表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

モーテル

 モーテルとは、ドラゴンや小型飛行機等を停泊させるガレージと、宿泊施設が一体となった施設のことである。

 基本的に少人数の旅人専用の施設だが、その割に必要な土地面積が広いため、そう多く見かけるものではない。

 その時リィルアとジェインが宿泊したモーテルも、久しぶりに見つけたものだった。

 案内された部屋の様子を見て、ジェィンは思わず顔を顰める。

 宿は、お世辞にも質がいいとは言い難いものだった。壁や天井、調度品の一つ一つに至るまで、年季とこれまでの雑な扱いが感じられる。申し訳程度の照明が汚れや埃を浮き上がらせるせいで、低質さがより際立っていた。


「……なあ、流石にこの宿は如何なものかと思うのだが」


 案内人が立ち去ったのを見計らって、ジェインは口を開いた。

 その言葉に対し、リィルアは何食わぬ表情。


「どうして? ベッドがあるし、雨風凌げるし、扉に確り鍵もかかる。最低限は揃ってるよ」


 余りに欲を欠き過ぎた言動だ、とジェインは思った。


「最低限なら、普段の野宿もそうだろう。折角町に泊まるんだ、もう少し休める場所を選んでもいい筈だ」


 リィルアは、大げさに肩を竦めてみせる。


「確かに一理あるけど、僕はさ――」


 一度言葉を切り、粗末で薄いマットレスが敷かれたベッドに歩み寄った。そしてそのまま、ベッドの端に座る。


「ベッドがある部屋にジェインが居てくれるから、絶対ここがいいと思ったんだ」


 そして、身振りでジェインを傍に呼んだ。

 ジェインは大人しくそれに従う。既に、リィルアに何かを言う気は失せていた。

 リィルアは、ジェインに付けられた龍具をテキパキと外していく。

 それが終わると、ジェィンの口吻に腕をまわし、そのまま仰向けに倒れた。

 リィルアの動きに合わせて、ジェィンは上体を前方に差し出す。

 最終的に、リィルアが寝転んで、ジェインの口吻を抱く姿勢になった。

 ジェィンは目を閉じ、顎下の皮膚でリィルアの鼓動を感じる。

 暫くそのままの姿勢で、二人とも動かなかった。

 その後、最初に動いたのはリィルア。腕に力を入れてぎゅうとジェインを抱きしめ、その後大きく息を吐いて脱力した。

 ジェインは目を開け、リィルアの顔を見る。

 リィルアは目を閉じていた。


「……落ち着いたら眠くなった」


 重たそうに開かれたリィルアの口からは、そんな言葉が漏れてくる。

 ジェインはリィルアの顔を少しの間見つめた。


「ゆっくり休んでくれ」


 その言葉に、リィルアの口角が少し上がる。できることなら、ありがとう、と言いたかったのだろう。

 ゆっくりと寝息を立て始めたリィルアを暫く眺めた後、ジェインは静かに目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