表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月は放課後 夢をみる  作者: 金華鯖
1 月はまた昇る
3/10

1ー2 それは、ある日の二人のような①

前話もよろしくお願いします。

 思いのほか仕事が早く片付き、久しぶりに早く変えれることになった。

 帰ったら、溜まった今期のアニメでも消化しようか。そんなことを思いながら、コンビニで缶酎ハイとおつまみを買い、いつもの景色を眺めながら川沿い歩く。

 河川敷のグラウンドでは、野球やサッカーをする小学生。ランニングをするおじさん。土手でおしゃべりをする女子学生に、男子学生。自作の歌だろうか、少女が一生懸命アコースティックギターを奏でながら歌っている。


 「 青春だな…… 」


 自然とそんな言葉が溢れた。


 「 さあ、早く帰ってアニメでも観よ!! 」


 「 沙月(さつき)先生? 」


 背後から私の名前を呼ぶ声が。

 振り替えると、ツインテールに大きな瞳。誰が見ても可愛いと思う少女に、長い黒髪にメガネを掛け、悪く言えば暗い印象すら感じる少女の二人がいた。二人ともうちの高校の制服を着ている。


 「 沙月先生、こんなところでなにしてるの? 」


 話しかけたきたのは、ツインテールの少女だった。


 「 あら、美月さん。いま、帰り? 」


 たしか少女の名前は、山内(やまうち) 美月(みつき)。明るくて誰にでも優しい。ツインテールがチャームポイントのクラスでも人気の生徒だ。


 「 ちょっと、寄り道してて 」


 「 そうなのね 」


 へへへ、と笑いながら答える美月に、私も微笑み返してみる。


 「 先生、今日は早いんだね!! 」


 「 えぇ、今日は仕事が早く片付いてね 」


 教師と生徒の他愛もない放課後の会話。そんな日があっても、悪くない。


 「 ほら~、理夢(りむ)もなんか話しなよ 」


 美月が黒髪メガネの少女に話しかけるが、少女は美月の後ろに隠れてしまった。


 「 もう~、ごめんね先生。この子、とってもシャイなの 」


 黒髪メガネ少女の名前は、下山(しもやま) 理夢(りむ)。この子のクラスに、何度も授業に行っているけど、正直あまり印象にない。

 でも、改めて近く理夢を見ると、スラッとした体型にツヤのある長い黒髪。極めつけは、長い前髪とメガネの下に隠された整った顔。綺麗な二重に、長い睫毛(まつげ)。磨いたら、とんでもなく化けそうだ。


 「 …………さん 」


 「 ん? 理夢なんて言ったの? 」


 「 さ、沙月さん!!!! 」


 第一印象からは想像できなくらいの大きな声。


 「 う、うん、沙月先生だよ? 」


 「 違うの!! そうじゃなくて!! 」


 少し引いた様子の美月を余所に、頬を赤らめている理夢は私の顔をじっと見つめる。


 次の瞬間だった。理夢の口から、予想外の言葉が飛び出した。


 


 「 さ、沙月先生………… 」




 「 せ、声優の山田 沙月って、先生ですよね? 」



 夕焼けに染まった理夢の顔は、興奮から一転、真剣な表情そのものだった。



 三人を包む静寂のなか、子供たちの声。ランニングの足音。ギター少女の歌声が三人の耳に響いている。

感想、意見お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