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とんでもない提案

「偽装婚約からの偽装結婚…?」

突然言われたことの意味が分からず、綾乃は困惑した。この従姉妹兼親友はいったい何を言い出したのだろうか。

「綾乃は私と違ってどうせ梅園のためにまた婚約者を充てがわれるでしょ。しかもそれに従うでしょ」

「まあ、それが義務だから」

「でも恋愛はできないし、恋愛じゃなくても束縛は嫌なんでしょう? だから私、万が一の事を考えていろいろ調べてたのよ」

「調べてって…なにを?」

「だから、綾乃と良好な偽装結婚をしてくれそうな相手よ!」

「はあ?」

はしたなくも思わず綾乃は声を驚きに声をあげてしまった。口元をそっと抑えつつ公香に顔を寄せる。

「公香、あなた何を言いだしたの」

「綾乃って、見てて危なっかしいのよ。あのクソ野郎ってほんとクソ野郎だからね。クソってクソを更新してくから、あのまま結婚してたら本当にヤバかったと思うのよ」

「そうかしら?」

「そうよ。お節介なのは百も承知なんだけど、私は綾乃が好きだからクソとは一緒にいてほしくないの。私は私の好きなものを侵害されるのが許せない人間だから」

キッパリと言い切る公香に綾乃はほんのり頬を染めた。

「だから家柄も人柄も良くて、でも義務として政略結婚をしなきゃいけない物件を探してたのよ。最近ではそういうの少なくなったし、政略結婚を考えてるような家にはもう婚約者がいたりするからなかなか大変だったけどね。でも学園にいたのよ、超優良物件が」

「ちょうゆうりょうぶっけん」

「葛城財閥の御曹司で生徒会長の葛城宗也さまよ」

「かつらぎそうやさま」

話の展開についていけず綾乃は公香の言葉を復唱した。葛城財閥と言うと、梅園や有馬より格上の名家である。加えて、葛城宗也と言えば一学年上の先輩で生徒会長を務める、眉目秀麗文武両道で女子生徒からも男子生徒からも絶大な支持を誇る完璧超人だ。元婚約者など目ではないくらいのハイスペック様だ。

「けっこう有名な話なんだけど、葛城さまは跡継ぎとして結婚をしなきゃいけないのに本人は頑なに拒否しているらしいのよ。噂だと思い人がいるんじゃないかって言われててね。で、私この間打診してきたのよ。うちの綾乃と偽装結婚はどうですかって」

「公香!? あなたさっきから何を言ってるの!? というか何をしてるの!?」

謎の行動力に綾乃は思わず身を乗り出した。

「それでね、綾乃と会って話がしてみたいってなりました」

「なぜ!?」

「綾乃の婚約者への興味のなさに興味を持ってくれたから」

「どういうことなの!?」

先ほどから普段では考えられないほどに声を荒げてしまっている。若干喉が痛くなってきたが、綾乃はそれどころでは無かった。話の展開のスピード感についていけない。

「私から葛城さまの事情を説明するのはあれだから詳しくは言わないけど、自由な婚約と自由な結婚生活を目指すなら葛城さまはかなりおすすめよ」

「でも…葛城さまなら良い縁談なんて履いて捨てるほどあるでしょう?」

「そうかな? 恋愛感情を求めず束縛を求めず、性生活も求めないけど後継は産んでくれる、なのにそれを全く少しも一ミクロンも気にしない相手なんてそう滅多にいないと思うけれど」

「……葛城さまは私と同じってことかしら?」

「ちょっと違うかな。葛城さまには執着する相手がいるから他は必要ないのよ」

「なるほど…」

思い人がいるという噂が真実ということか。

なんらかの事情があってその方とは婚約も結婚もできないからお飾りの妻を欲しているというのなら、確かに綾乃にとって悪い話ではない。むしろ1番望む形の縁談になるだろう。

「もし婚約すれば、クソ野郎への牽制になるわ。私もできるだけ綾乃から離れないようにするけど、穴は必ず出てくるもの。できる対策があるならするべきよ」

「……公香はどうしてそんなに私に良くしてくれるの? 何も返せてなくて申し訳ないのだけど」

「そんなの簡単、私が綾乃が大好きだからよ」

ふふん!と自慢げに公香が笑った。美人で明るい従姉妹は男女問わず人気者だ。ひっそり生きることを目標とする綾乃とは正反対なのに、いつでもこうして綾乃を守ってくれる。それが不思議でならないが、その気持ちが嬉しくないはずがない。

綾乃は嬉しさとこそばゆさで自分の顔が赤らむを感じて俯いた。

「私も公香が大好きよ」

公香なら、いつメッセージが来ようか、いつ会いに来てと言われても気にならない。他の誰に言われても煩わしいそれが、公香なら大丈夫。だから、綾乃は公香が大好きで、大事なのだった。

それを綾乃が伝えると、公香はとても幸せそうにはにかんで「知ってる」と呟いた。

「じゃあ綾乃の了承も取れた事だしさっそく明日にでも葛城さまに会いましょう」

「明日? ずいぶん急ぐのね」

「だからあのクソ野郎への牽制のためよ。綾乃は分かってないけど、アイツの歪んだ執着を甘く考えない方がいい。婚約解消だってたぶん考えてもみなかったんじゃないかしら」

「あんなに不満そうだったのに」

もし公香の言う通りなら迷惑な話だ。自分に執着しないところが元婚約者の唯一の取り柄だったというのに。本当にガッカリである。

「でも葛城さまは大丈夫なの?」

「さっき連絡したら大丈夫だって」

「行動力がありすぎるのよ」

でもまあ、早くて悪いことはないだろう。実際に婚約するにしろしないにしろ、宙ぶらりんにするのはよくない。

「でも分かったわ。明日葛城さまとお話ししてみる」

きっと公香が勧めるのなら、悪いようにはならないだろう。綾乃は覚悟を決めて頷いた。

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