1ー7 向かうべき場所
昼休み心機一転した私は、午後の授業を快調に進める。
「 ありがとうございました!! 」
これで今日の授業は、全て終わり。いつも通り騒がしい放課後。これからの予定を話している生徒や、部活に行く生徒。そんな生徒達を横に掃除を始める今週の掃除担当。
「 ほ~ら、用が無い人達は早く帰ってね 」
とりあえず、お決まりのセリフは言ったから、私も職員室に戻ることにした。たしか、今日は緊急の職員会議があるとかないとか。
「 ____で、あるからでして… 」
話が長い。
生徒指導担当の先生が、なにやら熱く語り始めたお陰で、会議が長引く。千里先輩の方に目をやると、先輩はとっくに聞く耳を持っていないようだ。
先輩が私に気付くと、スマホを見ろとジェスチャーをしている。スマホをポケットから取り出すと、同時に二つに折られた紙切れがポケットから落ちた。
( これ、なんだっけ? )
紙切れの中身を確認すると____
沙月先生へ
放課後、例の教室にいます
いつまでも待ってますよ♥️
中を見て思い出した。この紙切れは、午前中に美月が渡してきたものだ。
( やばい、すっかり忘れてた!! )
時刻は17時半。もう、一時間半は会議をしている。
いつまでも待ってると書いてるけど、本当に待っているか。
昨日までの自分は、たぶん行けなかった思うけど、今は昨日までの自分と全く違う。私は、生まれ変わった。前に進みだした。だから会いに行く。あの二人とちゃんと向き合う。私の夢と生徒の夢、二つの夢を叶えるために。
とか、意気込んでいったのに、この事態。絶対にあの二人は、また逃げたとか思ってるんだろうなと思いながら、一件のメッセージに気づく。
【 行くところが、あったんじゃないのか? 】
千里先輩だ。そういえば、このメモを貰ったこともお昼に話したから、いろいろと察してくれているのだろう。
【 私が、なんとか言っておくから、行ってこい 】
続けてメッセージがきた。先輩は、早く行けよと手をヒラヒラさせている。私は、先輩の厚意に感謝をしながら、急いで職員会議を抜けることにした。
急に席を立った私は、当たり前のように先生達の注目の的になる。
( ひぃぃぃぃ )
途中で会議を抜ける緊張と、少しの焦りを感じつつ、会議室をあとにする。出ていくとき、何を言っているかはわからなかったが、先輩が弁明しているのもわかった。
( ありがとうございます、先輩…… )
全力で廊下を駆け抜ける。
生徒に注意しておきながら校内を全力で走る教師。
廊下は走るな。
そんなこと、いまの私にはどうでもいい。
心臓が高鳴る。
あの頃に戻った気分。
早くあの場所へ。
あの日の二人もいた、二人が待つあの教室へ____