序章
※ こんにちは!はじめまして!
デビルハンターの世界へようこそ✨
これが私の初めての小説執筆です!
まだまだ未熟ですが、少しでも楽しんでいただけると嬉しいです!
今回のエピソードは序章ですが、本編ではもっと激しいバトルや
深まる謎が待っていますので、ぜひ最後までお付き合いください!
真夜中の街は依然として灯火が絶えず、ネオンの光が湿った空気の中で幻想的な色彩を映し出していた。しかし、その華やかさの裏側には、無数の闇が潜んでいる。
炎は廃墟と化したビルの屋上に立ち、静かに眼下の街を見下ろしていた。夜風に揺れる短い白髪、そして漆黒の闇に浮かぶ翠緑の瞳――その輝きは冷静でありながら、どこか人を寄せ付けない冷たい光を宿していた。
彼にとって、夜の巡回はもはや日常の一部に過ぎない。この街の影に潜む魔界からの脅威を幾度となく追跡し、討伐してきた。
数十年前、人間界と魔界をつなぐ“門”が開かれた。最初のうちは、それは科学者や政府の目には単なる異常現象としか映らなかった。空気中のエネルギー波動、奇妙な磁場変動――さらには自然災害の前兆とすら考えられていた。
しかし、観測が進むにつれ、それが単なる異変ではないことが判明した。それは人界と異界を結ぶ通路――魔界の門だった。
門が開かれると同時に、魔界の生物が徐々に人間の世界へと侵食を始めたのだった。
それらの存在は、人類にとって未知なる脅威だった。やがて個体数が増加するにつれ、人々の悪魔に対する認識は次第に複雑なものへと変わっていった。
確かに、悪魔の多くは攻撃的であり、破壊的な魔力を持ち、襲撃や略奪を好み、ときには人の心すらも操る。彼らは人間社会にとって大きな脅威となり得る存在だった。
だが、すべての悪魔が敵対的というわけではなかった。中には純粋な好奇心から人間界に興味を持ち、この世界を探求しようとする者もいた。敵意を持たず、むしろ人間社会に溶け込もうとし、さらには人間と協力し共存を望む悪魔さえいたのだ。
こうした異界からの来訪者がもたらすリスクに対処するため、政府は速やかに情報を封鎖し、悪魔討伐組織の設立に着手した。そうして生まれたのが、悪魔を狩る者たち――デビルハンターである。
炎もまた、その戦いを見届けてきた者の一人だった。
彼にとって、悪魔との戦いは“任務”であり、そして――すでに“日常”となっていた。
そよ風が吹き抜ける中、背後から聞き慣れた足音が近づいてきた。
炎が振り返ると、カルマが大股でこちらへ向かってくるのが見えた。
闇夜に映える燃えるような赤髪。その先端にかかる緑の輝きは、街の灯りを受けて一層際立っていた。彼女の表情にはどこか余裕のある自信が滲んでおり、この闇に包まれた世界を少しも恐れていないようだった。
「で、今日のターゲットは?」
気怠げな声で問いながらも、その瞳は興味を隠そうとしない。
「市街地の廃墟。正確な位置はまだ特定できていないが、付近で行方不明者が出ているらしい。黒燈会と関係がある可能性が高い。」
炎は淡々と答え、遠くに広がる暗い建物群を指さした。
カルマは片眉を上げ、手袋を引っ張ると、軽く指を動かしてウォーミングアップを始めた。
「また黒燈会か……今夜は退屈しなさそうね。」
そう言って口元に笑みを浮かべると、わずかに身を乗り出し、挑発的な視線を炎に向ける。
「どう? 先に様子見してこようか?」
炎は彼女を一瞥し、淡々と返した。
「好きにしろ。ただし、騒ぎは起こすなよ。」
カルマは肩をすくめると、軽く跳躍した。その瞬間、腰から背中にかけて暗色の悪魔の翼が静かに広がる。
