⑨また、結びたくて──2
大変お待たせ致しました。
(待った方いるのでしょうか……?)
転職活動も終わったので、ちびちび書き始めました。
短いですが、生存報告代わりです。
お楽しみ下さい。
奥底まで透き通る一面の青に、細く漂う途切れた白。
見ているだけで、心が吸い込まれてしまいそうな、空の下で──。
「速い速い速いってぇっ!!?」
「ですねー。しっかり捕まっててくださぁい」
桃と緑。二色の線がくるりと舞いました。
青ざめた顔で目を回しながら、ロザヴィーはアンネスにしがみついていました。
一方アンネスは抑揚の無い声で応えます。
ざ・まいぺーす。
2人は『マシェット』と呼ばれるサーフボード状の乗り物に乗って、協会から造船所へと向かっていました。
大気中を漂う“魔力の波”に乗って、ぐんぐんと進んでいきます。地上から数十mも離れた上空で、とんでもなくアクロバティックに飛び跳ねて。
“シャッ! バッ!! ズサアアッ!!”
「ひゃっ! あっ!? ふああっ!!」
『マシェット』が風を切る音と、目を回した鳥のような声が、奇妙に交わっていました。
「ロザヴィーちゃん。そんなにくっつかれては、アンネスさん動きづらいのですよ」
「運転荒過ぎっ!! ま、前はもっと落ち着いてたじゃないですか」
ひゅうひゅう吹き荒ぶ風のなか、ロザヴィーは叫びました。
アンネスの風魔法が2人を支えていて、そう簡単には落ちないのですが、あくまで理屈の話。こうも引っ掻き回されては、たまったものではありません。
「ん~。そう言われましてもねぇ。どうにもこの子達が騒がしいのですよ」
アンネスが右腕を上げると、指先に虹色のもやがまとわりついて、すぐ散りました。
「アンネスさんもゴキゲン取りに必死なのです、はい」
「だったら降りて歩けば……」
戸惑うロザヴィーに、アンネスはきりりと言い放ちました。
「それに、これは作戦なのです」
「さ、作戦……っ?」
「アンネスさんもですね、工房長はまだ隠し事をしていると思うのです」
「そ、そのくらい、ティク兄ぃを見れば、誰だって……」
「ちっちっち。甘いですねロザヴィーちゃん」
アンネスはわざとらしく指を振ります。
「いいですか、大慌てでお使いに行かせたのは、人払いをするため。この後きっと、誰かと会うつもりなのですよ」
「誰か……って、手紙の送り主?」
「ええ。だから、“お使い”をササッと終わらせて、コッソリ覗いてやるのです」
「そ……そんな上手くいかないんじゃ……」
「さあさあ、万事アンネスさんにお任せですよー」
そう言って、グッとポーズを決めるアンネス。
懐から、ポロリと布袋がこぼれ落ちました。
「おっと、せっかく頂いたクッキーが」
「はぇっ……!? いやぁあーーっ!!!!?」
『マシェット』の大回転に合わせて、大きな悲鳴が響き渡るのでした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……はぁ、五月蝿ぇ鳴き声だ」
──咥えた煙草。
漏れ出た煙が、ゆらり。
男が一人、空を舞う“小鳥達”を睨む。
ぎらついた瞳を隠すように、鍔の大きな魔女帽を下ろした。
“協会本部”を取り巻くように立ち並ぶ魔法工房、その中でも一際高い屋根の上。
黒色の長いコートと青紫色のスカーフをたなびかせて、大きく細長い鞄を肩に掛けながら、男は立っていた。
「じれってぇ。……今すぐブチ抜いてやろうか」
歪めた口から漏れ出た呟き。応えるように、大きな声が聞こえた。
『あっ、アロンソ隊長っ!? まだ俺達、準備出来てないっすよっ!!』
男は煩わしそうに、胸ポケットから通信石を取り出すと、薄緑色に光る石に向かって、牙を剥いた。
「解ってんならさっさとしろや!!!」
『ひっ……! はいぃっ!!』
大きく舌打ちをすると、投げ捨てるように石を戻した。
「……愚図でノロマ、役立たずの足手まとい共が……」
魔法薬の酸っぱい匂い。
肌に爪立てるような魔力の流れ。
聞こえて来る魔術師達の声。
止め処無くあふれる殺意を、抑えなければならない状況が、男を苛立たせる。
ましてや、無能な部下のせい。
「使えねぇ使えねぇ使えねぇ使えねぇ……っ!!」
血走った目で、黄色い髪を乱雑に掻きむしり、噛みちぎらんばかりに自分の指に牙を立てる。
しかし、ふと自分の状況に気づいたのか、どこかから筒を取り出すと、中から白い薬を出して、飴菓子のようにボリボリと噛み砕いた。
「あぁ……駄目だ駄目だ。何を焦ってるんだ……!」
諭すような声で独りごちながら、傍らの鞄の留め具を外すと、中から取り出した部品を組み立てていく。
指先は震えど、動きに淀みはない。
「……今日は良い日だ。良い日にするのさ。なぁ……!?」
滑らかな木で出来た持ち手に、無機質な光を放つ金属製の筒。
出来上がった“それ”と、青白く光るガラス管を交互に眺めながら、男は目を細めた。
魔銃。
魔法が全てを司る“砂天楼”に、突如現れた新しい殺意だった。
もし、宜しければ、ブックマークや感想、下の評価で★5をお願い致します。連載の大きな励みになります。




