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ノマドファミリー  作者: 中山恵一
16/17

誤霊、氷魚


文芸部で一緒になった人々の内、とある一人が言い出した。


「肝試しスポット探索してみね?」


『「は?」』


居合わせた人間が全て同じ反応。


”何を言い出したんだ? このアフォは?”


顔に書いてあるような表情だ


「今年、流行の転生ファンタジーのキャラクターとか

 夢のある物語を黙々と考えていても


 なーんか煮詰まって同じような


 面白くも なんともないアイデアしか出なくて


 結局、何年か前に卒業した先輩が書いた作品の中から


 多数決で一番、面白いって事になった作品の

 現代パロディを書いてページ数を稼いで


 秋の文芸部冊子を発行しようかー


 なんて不毛な事を語りだしてしまうよりは

 マシなんじゃないかと思うんだけどねー」



「んだから、その肝試しも何年か前の世代で


 Jホラーとか言って、日本のホラー映画が

 ハリウッドでリメイクされたりとかして


 文芸部発表雑誌 秋号もホラー小説だらけになった頃に


 実施されていた内輪の迷信ってか遊びでしょ」



「うん、そうだよー


 ”アヤマレイ”っていう化け物がいるという山の祠へ行って


 誰が ”謝霊”に、トリツカれて、情けなく申し訳なく

 一生、色んな人々に謝り続けるだけの人生になるか


 誰が ”誤霊”に、トリツカれて、道を誤り

 人生の重要な選択を誤り続ける人生になるか


 数年後の文芸部OB会で集まった時に結果が理解できるという

 我が部に代々、伝わる伝説だ」




「くっだらね。何人かが集まれば


 高校を卒業してからの数年の過ごし方を誤る人間もいるし


 同業者団体内で立場の弱い会社に入社して

 同業者の言いなりになって

 ”オマエラのせいだ”と毎年、不都合を押し付けられて


 毎年、自社から全ての不都合の責任をかぶる人間を出して

 会社に残る人間が謝って回るような会社の社員になってしまう人もいるだろうよ


 そんな ”アヤマレイ”スポットより


 氷魚、”ヒオ”スポットにしない?


 このスポットへ釣りに出かけると

 誰かが、そのヒオを釣り上げる


 そして釣り上げた人間は、一生、その釣り上げた氷魚にトリツかれ・・・」



「トリツカレて、どうなるって?」


「ありゃ? 書いてないな、この逸話だけ」



「だけど、よく考えたもんだよね。


 言われてみれば、そうそう、こういう事ってアルアルってな


 内輪の学校内の迷信をさ。


 どうせ、その氷魚ってのも、高校3年生の一年とかに

 よくありがちな作り話なんだろ?」



「そりゃ、そうでしょ、まだ2年生だから、ピンとこないかもだけどねー」



「つか、卒業して、就職にも進学にも失敗して

 世の中がアフォに冷たいのを思い知らされた人が

 元同級生に出たOBとかが企画だけ考えて


 その御題を元に大量に同じような事を書かれた内の一本だろ


 世の中は無能なアフォに冷ややかで冷たい


 そして冷酷さが冷たい出来事を呼び


 冷たい出来事が更に心を冷やしていって冷酷さを加速させる


 で? これは一体、何が原因なんだろう? よくワカラネ


 そうだ氷魚っていう妖怪のせいにしよう


 てなワケで世の中の冷たさを凝縮したような物語を

 誰かが書いたけど


 しばらくしてから誰かに何かを言われて恥ずかしくなって

 黒歴史にしか思えなくなって、物語の起承転結の起の部分だけを残して

 全部、消したんだろ。この文芸部デジタル・アーカイブからっさ」



「まあ、どんな事があったかは置いといて


 この通りに肝試し夜釣りに行ってみる?

 誰が氷魚にトリツカれるかってさ」



「どうせ、何が、どうなるワケでもない暇つぶしなら

 夜釣りに行くだけで良さそうなソレでいいかな

 活動報告にも一応は書ける事だし


 出かけた内輪の出来事をエッセイ風にまとめて

 文芸部発表雑誌 秋号に掲載してもイイわけだし」



「あ。んじゃ、それ俺が書くって事でいい

 ネタ切れで書くことが無いから」



「ん? いいよ。”氷魚を探した夜”とかいうタイトルで


 毒も無く薬にもならないPTAとか先生とかにウケる感じで


 在校生やOBに、ツマラネーとか、刺激が足りねーとか

 物足りないとか言われるくらいでいいから


 なんなら現代国語の教科書で皆様が馴染んだ

 教育界の先生、御推薦の世界のパロディくらいでも いいから」



「マジ? それでいいなら、そうするけど楽だから」


「本当に、それでいいんですか? 部長?」



「うん、いいよ。今年の編集責任者になった俺がイイってんだから イイ


 そういうのが目次の中に一つは含まれててもイイ

 よし決まり。というワケで他の人は同じようなエッセイ書くのは禁止な


 プリンターで印刷してコピー機でコピーして

 文芸部の部室に運び込むのは9月下旬に実行される文化祭の一週間前


 まだ2ヶ月は時間があるんだから、頑張って面白い物語を考えよー」




「先週、地元の同業者団体に取材して書いたのも

 同じような現実感あふれるエッセイっぽいのになるかもですけど

 それは、どうするんですか?」



「んー、それはー、同業者団体で一番偉い人や

 歴史ある伝統企業な人々を貴族や王族な事にして


 底辺労働者な人々を、その王国の市民という事にして


 一般消費者向け販売をしている豪腕な女社長を

 一番、魔力を持った魔女という事にでも差し替えて


 高卒で同業者団体に飛び込んだ先輩を

 主人公の冒険者って事にでもしてファンタジー風にすりゃイイ


 って事になって書いてるから。だよな?」


「はい」


というワケで週に一回の夏休み中の部活動が終わった。


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