↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デビルハンター 〜最強悪魔(ヒロイン)と契約して、運命と戦うことになった件〜  作者: 雪沢 凛
第四章:暗影に結ばれるもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/166

暗影に結ばれるもの (8)

 影幕(シャドヴェル)の攻撃は容赦がなかった。


 暗紅色の符紋が空気を切り裂き、鋭い弧を描きながら三人へと襲いかかる。

 炎(エン)は素早く身を翻したものの、避けきれず肩をエネルギーの波動がかすめる。


 ビリッ!


 衣服が瞬く間に裂け、鮮血がじわりと滲み出した。

 だが、炎(エン)は痛みを意に介さず、素早く影幕の側面へと回り込む。

 わずかな隙を狙い、一気に間合いを詰めようとした——が。


「フン……甘いな。」

 影幕は冷笑し、鋭く手を振り上げる。


 その瞬間——。


 ゴォッ!!


 強烈な衝撃波が爆ぜ、炎(エン)の身体を容赦なく吹き飛ばした。


 足元が崩れ、バランスを崩して後退する。

 手から短剣が滑り落ち、金属音が床に響いた。


 カラン……カラン……


 腕に鈍い痛みが走るが、炎(エン)は眉一つ動かさず、即座に身を屈める。

 迷うことなく地面に落ちた短剣を掴み、再び強く握りしめた。


 ——この武器を失うわけにはいかない。


 戦いの要(かなめ)となる刃を手に、炎(エン)は一歩後退しつつ、影幕を鋭く睨みつける。

 その刹那、影幕がさらなる猛攻を仕掛けるべく、符紋のエネルギーを凝縮し始めた。


 炎(エン)は僅かに息を整え、短剣を構える。

 その刃に宿る冷たい輝きが、彼の意志と一体化し、防御の壁を形成するかのように煌めいた——。


 影幕(シャドヴェル)の意識が炎(エン)へと向いた、その刹那——。


「今よ!」

 カルマは一気に魔力を収束させ、守りの結界を鋭利な刃へと変えた。


 刹那、まるで光の刃のような一閃が空を裂き、影幕へと疾走する。

 影幕は一瞬目を見開くが、素早く体を逸らして回避。


 しかし——完全には避けきれなかった。


 ズバァッ!


 鋭い閃光が彼の肩を掠め、深々とした傷を刻み込む。


「……チッ。」

 顔をしかめた影幕の瞳が、冷たい怒りに染まる。


 次の瞬間、彼の手元に溢れ出した符紋のエネルギーが暴走するかのように激しく脈動し、一気に爆発的な衝撃波を放った。


 その猛威がカルマへと襲い掛かる。


 ドォン!!


 カルマは衝撃をまともに受け、数歩後退。


 ピシッ……!


 結界がひび割れ、瞬く間に砕け散る。

 魔力の反動により彼女の体が揺らぎ、息が荒くなる。


 カハッ……!


 口元から一筋の血が零れた。


 影幕は冷笑しながら、まるで獲物を追い詰める捕食者のようにじりじりと歩み寄る。


「どうした?さっきまでの勢いはどこへ行った?」


 カルマは歯を食いしばりながら立ち上がろうとするが、影幕の圧倒的な魔力が周囲の空間を支配し、動きを封じるかのように重くのしかかる。


 ——しかし、その瞬間。


 カチャッ!


「よし、外れた!」

 ついに、アイデンが少女の鎖を外すことに成功した。


「行くぞ!」

 彼は低い声でそう告げ、少女を支える。


 彼女の身体はひどく弱っており、かすかに揺れながらアイデンに身を預ける。

 そのとき、アイデンの視線がふと少女の襟元へと向いた。

 ——そこには、小さなタグが縫い付けられていた。


「……リア?」

 刺繍された文字を見た彼が、思わず口に出すと、少女の肩が微かに震えた。


「お前の名前か?」

 リアはゆっくりと、力なく頷いた。


「……リア。大丈夫だ、俺たちがここから出してやる。」

 アイデンは穏やかに、だが強い決意を込めてそう囁いた。


 その声に、リアの瞳がわずかに揺れる。

 彼女の中で、ずっと凍りついていた何かが、ほんの少しだけ溶けた気がした——。


 アイデンはすぐに顔を上げ、焦燥の色を滲ませた目で炎(エン)とカルマを見やる。

「急ぐぞ、今しかない!」


 影幕(シャドヴェル)は彼らの動きを察知すると、怒声を上げ、勢いよく振り向いた。

 両手を天に掲げ、狂気じみた符紋のエネルギーを周囲に凝縮させていく。


 ——このままでは、この空間ごと吹き飛ばされる。

 炎(エン)は肩の痛みを無視し、咄嗟に影幕へと飛びかかった。


「お前たち、逃がすものかァ!!」

 影幕が狂笑しながら手を振り下ろすと、圧倒的な衝撃波が爆発する。


 ドォン!!


