様だもの。

 庇護される者の行動の責任を取るのは、当然の義務だからね。



 ふよふよとノンビリとした速度で、変形させた空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)を着陸させられる場所を探す。


 俺は稜霓(ろうげつ)に守られていたが、カノンとアルベルトは結構なGが掛かって居ただろう。


 守るイメージは気を付けてしたが、何せ俺は、未だに物理的な知識が根本にある。

 空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)の形を変えても、余計な事を考えてしまって、負荷を全くのゼロには出来なかったと思うんだよね。


 旋回はしていないし、脳と心臓の高さをなるべく同じにする為に寝かせて来たりと工夫はしたが、何せ速度がハンパない。

 進む速度を緩めても何も言って来ない所を見ると、中で気絶しているのだろう。


 目が覚めた時に、怒られないと良いなぁ。



 門から一直線に敷かれた幅広の道は、精霊術によるものだろう。

 舗装が施されていた。


 その左右に広がる街並みは、先に進むにつれて外観が変わっていく。


 門の近くに住宅があり、中央に行くと商店があるのかな。

 人っ子一人居ない為自信は無いが、路地を挟んでアッチとコッチで居住区と商業区で分けてあるのだと思う。


 建物の高さもそうだが、造りも色使いも全然違う。



 上から見た時に入り江や標高の低い尾根を利用して、天然の要塞を築いているように見えた。


 水路も引かれているし、結構文化的な生活をしているのかな。

 少なくとも、ある程度計画的に造られた街って事になる。



 暫く進むと、建造物の切れ間に広場があった。

 おあつらえ向きと言うか、なんというか。


 かなり広いスペースなので、二人を乗せた変形空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)を余裕で着陸させられる。



 周囲を見渡すが、今迄通って来た村やエリアール街のような、目立った損傷は見られない。

 家が崩れていたり、血痕が飛び散った痕があったりもしない。


 だが見渡す限り、誰も居ない。



 ……イヤ。


 ビュンッと突き付けられた穂先の軌道を、袖口に隠していた棒手裏剣で逸らす。

 もちろん、半身避ける事も忘れない。



 自分が玄人だとは言わないが、シロウトが振り回す武器程、セオリーから外れた動きをするものはない。


 正直、もう一歩後退して安全確保をしたい所だ。

 だがソレをすれば、やましい事でもあるのかと弾糾されそうなので、踏み止まる。


 だって鋒の向こうに見える顔は、あからさまに敵意が滲んでいるのだもの。

 疑われるような行動は、しない方が良い。



「お前、どうやって街に入った!?」


「門は閉じられていたはずだぞ!」


 少々歳を重ねた恰幅の良いオッサンが一人と、ソレを守るように俺との間に立った、若い武装した青年二人。

 もちろん彼等が近付いて来たのは空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)の上から目で見てたし、探知で既に把握していた。


 まさか対面すると同時にケンカを売られると思わなかったが、まぁ、警戒しているなら至極当然の行動だろう。

 特に疑問にも思わない。



 この先にある港に近い建物の地下に、沢山の人の気配がある事も、当然探索済みだ。


 幾つかの建物に分割されているし、結構な人数が居るようなんだよね。

 探知出来るという事は、ソレ等の人達の生存を意味する。


 つまり、ピスカ街の奇襲は、まだ行われていない。



「国王から派遣されて来たんだ。

 その物騒な武器を、下ろしてくれないか」


「お前みたいな若造が?」


「馬鹿も休み休み言え!

 事実ならば証拠を提示しろ!」


 ……ケンカを重ね売りされた。


 こういう人達ってさ、短絡的過ぎない?

 俺がアリアに派遣されて来たのはウソっぱちだけど、事実だった時に、国王の使者に対して滅茶苦茶不敬な態度を取ってしまうって事でしょ??

 ソレってさ、打首ものじゃない???



 特にピスカ街は長年、請求されない事を良い事に、税金を納めずに来ているんでしょ。

 使者の逆鱗に触れて滞納分も一括で払え、とか言われるリスクを考えないのかな。



 そもそも、武装したり避難したりしているのだ。

 魔物の襲来が遠からずある事を、把握しているんだろ?


