清明様の憂鬱 特別篇 青龍と天使 96
「何でだ?ハリエットにも、そういう力があったのか?」
「そうじゃないよ、特別な事じゃない、ハリエットは父しか見てなかったじゃないか?」
「ああそうだった、だからうすうす、感づいたのか?」
父のいないときは いつも、楽しそうにに野菜や花を植えていたハリエット
それが趣味だと言った
ハリエットの生まれは貧しく、閉鎖されたレンガの鉄工所や、赤くさびた製鉄所ばかりで
みすぼらしく、寂しい街だと言った
誰も花など植えたりせず、また花の似合わない街だと言った
自分の植えた花が咲くととても喜んだ、自分の作った野菜のサラダを取り分けるときにも
それから、父が美味しいというとまるで少女にもどったように顔を赤らめて笑った
休日には、手作りのハーブで丁寧にお茶を入れ、夜には父とウイスキーを飲むこともあった
日常の当たり前な日課を楽しみ何一つおざなりにしなかった
ハリエットの絶望はどんなに深かったのだろう
僕たちは何とか救いたかったが、 誰も救えなかった。
父以外は、もう帰ってこない父以外、救えないことは分かっていたんだ
あの冷たい手の感触までおぼえている
どうしてだろう 俺はレグの顔を見た
レグも哀し気な目をしていた、郷愁でいっぱいの・・・・
「レグ、俺はあそこにいたのか?」俺は聞いた
俺は、自分自身が何者か、どこから来たかもわかっていないのに
レグがしっかりとうなづいた




