清明様の憂鬱 番外編 青龍と天使⑨
いつの間にか 風呂につかったまま眠ったようだ
ドアをどんどんたたく音で目が覚めた
「早く出なさい もう夜なんだから」狐の声がした
そうだ今日は約束があると思って風呂から出て普通に歩いているのに気づいた
足はもう痛くない なんだか悔しいな なんでだ
バスローブを着て出て行くと狐がドアの外から言った
「ベッドの上に服があるから来て」
ベッドの上にたたんだ服が置いてある
黒のシャツにパンツ 「スーツじゃないのか?」というと「それは天使さんに選んでもらえば」
ドア越しに声が聞こえる
服を着終わると薄い紫のふんわりしたワンピースを着た狐が入ってきた
完全に狐から葛の葉に戻っている そうだ怪我とかしていないと優しくないんだこいつは
さっきのがっかりの原因がわかった
「あのね これ見て」地図を出しながら言った
あちこちにいろんな色で書き込みがしてある
狐は器用に髪を一房取ってはくるくるとねじって取っては真珠のついた小さなピンでとめ
もう一房取っては止めそれを繰り返しながら言った
「赤い線が退路 ビルの地下は水を引くためにつながっているから 青く囲ってあるのは人間でない者
が多くいるところ 緑は危ない人間が多いところこれだけ頭に入れといて」
「お前 よく調べたな まだ一日しかたってないぞ お前の一日は何時間あるんだ」
「わしゃ 臆病なんじゃ お前が風呂で5時間も6時間も暴れまわっている間に調べてきた
それにこの街はいろいろわかりやすいぞ 外に出ればわかる」ちょっとニヤッとしていった
「それから 天使さんの名前聞いた?」
「あ、まだ」
「やっぱり あのさ疑うわけじゃないけどキリスト教でもいろいろ入り組んでてね
堕天使と言うのがある これは天使に生まれながら神を嫌ったり揉めたりしてこれが悪魔になるらし
い」
「昨日 なんか見えたのか?」
「まあ、見えたわけじゃないが なんで彼は天国に行かない? そっちのが居心地がいいと思うけど」
「そういえば そだな」
「なんかに囚われているのかも こっちには沸点が低いのが多んじゃ 肉食だからかな?」
「白虎はいつも人肉食系男子に追われているぞ それから玄武様なんて水草みたいのばかり食べてるの
に 人に釘を打ち込んだりするじゃないか」
「あれは 水草じゃなくてもずく酢」葛の葉が笑いながら言った
「考えすぎしれんが 話をよく聞いてそんで楽しんでおいで わしも出かける」
その時ドアをどんどんたたく音がした