翅をひと打ちすると、微かな風が舞い、彼女の身体は音もなく闇の中へと滑るように降下していった。夜の帳に紛れるその姿は、まるで幽霊のように軽やかで、ほとんど気配すら感じさせない。
この翼こそが、彼女が異界の存在である証――普段は隠すこともできるが、必要な時にはその魔の力を惜しげもなく解放する。
炎は小さく息を吐き、別のルートから静かに降下し、建物の内部へと歩みを進める。
二人は左右に分かれ、沈黙の影となって目標へと忍び寄る。闇に溶け込む二つの姿――一切の音も発さずに。
建物の内部へと滑り込んだ瞬間、四方の空気は闇に呑まれ、深い静寂が支配していた。ただ、砕けた窓から差し込む微かな月光だけが、かろうじてその場の輪郭を浮かび上がらせていた。
カルマの瞳が暗闇の中で鋭く光る。腰から背にかけて伸びる悪魔の翼は、いつでも展開できるよう待機していた。彼女は気配を殺しながら前へと進み、その姿はまるで夜そのものと一体化しているかのようだった。
炎もまた、静かにその背を追いながら、周囲の環境を冷静に観察する。
建物の奥から、低く押し殺した囁き声が漏れ聞こえてくる。
沈んだ声色に、焦燥を滲ませた早口。
炎とカルマは一瞬視線を交わし、迷いなく静かに接近する。崩れかけたコンクリートの柱の影に身を潜め、慎重に声の主を窺った。
――数名の黒燈会の構成員が、古びたテーブルを囲んでいる。
テーブルの上には、破れたルーン文字の書と羊皮紙が乱雑に広げられていた。
一人が低い声で呟く。
「前回の指示によれば、力の源の所在はすでに特定済みだ。儀式さえ完遂すれば、解放は成功するはずだ。」
もう一人の男が、狂気じみた光を瞳に宿し、続ける。
「この力はあまりにも長く眠りすぎた……人間界の再生には、これが必要なのだ。そして俺たちこそが、新たな世界の支配者となる。」
炎の目がわずかに細められ、眉間に微かな皺が寄る。
一方のカルマは、ただ小さく片眉を上げ、唇の端を吊り上げた。その表情には、軽蔑と嘲笑の色が滲んでいる。彼女は何も言わない――だが、その沈黙こそが、相手の計画を些かも恐れていないことを如実に物語っていた。
黒燈会の構成員たちの会話が熱を帯び、言葉の端々が興奮と狂信に染まる。
それを聞きながら、炎とカルマはすでに全貌を把握しつつあった。
――彼らは今夜、強大な儀式を行うつもりなのだ。
異界の力を召喚し、さらなる悪魔を操るために。
カルマは無言のまま悪魔の翼を広げ、炎に向けて小さく頷く。――準備は整った。
炎もまた、それに応えるように鋭い眼差しを向け、腰のホルスターに手を伸ばした。冷えた金属を握りしめる指先に、迷いはない。
次の瞬間――
カルマが影の中から一閃。手のひらに猛々しい炎が灯る。
「――燃えろ。」
炎を振り抜くと、それは鋭利な矢のように飛翔し、テーブルの上に散らばっていた符文と羊皮紙を瞬く間に呑み込んだ。暗闇に赤い閃光が弾け、業火が燃え広がる。
「侵入者だ!」
一人が叫ぶ。
周囲の黒燈会の構成員たちは即座に武器を抜き、迎撃態勢を取った。
その刹那――
闇を裂く、一筋の青い閃光。
炎の銃口がわずかに閃き、狙い澄ました弾丸が一直線に飛ぶ。銃声はわずかに遅れて響き、敵の肩を正確に貫いた。
呻き声が上がる。
炎は即座に身を翻し、物陰へと滑り込む。
カルマが視線を交わし、彼の意図を察する。
――援護に回る、了解。
彼女の翼が舞う。
敵の刃が迫る中、カルマは滑るように身をかわし、華麗に空を舞った。彼女の動きに合わせるように、炎が影のごとく付き従い、敵へと降り注ぐ。
炎の弾丸が確実に相手を追い詰め、カルマの焔がさらに包囲を崩す。
炎と焔、影と闇――その戦場は混沌に染まる。
燃え盛る火光が黒き建物を照らし、静寂を支配していた闇が混乱とともに蹂躙される。