 冒険者然とした俺を加勢だと思わずに暴言を吐くとか、機嫌を損ねて回れ右されるって考えないのかね。


 考えないからこその行動なんだろうけどさ。

 もうちょっと賢くなろうよ。


 少なくとも俺が、自分達の攻撃を簡単にいなせる実力者なのは、確定しているんだからさ。



「強さに年齢は関係ないでしょ。

 証拠は……コイツの顔じゃダメ?」


 空飛ぶ石版(タブレヴォーラ)を消すと、中からバタリと失神して伸びてるカノンとアルベルトが出てきた。


 ムムっ。

 コレは証拠と言うよりも、逆に俺がコイツ等を伸したように勘違いされてしまうのではなかろうか。


 字ズラで言うなら事実その通りなのだが、ソレは不可抗力だ。

 単に失神しているだけなので起こしさえすれば、問題無いと思いたい。


 何より半目状態になっているせいで、キリッとした顔の‘’賢者‘’様しか知らない人が見たら、単なるソックリさんと思われかねない。


 ……サッサと起きて弁明ぷりーず。



 起きろと名前を呼びながら往復ビンタをしていたら、住民三人は困惑したように小声でコソコソと言葉を交わし始めた。

 どうやらカノンもアルベルトも、この街では認知されているようだ。


 特にアルベルト。


 何年か前にお隣のメリディー街に長期滞在していただけあって、「何か若返っている気がするけど、本人だよな?」「いや……息子がいるとか聞いてるか?」と囁き合っている。


 そういえば霊力が増大した時に、十歳位見た目が幼くなったんだった。

 元々実年齢よりは若く見えていたけど、ソコから更にとなれば、本人ではなく親戚かなんかだと勘違いされるか。



 唸りながら目を開いたアルベルトが、無意識なのだろうが頬に手を伸ばしたので、カノンの腫れた両頬も含めて即座に治す。

 証拠隠滅しなくちゃね!


「起きろ。

 ピスカに着いたぞ」


「おお……すまん、気絶してたか……」


「なんだ、あの猛烈な首への負荷は……」


 二人とも気絶からは回復したが、吐き気や違和感は消えていないようだ。

 口を抑えたり身体のアチコチを触って、異常が無いか確認をしている。


 ピスカ街が今まさに襲われている、なんて状況じゃなくて良かった。

 こんな無防備な状態の二人を守りながら戦うなんて……出来るだろうが、とっても面倒臭そうだもの。


「ん……?

 ジェラル!

 それにナッチョじゃないか!


 ……あれ?

 ここ、ピスカって言ってなかったか?」


「お前、本当にアルベルトなのか!?」


「なんだよ、国王陛下からの派遣って。

 冒険者は辞めたのか」


 周囲をキョロキョロ見渡したアルベルトが、槍をコチラに向ける住民の姿を確認するや否や、二人の名前を口にした。


 だが二人は元々ココでは無く、お隣のメリディー街の住民らしい。

 槍を持ち替え、首を傾げているアルベルトに、親しげに二人は駆け寄った。


 和気あいあいとしていて、とても良いね。

 アルベルトなんかは、知り合いが全員亡くなったと思っていただろうから、かなり嬉しいに違いない。



「貴殿がピスカの長か。

 私は‘’王の権能‘’としてここにいる。

 時間が惜しいので、其方からの質問は受け付けない。

 現状を把握したいので、私の質問にだけ答えろ。


 まだ魔物の襲撃は受けていないようだが、避難は完了しているな?

 何日前に、何があった?」


 とっても無遠慮に、尊大な態度でカノンがオッサンに詰め寄った。

 反感を持たれたら、素直に答えてくれないんじゃ無かろうか。


 コレだからコミュ障は。



「住民の避難は、確かに終えております。

 海沿いの、倉庫地下です。

 メリディーからの避難民受け入れのために、港は解放されたままになってます。


 十日ほど前、女性の身体に羽が生えたような、しかし禍々しい様相の魔物が二匹、この街を襲撃しました。

 屈強な漁師たちによって、一匹は倒せたのですが、もう一匹は子供を一人さらって、東の方角に逃げて行きました。

 退治した魔物の姿が、人にとても近かったため素材を剥ぐ気にもなれず街の外に埋めたのですが、それ以降魔物の動きが活発化しまして。


 更にメリディーから同じ見た目の魔物に襲われたと、避難民が港に押し寄せて来まして。

 コレはいかんと思い、女子供を地下に避難させ、冒険者を含めた男衆で順番に見回りをしていた次第であります」


 長かったが、途中でいらん事を言うなと指摘して止めるよりも、本人が必要だと思った事を一気に喋らせてしまった方が、結果的に時間を掛けずに済む。

 実際質問はしていなかったが、オッサンが喋った内容で、嬉しい報せが幾つかあった。



 ひとつは全滅したと思っていたメリディー街の住民が、一部だけでもこの街に逃げ延び、生存していたという事。

 アルベルトの知り合い二人は、たまたまピスカ街を訪れていて災難を逃れたのではなく、他の住民達と一緒に海路を通って避難して来たようだ。


 街の規模よりも、地下にいる人数が俺が把握出来る分だけでも多いのは、その為だったんだな。



 もうひとつは、漁業が盛んであるという事……!


 空気を読めと言われそうだが、コチラに向かっているであろう有翼乙女(ハルピュイア)を殲滅させて、街の外に埋めたと言う死骸の浄化が終わったら、是非ともご褒美として、ご馳走して貰わねば!!


 だって夏と冬で、獲れるお魚って違うんでしょ。

 しかも以前釣りをした場所とだいぶ離れて居るから、生息している魚の種類が全然違うだろう。


 やはり大陸の南側だし、極彩色でド派手なお魚が多いのだろうか。



 街を守りながらの魔物退治は非常に面倒臭いが、お魚の為なら頑張りましょうとも!!!

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