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デビルハンター 〜最強悪魔(ヒロイン)と契約して、運命と戦うことになった件〜  作者: 雪沢 凛
第十二章:不安の火種

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不安の火種 (4)

 作戦室の中——。


 傷跡のハンターが苛立ちを隠せず、テーブルを叩く。声に怒りがにじむ。

  「アイデン、理解できない。なぜそこまでエンを甘やかす?明らかに何かを隠してるだろ。そんな奴を中に置いておくなんて、危険以外の何物でもない!」


 アイデンはその言葉を受け止め、一瞬視線を留めた後、部屋のハンターたちを見回す。沈黙の圧力が空気を重くする。

 深く息を吸い込み、静かな口調で答える。だが目に威圧感が宿る


  「証拠がない限り、人を疑うな。彼が裏切り者なら、任務のどこかでボロが出てるはずだ。今になって表に出る理由はない。」


 そう言いながら、内心では別の波が揺れる。この言葉は建前だ——本当の理由は口に出せない。(エン)の中には“エリヴィアの力”が存在する。それが夜行者たちが探し続ける核心だ。アイデンの視線が伏せられ、指先が机の縁を叩く。(エン)の機密情報が頭を渦巻き、判断を曇らす。


 彼の存在は異端であり、鍵でもある。力も背景も、夜行の目的と重なる。今ここで正体を晒せば、ギルドが危機に晒される。


(だからこそ、俺が守らねば)


 痩せたハンターが眉をひそめ、沈んだ声で言う。

  「じゃあ俺たちはどうする?ただ見守るのか?裏切り者なら、敵に情報を流す時間を与えるんじゃないか?」


 アイデンは鋭い視線で応じ、威圧を滲ませて語る。

  「彼の行動は監視下に置く。内部調査も強化する。裏があれば必ず見つけ出す。だが憶測で動くわけにはいかない。」


 傷跡のハンターは納得せず、皮肉を交えて吐き捨てる。

  「監視?ふん、その“監視の目”は誰のものだ?」


 アイデンの返答は冷たく、感情を見せない。

  「俺が責任を持つ。」


 その一言で空気が凍る。傷跡のハンターはアイデンを睨むが、何も言わず壁際へ歩く。

  「……好きにしろ。ただし、次に何かやらかしたら、容赦はしない。」


 アイデンは(エン)へ視線を向け、落ち着いて言う。

  「エン。これからの行動はすべて報告制だ。どんな任務でも監視が同行する。全員を納得させる措置だ、理解してくれ。」


 (エン)は黙って頷く。表情は冷静だが、瞳の奥に疲労が宿る。

  「わかってる。」


 アイデンは時計を見て、息を吸い込み、静かに命じる。

  「……これで本日の会議は終了だ。各自、持ち場に戻れ。」


 何人かのハンターが目を交わし、頷いて部屋を出る。だが数人が残り、不満と敵意を浮かべる。傷跡のハンターが腕を組み、冷え切った視線で睨む。


  「それで終わりか?はっ、今の段階で確実な証拠もないくせに、あいつを野放しにするのかよ?」

 別のハンターが口を開く。落ち着いた声だが敵意が滲む。


  「アイデン、お前はエンを庇ってるが、俺たち他の者はどうなんだ?ギルドの安全よりあいつを優先するのか?」


 アイデンの顔から笑みが消え、静かな圧が満ちる。

  「さっきも言った。証拠もなしに断定はできない。疑うのはいいが、混乱を煽るのは許さない。」


「証拠だと?」

  傷跡のハンターが一歩前へ出る。目には怒りが宿り、声は低く、だがはっきりと響いた。

  「マイルズの件は十分な証拠だ。現場にいたのはエンだ。そいつを見逃すのか?犠牲が増えないと“証拠”じゃないのか?」


 アイデンは引かず、鋭い視線で応じる。

  「それが“証拠”なら、皆を納得させる材料を持ってこい。ここで怒鳴っても何も変わらん。」


 傷跡のハンターの顔が険しくなる。もう一人が冷笑し、言う。

  「アイデン、お前がギルド長だからって全員を黙らせられると思うな。マイルズが死にかけてるのに、その決断は信用できない。」


 傷跡のハンターが机を叩く。

  「お前こそ説明しろ、アイデン! なぜエンを庇う?まさかあいつの秘密を最初から知ってたんじゃないか?」


 アイデンの眉が寄る。口調は落ち着くが、威圧がこもる。

  「ここは作戦室だ。感情のはけ口じゃない。俺の判断に異を唱える前に、自分の立場を見極めろ。」


 彼はハンターたちを睨み、言葉以上の圧力で黙らせる。

 だが沈黙は続かない。


「立場……ね」

 傷跡のハンターが冷笑し、体を伸ばし、アイデンを見据えて言う。


  「なら立場をはっきりさせよう。お前がエンを守るなら——俺たちは自分たちの手で、あいつの“真実”を暴くしかない。」


 手が武器へ伸びる。指先は震えるが、決意が宿る。

 空気が一変する。他のハンターも武器に手をかけ、火種一触即発。


 アイデンは目を細め、手を上げて押さえる。

 声は低く、威圧を含む。

  「武器を抜くな。これが最後の警告だ。」


 それでも傷跡のハンターは動じない。

  「アイデン、お前は全てを支配できると思うなよ。俺たちはお前のコマじゃない。従うだけの理由が、今のお前にはない。」


 彼は仲間に視線を送る。その視線に応じ、数人が拳を握り、静かに頷く。

 火種は、確実にくすぶり始めていた。

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