[特別回] 運命の交差――あの夜の出会い
これは、"彼ら"が初めて出会った夜の物語——。
本編の合間に、特別回(回想エピソード) をお届けします!
今回のエピソードでは、炎とカルマの 「最初の出会い」 を描いています。
現在の二人の関係を形作る最初の一歩が、ここにあります。
彼らは、どうやって出会い、どんな言葉を交わしたのか——?
この一夜が、後の物語にどんな影響を与えたのか……
ぜひ、彼らの「始まり」を見届けてください!
それでは、本文へどうぞ!
それは、殺気に満ちた夜だった。
月光は厚い雲に遮られ、周囲はただ暗く沈んだ影に覆われている。
炎は単独で、一体の魔物を追跡していた。
辺りには血の匂いが濃く漂い、喉の奥に絡みつくような生々しい気配が漂っている。
白い髪は夜風にわずかに乱れ、紅く光る瞳が闇の中で鋭く煌めいた。
その眼差しは冷徹でありながら、確かな覚悟を秘めている。
──だが、その時。
何か異質な魔力の波動が、炎の感覚を揺さぶった。
その方向へと身を潜めながら慎重に近づくと、思わぬ光景が目に飛び込んできた。
一人の女が、炎に包まれた紅髪を靡かせながら、幾体もの獰猛な魔物に囲まれていた。
彼女は必死に応戦していたが、その表情には疲労の色が滲み、もはや長くは持ちそうになかった。
「おい、こっちに来い!」
炎は迷うことなく叫んだ。
その声には、普段ではありえないほどの切迫した響きがあった。
次の瞬間、彼は躊躇なく武器を構え、一気に戦場へと飛び込んだ。
鋭い動きで魔物を幾体も撃退し、その背中には冷徹な気迫と揺るぎない意志が宿っていた。
その背中を見つめ、女──カルマは、一瞬、驚きに目を見開いた。
この男からは、どこか陰りを帯びた雰囲気を感じる。
だが、その翠の瞳には、どんな恐怖も映っていない。
そして、今まさに危機に瀕する彼女に対し、迷いなく手を差し伸べてきたのだった。
最後の魔物が地に伏したとき、辺りに一瞬の静寂が訪れた。
戦いの余韻だけが、冷たい夜風とともに漂っている。
炎はゆっくりと振り返り、目の前の女を見つめた。
微かに荒い息を整えながらも、まだ警戒の色を解いてはいない。
「一人でこんな数の魔物を相手にするなんて……普通の魔物狩り(デビルハンター)には見えないな。」
彼の低く落ち着いた声が、静寂を破った。
女──カルマは炎の視線を受け止め、静かに微笑んだ。
彼女の紅い髪は月光を受け、まるで揺らめく炎のように輝く。
「私には、私なりの理由があるのよ。」
「助けてくれて、ありがとう……でも、あなたも普通のハンターじゃないでしょう?」
炎はしばらく沈黙し、言葉を選ぶように目を伏せた。
そして、無言のまま武器を収め、淡々と言い放つ。
「この辺りは最近、危険が増している。一人で動くには向かない。」
カルマは彼をじっと見つめた。
その黄金の瞳は、わずかに揺れる複雑な感情を映し出している。
彼女はゆっくりと耳元の髪を払い、ため息交じりに呟いた。
「……ここに来たのは、とある人物を探すため。
正確に言えば、一つの答えを求めて。」
「答え?」
炎の眉がわずかに動いた。
彼の関心を引いたようだ。
カルマは少し視線を落とし、どこか遠い記憶を辿るように口を開いた。
「私の父は、かつてここに来たことがある。
だけど……彼は忽然と姿を消した。
痕跡すら残さずにね。」
彼女の声には、抑えきれない哀しみが滲んでいた。
「私は彼の行方を知りたい。
なぜ彼が消えたのか、そして……
彼が人間の世界と、どんな繋がりを持っていたのか。」
炎は静かに耳を傾けていた。
その時、彼は初めて気づいた。
彼女が“人間ではない”ことに──。
月明かりに照らされたカルマの瞳は、金色と翠の光を交互に映し出し、不思議な輝きを放っていた。
人ならざる者の妖艶な美しさを湛えながらも、その眼差しには強い意志が宿っている。
炎は何も問わなかった。
ただ、静かに頷いた。
彼女の決意を、理解するように。
カルマは炎の反応を感じ取ると、ゆっくりと息を吸い込み、真剣な眼差しで言った。
「……なら、せっかく今日会えたことだし、一緒に組まない?
一人でこの数の魔物を相手にするのは大変でしょうし、私も信頼できる相棒が欲しいの。」
炎はしばらく考え込み、低く呟いた。
「俺は……誰かと組むつもりはない。」
冷ややかな声音。しかし、そう言いながらも、彼は踵を返す直前、思わずカルマを一瞥した。
「……でも、今日あなたは私を助けてくれたじゃない?」
カルマは落ち着いた声で言いながら、挑発的に微笑んだ。
「冷酷な狩人ってわりには、案外人情深いのね。」
炎は一瞬沈黙し、月光の下で静かに彼女を見つめた。
──そして、ため息をつきながら、観念したように小さく頷いた。
「……わかった。ただの一時的な協力だ。
勘違いするなよ。お前に手を貸すつもりはあまりない。」
カルマはくすりと笑い、囁くように答えた。
「ふふっ、それでも十分よ、冷血なハンターさん。」
こうして、月明かりの下で二人の運命は交差した。
互いの目的は違えど、彼らは共に歩むことを選んだ。
そしてこの旅の中で、次第に──かけがえのない相棒となっていくのだった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
今回は 特別回 として、炎とカルマの "最初の出会い" を描きました。
二人がどうやって知り合い、どんな関係のスタートを切ったのか……この夜の出来事が、彼らの関係にどんな影響を与えたのか、少しでも感じてもらえたら嬉しいです!
この時点では、まだお互いに**「獵人と惡魔」** という立場。
でも、彼らの間にはすでに小さな"何か" が生まれていたのかもしれませんね……
そして、次回からは本編の続きを加速更新!
炎とカルマの関係、黒燈会の動き、そして炎の中に眠る"力"……どんどん核心へと近づいていきます!
次のエピソードも、ぜひお楽しみに!
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それでは、また次回お会いしましょう!