その後1 カラザとブラウ
ブラウは忙しそうに働くカラザを横目に、資料となる情報のデータを端末に向かいまとめていた。
なんとも似合わないスーツ姿だが、これも身から出た錆。仕方ない。やり口が汚かったのだ。
セトをだますからだ。
「あんなに戻りたがっていたのに…」
あの日。
窓辺に張り付くようにして、空港を見つめていたセト。まるで置いてけぼりを食らったネコの様だった。
主人の帰りをじっと窓辺で待ち続ける。
いつか飼っていた猫を思いだす。あの猫も家に置いて行くと、ずっと窓辺に座って帰りを待ち続けていた。
あの時のセトを思い出すと切なくなる。
だから、罰があたった。
しかし、そのとばっちりをブラウも受けることになるとは。
もちろん、カラザを支えるつもりはあった。命を差し出す覚悟も変わらない。だが、こうなるとは予測していなかった。
が、カラザに加担したのだから、これも致し方ないことなのだろう。
結局、カラザとは同じなのだ。
汚れている。
だから、まっすぐなセトを見た時、それに気付いたのだ。
セトは汚れていない。
きっと、セルサスもそれに気付いたのだろう。
自分の為に偽りなく命を差し出す姿に、心を動かされないはずがない。
セルサスも同じなのだ。
自分にないものを人は求めるらしい。
セルサスも自分にないものを、セトに見たのだろう。汚れていればいる程、白さが眩しく映るもの。
「おい! ブラウ、ぼーっとしてんな」
「まさか。──あなたとは違う」
「ったく。俺には分かるんだぞ? お前がいくら無表情たって、俺から見りゃあ駄々洩れだ」
「どうでしょう。──それより、この資料、後でしっかり頭に叩き込んでおいて下さい。明日の午前中、会議がありますから」
そう言って紙の資料を机に置く。
結局、こちらの方が持ち運びもしやすいし落とした所で気を使わなくてもいい。
特にカラザのような乱暴者にはちょうどいいのだ。
その束を見て、カラザはうんざりしたように声を上げた。
「セトの呪いかよ…」
「セルサス、でしょうね」
カラザは苦虫をかみつぶしたような顔をして、ブラウを睨みつけた。
明日の午前の会議に間に合うよう、今日の午後にはセルサスと共にセトも来るらしい。
らしいではない。セルサスが行くところ、必ずセトがつく。
もう置いてけぼりはくらわないな。
夕食は共にする予定だ。参加するのはセルサスとセトの他、エルにアイレも。
カラザとそれを迎える事になる。身内だけの楽しい会になることは確かだった。
セルサスのもうお腹いっぱいのセトへの執着を見るのはうんざりだが、セトに会えるのは素直に嬉しかった。
「おい! だからぼーっとすんなっての!」
「──してませんと何度も言っています」
そして、また先ほどの会話が繰り返されるのだ。
平和な日常の一コマだった。
ー了ー




