1ー2 それは、ある日の二人のような①
前話もよろしくお願いします。
思いのほか仕事が早く片付き、久しぶりに早く変えれることになった。
帰ったら、溜まった今期のアニメでも消化しようか。そんなことを思いながら、コンビニで缶酎ハイとおつまみを買い、いつもの景色を眺めながら川沿い歩く。
河川敷のグラウンドでは、野球やサッカーをする小学生。ランニングをするおじさん。土手でおしゃべりをする女子学生に、男子学生。自作の歌だろうか、少女が一生懸命アコースティックギターを奏でながら歌っている。
「 青春だな…… 」
自然とそんな言葉が溢れた。
「 さあ、早く帰ってアニメでも観よ!! 」
「 沙月先生? 」
背後から私の名前を呼ぶ声が。
振り替えると、ツインテールに大きな瞳。誰が見ても可愛いと思う少女に、長い黒髪にメガネを掛け、悪く言えば暗い印象すら感じる少女の二人がいた。二人ともうちの高校の制服を着ている。
「 沙月先生、こんなところでなにしてるの? 」
話しかけたきたのは、ツインテールの少女だった。
「 あら、美月さん。いま、帰り? 」
たしか少女の名前は、山内 美月。明るくて誰にでも優しい。ツインテールがチャームポイントのクラスでも人気の生徒だ。
「 ちょっと、寄り道してて 」
「 そうなのね 」
へへへ、と笑いながら答える美月に、私も微笑み返してみる。
「 先生、今日は早いんだね!! 」
「 えぇ、今日は仕事が早く片付いてね 」
教師と生徒の他愛もない放課後の会話。そんな日があっても、悪くない。
「 ほら~、理夢もなんか話しなよ 」
美月が黒髪メガネの少女に話しかけるが、少女は美月の後ろに隠れてしまった。
「 もう~、ごめんね先生。この子、とってもシャイなの 」
黒髪メガネ少女の名前は、下山 理夢。この子のクラスに、何度も授業に行っているけど、正直あまり印象にない。
でも、改めて近く理夢を見ると、スラッとした体型にツヤのある長い黒髪。極めつけは、長い前髪とメガネの下に隠された整った顔。綺麗な二重に、長い睫毛。磨いたら、とんでもなく化けそうだ。
「 …………さん 」
「 ん? 理夢なんて言ったの? 」
「 さ、沙月さん!!!! 」
第一印象からは想像できなくらいの大きな声。
「 う、うん、沙月先生だよ? 」
「 違うの!! そうじゃなくて!! 」
少し引いた様子の美月を余所に、頬を赤らめている理夢は私の顔をじっと見つめる。
次の瞬間だった。理夢の口から、予想外の言葉が飛び出した。
「 さ、沙月先生………… 」
「 せ、声優の山田 沙月って、先生ですよね? 」
夕焼けに染まった理夢の顔は、興奮から一転、真剣な表情そのものだった。
三人を包む静寂のなか、子供たちの声。ランニングの足音。ギター少女の歌声が三人の耳に響いている。
感想、意見お待ちしております。