 炎(エン)の身体が吹き飛ばされ、ゴンッ! と無慈悲に壁へと叩きつけられた。


「……ぐッ……!」

 鈍い衝撃音が響き渡り、炎(エン)は床へと崩れ落ちる。


 しかし、彼はすぐに苦痛を押し殺し、ぐっと地面を押して立ち上がった。

 額から流れ出た鮮血が頬を伝い、視界を赤く染める。


 それでも——彼の眼差しは微塵も揺るがなかった。

 鋭く、強く、影幕を睨み据えていた。


「エン!!」

 カルマはその姿を見て、内に秘めた怒りが一気に燃え上がるのを感じた。


 彼女は静かに息を整え、魔力をすべて収束させる。

 両手を交差し、光の刃を生み出した。


「……消えろ!」

 怒りを込めた声とともに、光刃が疾風のように影幕へと突き進む!


「クッ……!」


 影幕は素早く反応し、手のひらを翻して強固な符紋障壁を展開した。


 しかし——


 ギギギギギィィィィン!!!


 光刃が障壁に突き刺さると、火花が弾け、空間が震える。


 そして——


 ズバァッ!!


 光刃は防御を貫通し、そのまま影幕の肩へと突き刺さった!


「グッ……ァァ!!!」


 影幕が苦痛に顔を歪め、肩を押さえながらカルマを睨みつける。


「……貴様ら……私を傷つけたな……!!!」


 しかし、その隙を狙って、アイデンは虚ろなリアを支え、素早く出口へと向かう。


 彼の瞳には、一瞬の迷いもなかった。


「急げ!!」

 カルマは頷き、最後の魔力を振り絞って影幕の前方に一瞬だけの結界を張る。


「エン、行くよ!!」

 彼女は炎(エン)の腕を掴み、一緒に出口へと走り出した。


 影幕は怒りに満ちた目で彼らを睨むが、結界が道を塞ぎ、すぐに追撃できない。

 その場で悔しげに拳を握り締め、歯ぎしりしながら呟く。


「…………チッ…………」


 ——こうして、三人とリアは、影幕の目をかいくぐり、地下施設からの脱出に成功した。


 ◆ ◆ ◆  


 ――地下の薄暗い通路を、三人は衰弱したリアを支えながら駆け抜けた。


 戦闘の余波で灯りはちらつき、壁に刻まれた符紋が微かに震えている。

 今にも不安定な魔力が暴走しそうな気配があった。


 アイデンは片腕でリアを支え、もう片方の手にはしっかりと武器を握っている。

 時折、背後に視線を向けながら足を速めた。


 ――影幕が追ってくるのは時間の問題だ。ここで足を止めるわけにはいかない。


 カルマと炎(エン)は左右を固め、警戒しながら進む。

 カルマの視線は鋭く、わずかな異変も見逃さないように周囲を見渡していた。


 だが、体内の魔力はほぼ枯渇し、額には汗が滲んでいる。

 それでも、彼女は決して足を止めようとはしなかった。


 一方、炎(エン)は負傷した肩をかばいながらも、最後尾で警戒を怠らなかった。

 戦闘で負った傷が痛むたびに顔をしかめたが、歩みを緩めることはない。

 手にした短剣を固く握りしめ、いつでも反撃できるよう身構える。


 ようやく、彼らは地上へと続く小さな階段へと辿り着いた。

 その先には、頑丈な金属製の扉が閉ざされている。


 カルマは扉を見つめながら、低く囁いた。

「上に出たら、いったん別行動を取るかもしれない。やつらの注意を分散させるために」


 アイデンは小さく頷くと、頭上の金属扉を見上げ、試しに押してみた。

 だが――ビクともしない。


「……他に制御機構があるはずだ」

 彼は低く呟いた。声には焦燥が滲んでいた。時間が経つほど、影幕に追いつかれる可能性が高まる。


 その時だった。

 炎(エン)の視線が壁の端にある微かに光る符紋を捉えた。

 それはまるで扉の鍵と連動しているように、かすかに揺らめいていた。


「……これか」

 彼は素早く歩み寄り、符紋のすぐ横にある小さなくぼみに短剣を差し込む。

 そして、力を込めてひねると――


 符紋の光が一瞬にして掻き消えた。

 続いて、鈍い金属音が響き、重厚な扉がゆっくりと開き始める。


「行くぞ!」

 炎(エン)が低く囁くと、三人はリアを支えながら素早く門を通り抜け、狭い通風ダクトへと滑り込んだ。


 そこは想像以上に窮屈で、壁には無数の錆びついた配管が張り巡らされていた。

 息苦しさを覚えるほどの閉塞感の中、頭上の遥か先には夜空の微かな光が見える。

 それが、唯一の希望の光だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。