黒燈会の構成員たちは散り散りに逃げ惑う。だが、逃げ場はない。
カルマは火の粉を撒き散らしながら疾走する。
翼を巧みに操り、空間を縦横無尽に駆け抜ける。敵の攻撃を紙一重で避け、指先から放たれる炎が確実に標的を狙い撃つ。
その瞳は獲物を前にした猛獣のように輝き、唇の端には嗜虐的な笑み。
――この戦場は、まるで遊び場だ。
一方、炎は冷静に標的を探し出し、確実に銃口を向けた。
――狙いは外さない。
指が引き金にかかる。
轟音とともに、弾丸が正確に要害を貫く。
彼にとって、これは娯楽ではない。これは任務――ただそれだけだ。
炎の眼差しは冷厳に研ぎ澄まされ、すべてが彼の掌の中にあるかのように見えた。
火光と銃声が交錯する戦場の中、テーブルに残っていた符文と羊皮紙は完全に焼き尽くされ、儀式の道具は跡形もなく灰と化した。
黒燈会の構成員たちは次第に陣形を崩され、隠れ場所も、優位性も失っていく。
残された数名は明らかに動揺し、突然の襲撃に対応しきれず狼狽していた。
――その時。
カルマの目の端に、一人の構成員の動きが映る。
そいつは懐から、何かの符呪を取り出そうとしていた。
カルマは瞬時に反応する。
翼を広げ、一気に跳躍。
宙を舞うように高く跳び上がると、鋭く俯衝し――
「遅い。」
符呪を握るその手を狙い、一撃の蹴りを叩き込んだ。
符呪は宙を舞い、床に弾かれ転がる。
蹴り飛ばされた構成員は、恐怖に目を見開きながらよろめき後ずさる。
だが、カルマは迷わない。
掌に再び灯る焔。
――迷いなく、投げ放つ。
迸る火炎が敵を包み込み、抵抗の声すら焼き尽くした。
炎は静かに周囲を見渡し、敵が完全に制圧されたことを確認する。
ゆっくりとテーブルへと歩み寄り、散らばった灰の中を探る。
――だが、何も残っていない。
全ては焼き尽くされ、痕跡すら残されていなかった。
炎の眉がわずかに寄る。
この戦闘の結果に、彼は明らかに満足していなかった。
カルマが悪魔の翼を収めながら前へ進む。
倒れ伏した黒燈会の構成員たちを一瞥し、鼻で小さく笑った。
「ふん……」
嘲弄を滲ませた、軽い鼻息。
そして、隣に立つ炎へと目を向け、片眉を上げる。
「ちょうどいいタイミングだったわね。あいつらの茶番、見事にぶち壊してやったってわけ。」
炎は冷ややかに頷く。
その瞳には、未だに消えない疑念が渦巻いていた。
――今回の作戦で、たしかに黒燈会の儀式は阻止した。
だが、すべてが終わったわけではない。
やつらの野心は、こんなもので終わるはずがない。
二人は無言のまま建物を後にする。
崩れた瓦礫と焦げ跡を残したまま、その場を静かに去っていく。
夜の街は変わらず輝いていた。
ネオンが瞬き、喧騒が満ちるこの世界に、彼らの戦いの痕跡など何一つ刻まれはしない。
だが、彼らは知っていた。
――次の戦いは、もう始まっている。
建物を離れた後も、夜の空気には湿った霧が漂い、街全体を覆う目に見えないヴェールのように揺らめいていた。
カルマは気楽そうに前を歩く。
先ほどの戦いの余韻など、まるで気にも留めていないようだった。
両手を頭の後ろで組み、燃えるような長髪を肩に無造作に垂らしながら、唇にはどこか含みのある微笑を浮かべている。
その後ろを、炎が無言でついていく。
表情はいつも通り冷徹。
だが、その内心はまださきほどの戦いの余韻を引きずっていた。
黒燈会の動向――そして「力の源」の手掛かり。
あの時、焼き払った符文と儀式の道具は、単なる氷山の一角にすぎないかもしれない。
黒燈会の背後には、何かもっと深い企みがあるのではないか。
炎の思考が巡る中――
カルマがふと足を止め、振り返った。
