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月は放課後 夢をみる  作者: 金華鯖
1 月はまた昇る
8/10

1ー7 向かうべき場所

 昼休み心機一転した私は、午後の授業を快調に進める。


 「 ありがとうございました!! 」


 これで今日の授業は、全て終わり。いつも通り騒がしい放課後。これからの予定を話している生徒や、部活に行く生徒。そんな生徒達を横に掃除を始める今週の掃除担当。


 「 ほ~ら、用が無い人達は早く帰ってね 」


 とりあえず、お決まりのセリフは言ったから、私も職員室に戻ることにした。たしか、今日は緊急の職員会議があるとかないとか。












 「 ____で、あるからでして… 」


 話が長い。

 生徒指導担当の先生が、なにやら熱く語り始めたお陰で、会議が長引く。千里(ちさと)先輩の方に目をやると、先輩はとっくに聞く耳を持っていないようだ。

 先輩が私に気付くと、スマホを見ろとジェスチャーをしている。スマホをポケットから取り出すと、同時に二つに折られた紙切れがポケットから落ちた。


 ( これ、なんだっけ? )


 紙切れの中身を確認すると____




 沙月(さつき)先生へ


 放課後、例の教室にいます


 いつまでも待ってますよ♥️




 中を見て思い出した。この紙切れは、午前中に美月(みつき)が渡してきたものだ。


 ( やばい、すっかり忘れてた!! )


 時刻は17時半。もう、一時間半は会議をしている。

 いつまでも待ってると書いてるけど、本当に待っているか。

 昨日までの自分は、たぶん行けなかった思うけど、今は昨日までの自分と全く違う。私は、生まれ変わった。前に進みだした。だから会いに行く。あの二人とちゃんと向き合う。私の夢と生徒の夢、二つの夢を叶えるために。

 とか、意気込んでいったのに、この事態。絶対にあの二人は、また逃げたとか思ってるんだろうなと思いながら、一件のメッセージに気づく。

 

 【 行くところが、あったんじゃないのか? 】


 千里先輩だ。そういえば、このメモを貰ったこともお昼に話したから、いろいろと察してくれているのだろう。


 【 私が、なんとか言っておくから、行ってこい 】


 続けてメッセージがきた。先輩は、早く行けよと手をヒラヒラさせている。私は、先輩の厚意に感謝をしながら、急いで職員会議を抜けることにした。

 急に席を立った私は、当たり前のように先生達の注目の的になる。


 ( ひぃぃぃぃ )


 途中で会議を抜ける緊張と、少しの焦りを感じつつ、会議室をあとにする。出ていくとき、何を言っているかはわからなかったが、先輩が弁明しているのもわかった。


 ( ありがとうございます、先輩…… )


 全力で廊下を駆け抜ける。

 生徒に注意しておきながら校内を全力で走る教師。

 廊下は走るな。


 そんなこと、いまの私にはどうでもいい。


 心臓が高鳴る。


 あの頃に戻った気分。


 早くあの場所へ。


 あの日の二人もいた、二人が待つあの教室へ____

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