清明様の憂鬱 特別篇 青龍と天使 83
「青龍」聞きなれたが、どこかしゃがれたような声がした
「葛の葉か?」俺はまだ チョココロネのままコロコロ転がって言った
葛の葉は氷漬けにされてからどうもまだ、体調がよくないらしい
おまけに石榴姫からの襲撃を受けた、お茶室は戦闘腑女子狐たちの必死の守りもむなしく
激しく損傷し、狐たちも傷を負ったうえ、解凍された葛の葉は、稲荷様に人の形がなくなるまでののし
られた挙句クール宅急便の着払いで送り付けられたらしい
それ以来、ぼんやりと無口になった
最もそのほうが優美で柔らかい感じがしていい、とか陰では、言われている。
「明日の夕方ごろだけど、来客があるのできちんとしておいき」と葛の葉の声がした
とうとつな、言葉よりもその声が気になった。
ほのかな、明かりがちらちらと浮きつ沈みつ、どこからかふつふつと懐かしい情が上がってくる
「暗闇坂の黄竜の神社の先の坂を上がっておいき」
「時は」
「逢魔が時の闇が下りる前、必ず必ず、上がってお行き」
しばらく黙った後
「おやつをおいておくから」
その一言でそれが、誰か思い出した
ミズ、ハリエットだ
慌てて、起き上がって戸を開けた
もう誰もいず、まっ暗い廊下に白い布がひるがえるのが、ちらりと見えた
足元に布のかかったトレイが置いてある
部屋にかえって布を開けると案の定、レーズン入りのスイートポテトだった
それはとても懐かしい味で、俺はそれをゆっくりと食べた




