清明様の憂鬱 特別篇 青龍と天使 53
水でできた竜の上に片膝立ちの青龍が現れた
刀の切っ先を中断より少し上げ左に寝かせる
これが自分の正眼の構え、そこから大きく跳躍して最初の一人を唐竹割に切り下げた
青龍の剣は白虎の様に人を威圧するような、偉丈夫でないぶんこういう室内の限られたスペースで威
力を発揮する
月は真後ろで、計算されたとおりにこうこうと輝き地獄の業火のように夜を満たす
その光のおかげで邪悪なものが砂の下で右往左往するのが見える
後ろにいつの間にか薙刀を構えた幻惑的な葛葉が現れた
(わしが援護する、落ち着いていけ)
(もう落ち着いている)青龍が答えた
葛の葉は胸の中で数える一の太刀、二の太刀、三の太刀 、五の太刀のあたりで少しスピードが落ちる
目くばせをしてさっと青龍の前に出た、屑の葉が薙刀を低く速く円を描くように回す
中には入らせない
薙刀のいいところは足元を狙えかつ軽量なので敵を追い払うには便利で狙わなくても運が良ければ
足に傷を負わせられる
その間に呼吸を整えた青龍のスピードが上がる、葛の葉が数える速さも上がる
自分は体力がないので青龍が疲れたように見えたときしか姿を現さないが青龍だけが自分を見
ることができる
青龍の体内は引き締まりまともな判断力は消え失せる
一刀でほとんど先手先手と決めて目的の家に突っ込む
葛の葉はついていきながらもう人間でなくなったものの姿や何かにひっかかれるような
苦痛を感じるが数えつづける
いつも思うが、こういう少人数の接近戦には特有のみだらなところがあると感じる
自動的に、命が相手にゆだねられるとなぜか楽になる
時に痛みを和らげる作用もある、理性を保っていたらとてもできないことさえやってのける
少し優しい気持ちにすらなれる
(私には分かっている、お前が死ねば私が生き残ることはないってだからこうして後ろを走り続けてい
られる)
それから臨界を超えた魔界の王とその弱点を探す
どんな不条理な世界にも何らかの秩序や機能的な役割がある、それを探す