やや退屈そうな眼差しを向け、わずかに眉を寄せる。
「ねえ、そんな渋い顔して、よく飽きないわね?」
炎は挑発に乗らず、静かに答える。
「今回の作戦は完全に成功したとは言えない。黒燈会の計画は、まだすべて明らかになったわけじゃない。」
カルマは肩をすくめ、気のない笑みを浮かべる。
「ま、好きにやらせておけばいいじゃない。私たちは任務を遂行するだけ。それ以上、あの狂信者どもの野望に付き合う義理はないでしょ?」
炎はわずかに顔をそらし、カルマを一瞥した。
その瞳に、一瞬の疑念がよぎる。
――彼女の性格は、よく知っている。
陰謀や計画など、彼女にとっては二の次。
カルマが求めるのは、何よりも刺激だ。
黒燈会の野望にも、大した興味はない。ただ、その過程で面白いものが見つかるかどうか――それだけが、彼女の関心事だった。
「でもさ……」
カルマが突然立ち止まり、炎に歩み寄る。
そして、少し声を潜めて囁いた。
「もしこの計画が本当に『力の源』に関係してるなら――ちょっとは興味あるかもね。その力で、本当に何かが変わるのかどうか。」
炎は沈黙する。
カルマの言葉を反芻しながら、思考を巡らせた。
彼の胸の奥に、漠然とした違和感が広がっていく。
――これは、単なる黒燈会の儀式や陰謀にとどまらない。
背後には、まだ見ぬ別の何かが潜んでいる気がした。
「どうせ、またやつらと遭うことになるだろう。」
炎がようやく口を開く。
その声は揺るぎなく、確信に満ちていた。
「次こそは、もっと核心に近づけるはずだ。」
カルマは小さく微笑む。
その表情には、炎の真剣な態度をどこか面白がるような色が滲んでいた。
「勝手にすれば?」
肩をすくめ、軽く笑う。
「私はただ、楽しめればそれでいいのよ。あなたがどこまで追いかける気かは知らないけど。」
その声音は、相変わらずの軽薄さを帯びていた。
まるで、黒燈会の陰謀など眼中にないと言わんばかりに。
――彼女にとって、黒燈会など所詮、道端の障害に過ぎない。
彼女の関心は、もっと別のところにある。
――父の行方。
炎は黙って彼女を見つめた。
胸の奥に、一抹の疑念がよぎる。
――カルマは、決して隠さない。
彼女の瞳に宿る、あからさまな軽蔑を。
人間の陰謀や策略など、彼女にとっては取るに足らないもの。
それらは彼女の目的とは何の関係もなく、ただの退屈しのぎにすぎない。
彼女がこの世界に降り立ったのは、たった一つの理由――父の行方を追うためだ。
それ以外のすべては、ただの気晴らし。
狭い路地を抜けると、喧騒の中へと戻る。
ネオンの灯りがまた視界に飛び込んできた。
闇の中で繰り広げられた戦いとは対照的に、街は何事もなかったかのように、今日も騒がしく、無関心に輝いている。
カルマの姿は、人混みに溶けるように徐々に遠ざかっていく。
炎はその背中をじっと見送る。
そこに芽生えた、言葉にできない何かを自覚しながら。
――今宵の戦いは、幕を閉じた。
だが、これは終わりではない。
黒燈会の陰謀、力の源の秘密、そして――カルマが抱える、漠然とした過去。
それら全てが絡み合い、深い霧のように彼の前に立ちはだかる。
答えを求めるならば、進むしかない。
※ ここまで読んでくれてありがとう!✨
これが私の初めての小説なので、ドキドキしながら投稿しました……!
まだまだ拙い部分もあるかもしれませんが、
これからもっとバトルシーンやキャラの掛け合いを楽しめるように頑張ります!
次回から、いよいよデビルハンターとしての戦いが本格化……!?
黒燈会の動きも見えてくるので、お楽しみに!
よろしければ、感想や応援コメントをもらえると嬉しいです!✨