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ネーミングセンスのない世界

 目の前の壁には、『転生しました』と毛筆で書かれた紙と一通の手紙が貼り付けられている。

 気づけば俺は、ありがちだが見慣れないアパートの一室にいた。ひどく特異な状況だが、不思議なことに驚きはなかった。窓の先には真っ平らな地平線の草原しか見えない。栄えた街にいるわけではないらしい。不便で仕方がないだろうが、この景色は嫌いではない。

 手紙に手を掛けて雑に引き剥がすと、裏の壁紙も剥がれた。

 長ったらしく読む気の起きない文章に、引き摺られるように目を通す。

『拝啓

 神です。手紙を添えるというのは初の試みですので、拙文をどうかお赦しください。

 目の前の紙にも書かれているように、貴方はこの世界に転生しました。なお、転生の過程で貴方の性別が男性から女性に変わっていますが、服装に関しましてはそのままという形になっております。男物ですが、よくお似合いかと存じます。

 何の説明もなしに異世界に放り込んでは路頭に迷ってしまいますので、この世界について説明させて頂きます。

 言語や自然地形などにつきましては、概ね貴方が元いた世界と変わりません。貴方の今立っているそこは、元の世界でいうところの音更町に建てられた「転生し荘」というアパートになります。辺りには草原しかありませんが、南に暫く歩くと市街地に出ることができます。

 ここからは、元の世界とこの世界の相違点について大まかに説明致します。

 先ず、この世界には能力と魔法の概念が存在します。どちらも所謂異能の力というものになりますが、能力はその人固有の力、魔法は世界共通の力です。貴方がこの世界に飛ばされても冷静でいられるのも、魔法の力によるものです。能力の強みは他人に行動を読まれにくいこと、魔法の強みは対応範囲の広さにあります。そしてそれらを使用するには、空気中に存在する魔気という物質が必要となります。なお、能力の使える人は魔法が使えず、魔法の使える人は能力が使えません。貴方は能力が使える人間です。

 能力と魔法は便利ですが攻撃に利用するとその殺傷能力は他と比にならないほど高いため、法律で制限がなされています。能力の法に触れる用法は直感で判るようになっておりますので、ご安心ください。

 次の相違点ですが、この世界には動物とは別にモンスターが存在します。モンスターは基本的に人間に対して敵対的です。音更町には、比較的弱いモンスターしか存在しません。野生モンスターに対しては如何なる行為も原則は許されます。

 そして、この世界では世界共通でネルという通貨が用いられます。単純比較はできませんが、元の世界の通貨である円でいうところのおよそ十円がこの世界の一ネルにあたります。

 最後に、この世界では貴方の名前は「リーファ・グラシー」となります。勿論今まで通り「草野一葉(くさのかずは)」と名乗って頂いても構いませんが、公的な場では英名の方を用いて頂きます。ご了承ください。

 私からの説明は以上となります。部屋に置かれている「この世の真理」という本でこの世界の詳細な情報、「能力・魔法ブック」という手帳で貴方の能力が判ります。ぜひご活用ください。

 敬具』

……過保護な神様だ。ネーミングセンスのない世界だ。

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