清明様の憂鬱 青龍と天使 85
葛の葉が何も言わず、普段どうりなので俺も何も言わなかった
きっと来るのは、ハリエットかレグのお父さんだと思った
きっとまた律儀にお礼に来るのだと思った。それとももうすでにレグが天国で何か手柄を立てたのかも
しれない。
俺はもう夢の中のような、小さい無邪気な子供ではないけれど、あの二人に会えることは嬉しい
(きちんとしてお行き)その言葉がよみがえった
タンスの中からダッフルのコートが出てきた
確か何十年も間に買ったものだが、一度も来てないし、流行がまた一巡してるのでいいとしよう
同じ色のキャップもあるし、まさかスーツでいくわけにもいくまい
黄竜は中国から来たと言った竜で、坂の真ん中の神社に住んでいる
昔、ジャッキーチェンにあこがれてた俺は、何度か尋ねたが無口で、言葉がわからないのかと思って
思念で話しかけても、返事がない
筋肉隆々だが背は小さく、一度肉まんを差し入れたときは大喜びしてよくしゃべったが
季節の変わり目には、肉まんを食べると十円玉で車に傷をつけられるとか、いきたタコににくまんを
あげると、カンフーの上達が早いということわざがあるとか (どこの国のことわざかまでは聞けなかっ
た)
とりあえず、喜んでいたのは分かったのでまたにくまんをもっていくと、ことわざで季節の変わり目
の肉まんを食べると早死にするとか言い出して、落ち込んだり、まったく言ってることがわけがわからな
くて、嫌な奴ではないが誰も歩み寄れなくなった
ただ、神社の裏になぜかいつも大量のエロ本が捨ててあったので子供たちのたまり場にはなっていた
が、今もそうなのだろうか?
俺もしばらく行ってない
おまけに、いつもほとんど出かけていていない
たぶん今日もいないだろう
ちょっと時間は速かったが、俺はコートに丁寧にブラシをかけて、帽子に髪を押し込んで
ぶらぶらと歩いて家を出た




